
アフリカのエイズをなくせ! 『撃ち落とされたエイズの巨星』
『エイズの起源』(みすず書房)や『完治』(岩波書店)など、エイズ関連の優れた図書はたくさんある。その多くは、現代医学がエイズという病気に一丸となって取り組み、克服してきたかの成功物語である。 抗HIV薬が開発され、感染してもエイズの発症を抑えることができるようになった。1981年に最初の症例がNEJM(ニューイングランド医学雑誌)に発表されてわずか40年たら
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『エイズの起源』(みすず書房)や『完治』(岩波書店)など、エイズ関連の優れた図書はたくさんある。その多くは、現代医学がエイズという病気に一丸となって取り組み、克服してきたかの成功物語である。 抗HIV薬が開発され、感染してもエイズの発症を抑えることができるようになった。1981年に最初の症例がNEJM(ニューイングランド医学雑誌)に発表されてわずか40年たら
徳田虎雄。その名を聞いたとき、どのようなイメージが思い浮かぶだろう。医療に風穴をあけた風雲児、潤沢な資金をバックにした金権政治家、あるいは、難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)と闘う患者だろうか。それは世代や立場によって大きく異なってくるに違いない。いや、そもそも若い人には、その名さえ知られていないかもしれない。 まったくの徒手空拳から、昭和48年、大阪の松原

歴史の本、特に最悪の医療の歴史などを読んでいると、あ〜現代に生まれてきてよかったなあと、身の回りに当たり前に存在する設備や技術に感謝することが多い。昔は治せなかった病気が今では治せるケースも多いし、瀉血やロボトミー手術など、痛みや苦しみを与えるだけで一切の効果のなかった治療も、科学的手法によって見分けることができるようになってきた。 だが、そうした幾つもの医

医学部を卒業して40年近くになります。その間に医学は飛躍的に進歩し、昔だったら治らなかった病気も治せるようになってきました。「人生100年時代」と言われるようになったのも、そのおかげです。 ただ、大きく進歩した分、医療はとても複雑になりました。ある病気に対して、選べる治療法が増え、薬の種類も多くなっています。私は大阪大学医学部で病理学を教えているのですが、今

本書のタイトルから、まずわかることは、子どもが思い通りに育ってくれたらいいなという期待、思い通りに育てたいという欲望があるということだろう。それは、なぜだろうか? 急がば回れ、その背景にある社会動向の変化を見てみよう。昨今、親になった世代は充実した教育を受けてはいるものの、子どもの世話をした経験はほとんどないという状況だ。家族構成の変化、要するに核家族化が進

具体的な数字やデータを示してもダメ。明晰な論理で説いてもムダ。そんなとき、あなたはきっとこう思ってしまうのではないか。「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」。 実際問題、日々の生活でそんな思いを抱いてしまう場面は少なくないだろう。失敗例がすでにいくつもあるのに、それでもまだ無理筋を通そうとする社内のプレゼンター。子育てのあり方をめぐって、何を言っても聞く耳

医師にとって自らの名が診断名に冠されるのは名誉なことに違いない。だが「アスペルガー症候群」に名を冠した医師ハンス・アスペルガーにとって、それは胸を張って誇れた名誉だろうか。 アスペルガーは、ナチス統治下のオーストリア・ウィーンで小児科医として活躍した。敬虔なカトリック教徒でナチスにも入党しなかった彼は戦後、ナチスに抵抗した人物として評価された。また戦中に障害

夏の定番番組といえば怪談。今でこそ少なくなったが、昔は終戦記念日前後には、ドキュメンタリーだけでなく怪談話も戦争に関わる番組は欠かせなかった。特に空襲で死んだ人が、当時の姿で現れるという物語は定型のように語られた。今でも心霊スポットなどをめぐる番組で、兵士や防空頭巾姿の霊を見た、という話は残っている。 本書は64年前に起こった海難事故を、原因や責任、後に起こ

自分でコントロールしていくものか。やむをえず染みついてしまうものか。 習慣ときいてまずイメージするのは後者だ。飲酒に喫煙、浪費癖。ちょっとした空き時間とか退屈を感じた時にまずスマホ、みたいなのもそのひとつだろう。後からいかんと思いつつも、ときにはほぼ無意識のうちにやってしまう習慣の数々。自分自身、いちいち思い返したくないくらい心当たりがある。 かといってただ

どんな重大事件でも時を経ると忘れられ、他人(ひと)の記憶は薄れていく。しかし事件の当事者は違う。何年経とうが胸の中に残る。ましてや、正気では受け止めきれないほどの凶悪事件の被害者ならばなおさらだ。 2004年6月、長崎県佐世保市の小学校で6年生の女子児童が同級生の女児にカッターナイフで喉を切られ死亡する事件が発生した。学校内で起こった前代未聞の事件に報道は過

『こわいもの知らずの病理学』(略称『こわ病』)で一発あてたので、調子をこいて病理学シリーズの本をだしました!という訳では決してない。だいたい、自分の本とちゃうし。 かといって関係がないかというとそうでもない。『なかのぐら対談』として、わたしと著者の小倉先生との対談が二ヶ所に載っている。念のために言っておくが、対談は印税制ではなくて謝金制である。だから、この本

2019年3月、杉並区の保母が自室に侵入されて殺害された。同僚男性が逮捕。 13年10月、三鷹の女子高校生がかつての交際相手にリベンジポルノをされた末、殺害される。 12年11月、逗子の女性が、6年前に交際しストーカー規制法による警告が出された男によって殺害される。 これらは被害者が殺されたことで明るみに出た事件だ。被害者である彼女たちの気持ちは今まで表に出

若い医師はあるとき、リウマチ性関節炎と診断されていた女性患者がうつ病をも患っていることに気づいた。そのささやかな発見に気をよくした彼は、上機嫌で先輩医師にその旨を伝える。だが、先輩医師から返ってきた反応はきわめて淡白なものであった。「うつ病? そりゃ、君だってそうなるだろうよ」。 以上は、本書の著者エドワード・ブルモアが内科の研修医時代に実際に経験したことで

あのDr.ヤンデルの本である。と言われても「?」の人が多いかもしれない。ツイッターのフォロワー数10万人近く、間違いなく日本でいちばん有名な病理医だ。ツイッターもブログも、これまでに出された本も、ちょっと意外な角度から医学を眺めている感じ。けれど、とても納得いく説明をしてくれる(たぶん)とてもいいお医者さんである。 そのヤンデル先生がヤムリエを買ってでてくれ

発売した瞬間にHONZメンバーがどよめく、というか「おおっ!」と沸くことが最近頻発しています。面白いノンフィクションが次々と世に送り出されている事の証左でしょう。この『世にも危険な医療の世界史』もそんな1冊でした。 エビデンス、エビデンス!と耳にタコができるくらい聞かされている世の中に、目をむくような医療、治療法が語り尽くされています。さて、これを読んでいる

珍書というべきか奇書というべきか、何しろ驚愕の一冊である。『鼻から尿』??「♫チャラリー鼻から牛乳」の嘉門タツオもびっくりだ。それに『爆発する歯』??そんなことあるはずないやろ!という気がするのだが、いずれもがれっきとした医学雑誌に載っている症例報告なのである。17世紀から19世紀の医学雑誌に紹介されたさまざまな信じがたい論文を集めたのがこの本だ。さて、読め

「なんとかの危機」的な本はけっこう多い。執筆は専門家ではなくてジャーナリストだし、「煽り系」の本がまた出たかと思って読み始めた。しかし、まったく違っていた。生命科学研究におけるさまざまな問題点が、順を追って鋭く冷静に指摘されていく。 資料をまとめただけではない。そういった問題に関係するノーベル賞受賞者も含めた多くの研究者へのインタビューも満載だ。口はばったい

現代でもインチキ医療、危険な医療はいくらでも見つけることができるが、過去の医療の多くは現代の比ではなくに危険で、同時に無理解の上に成り立っていた! 本書 『世にも危険な医療の世界史』 はそんな危険な医療史を、元素(水銀、ヒ素、金など)、植物と土(アヘン、タバコ、コカインなど)、器具(瀉血、ロボトミー、浣腸など)、動物(ヒル、食人、セックスなど)、神秘的な力(

朝刊を見る楽しみのひとつはサンヤツ広告である。一面のいちばん下にずらっと並んでいる本の広告のことで、3段分のスペースを8つに分けてあるからサンヤツだ。ある日、そこに『ウイリアム・ウイリス伝』があるのを発見して即刻購入した。ウイリス、どれくらいの知名度なのだろう。 吉村昭が高木兼寛を描いた『白い航跡』を読んだ人なら覚えておられるだろうか。高木は、西洋風の食事が

2015年1月7日11時30分、フランスのパリ11区にある風刺新聞社「シャルリ・エブド」に武装した覆面男2人が侵入し、編集会議中の社員に発砲した。編集長、風刺漫画家、コラムニスト、警察官ら合わせて12人が死亡、多数の負傷者を出した。 後に犯人はイスラム過激派のテロリストと判明し、 フランス各地で数百万人に及ぶ犠牲者追悼のデモが行われた。 本書の原題は『LaL

魂の一冊である。『吃音 伝えられないもどかしさ』は、自らも吃音に悩んだ近藤雄生が80人以上の吃音者と対話し、その現実に迫る渾身(こんしん)のノンフィクションだ。 吃音について何も知らなかった。8割は自然に治るとはいえ、幼少期に悩む子どもは約5%にも及ぶ。だから、吃音のある人は約1%、日本だけで約100万人もいる計算になる。 近藤によると、吃音には「曖昧さ」と

「科学が正道を踏み外すさまざまなパターン」について迫る1冊だ。生命科学の歩みは決して止まってはいないが、無駄な努力のせいで進展は遅れている。単に時間や税金を無駄にしているだけでなく、人を欺く基礎研究の研究結果が、病気の治療法の探索を実際に遅らせているのだ。「人を欺く」と聞いてまず思い浮かぶのは研究不正の問題だが、ないものを「ある」ように見せるため故意に手を加

学びや教育を題材にした書籍に多いパターンは、起こっている問題を分析した後に、あるべき姿や改革案を提案する本である。しかし、本書はそのような種類の書籍とは一線を画し、理論的な背景とそれを具体化したアイデアとその実践で敷き詰められている。 クリエイティブ・ラーニングの前提は、時代の変化である。消費社会(Consumption)、情報社会(Communicatio

思い起こせば何人も「吃音」の人に出会っている。小学校の同級生、部活の仲間、会社の同僚、仕事先の担当者。だからと言って不快になることはなく、会話の仕方に気を付けるだけだった。彼らがこんなに悩んでいたということを全く知らなかった。 マリリン・モンローが吃音であることは、何かで読んだ記憶がある。セクシーなしゃべり方は吃音が関係していた可能性があるという。 『英国王

韓国では著名なイラストレーターである著者が、31歳から40歳まで9年をかけて完成させたのが本書『ソッカの美術解剖学ノート』である。 骨や筋肉や内臓など、人体構造について「なぜ今の形になったのか」に言及されているのがポイントであり、その知識をふまえイラストで絵の描き方を伝えている。本書では人体の仕組みを知れるのと同時に、各部位がどう動きその形状になったのかが楽

胎児の神秘。人類誕生過程の最先端であり、生物学的にも面白いトピックであるにも関わらず、いまだ多くがベールに包まれています。女性の体の中で受精卵がどのように胎児に発育していくのか、羊水はどのような役割を果たしているのか、多くの謎が残されたままです。 そんな胎児を知る上で、我々人類が編み出したのが、「子宮の中を見る」ことと「遺伝子を分析する」という手段でした。た

自分が体験したことがないことを想像するのは難しい。 かつて我が身に降りかかってきたことや、常日頃から感じていることなどをもとに他者に共感することはできるが、体験したことがなく、ましてや関心すら持ったことがないことについては、なかなかイメージすることができない。 だが本書はあなたに驚くべき体験をもたらすだろう。 この本を読み終えたあとは、世界の見え方が変わるは

特に病気をしているわけではないのだけれども、自分ももう若くはないせいか、死ぬことについて考えることが増えた。はたして、自分は余命宣告されて、それをスッと受け入れられるだろうか。治療方針や、諦めどころなど、難しい決断を迫られて対処できるだろうか。ただ何も出来ずに生きながらえるだけは嫌だと思うが、死を前にしてそれが自分にいえるだろうか、などなど。 死は一つだが死

自己肯定感の強い男、と周囲から言われ続けている。まぁ、そんな気がしないでもない。しかし、多々異論はあるだろうけれど、主観的にはけっこう謙虚だと思っている。謙虚と自己肯定は必ずしも排他的ではない。謙虚にして自己肯定感がつよい。素晴らしいではないか。と、まぁ、こういうことを書いたりするから、やっぱり自己肯定男と思われるのである。 信じてもらえないだろうが、かなり

『こわいもの知らずの病理学講義』が7万2千部に! ということでウハウハだという大阪のおっさんこと、ナニワのレビュワー仲野徹先生の新刊登場! 「2匹目のドジョウを狙う」と公言する今回は、ダイエットフェチとしての極意から、お酒との賢い付き合い方、風邪をひいたらどうするか、そしてがんにならないための生き方に至るまで、病気と健康をテーマに笑い語ります。 あのナカノ先

我々の体は、250~300種類、37兆個にもおよぶ細胞からできている。しかし、その複雑な構造は、精子と卵子が融合してできた受精卵たった一個からつくられてくる。受精卵が分裂し、さまざまな機能を持つ細胞へと分化し、適材が適所へと移動する。そして、相互に作用しならがさまざまな生命機能を営んでいる。 不思議だとは思われないだろうか。外部から栄養分が与えられるとはいえ

英語で最も頻出する名詞は「time」である。 いっぽう、時間をどう定義するかについての見解は一致していない。 時間という単語にはさまざまな意味が含まれているが、文章の中や日常の会話で、異なる意味を意識して使い分けることはほとんどない。下記の文章には「時間」という単語が3つ登場する。 時間の性質についてのミンコフスキーの講演は時間どおりに終わったが、長い時間が

2003年、ヒトゲノムの解読が完了し、科学は歴史的な一歩を踏み出した。それから6年後の2009年、今度は医療において大きな一歩が踏み出される。患者個人のゲノムを解析し、その結果にもとづいて診断・治療を行うという「パーソナルゲノム医療」が産声を上げたのだ。本書は、医師と研究者、そして患者と家族に焦点を当てながら、その新たな医療が生まれるまでを描いたドキュメンタ

我々人類はいまだ宇宙人、異星の生命体というものに出会ったことがないので、もしそういった存在と出会ったときに何が起こるのかは想像を広げていくほかない。だが、その際には「会ったこともない相手をどのように想像したらよいのか」という難問に直面することになる。本書のモチーフとして取り上げられているのは、SFマガジンに傑作『神狩り』が載った際に、著者山田正紀によって寄せ

京都大学の本庶佑特別教授のノーベル医学生理学賞受賞が決まり、日本中が湧いている。この素晴らしい快挙の一方で、医療現場では混乱も生じているようだ。がん治療の現場で、医師が手術を選択したにも関わらず、患者側からオプジーボを使用したいと相談があるようなのだ。なぜ、患者側はそう考えるのか。本書は、その「なぜ」に答える本である。 当然のことだが、医師はオプジーボの存在

2018年7月6日朝8時、テレビでニュース速報が流れた。 ―オウム真理教教祖、麻原彰晃こと松本智津夫の死刑が執行された模様― のちにこの日に井上嘉浩、早川紀代秀、中川智正、遠藤誠一、土谷正実、新実智光の6人、7月26日に残る6人の死刑が執行されたことが報じられた。地下鉄サリン事件から23年経っていた。 本書の奥付は2018年7月26日。著者と中川智正との約束

物を買うお金がない、10代の子どもの非行の入り口、転売目的のプロによる犯行、認知症の影響……。そんなありふれたイメージとは違った角度から万引きについて書かれた一冊だ。 なぜやったのか、常に分かりやすい動機があるとは限らない。周囲から真面目な人だと言われている。経済的に困っているわけでもない。にもかかわらず、繰り返し万引きに手を染める人々が一部に存在する。その

文字通り、 元首の主治医は 裸の権力者を見続ける。そのためには、まず元首に気に入られなければならない。その上、お気に召すような治療をしなければならない。一方で、気にそまぬアドバイスをしなければならないこともあれば、病状をひた隠しにせねばならないこともある。権力者の主治医には、医術以外に相当な技量が要求される。 主治医によっては虎の威を借りて権力をふるおうとす

植物状態と診断されながらも、じつは意識がある人たち。そうと示すことがまったくできなくても、たしかな認識能力を持ち、どうしようもない孤立感や痛みを感じている人たち。そうした人たちが置かれている状況を想像し、悪夢とも思えるその可能性に身震いしてしまった経験が、おそらくあなたにもあるのではないだろうか。だが現在の科学は、その可能性を前にしてただ震えているばかりでは

若い頃は駅の階段をスタスタ上がり、重い荷物も平気で持てていたのに、いつの間にやらエスカレーターを利用し、「よいしょっ!」と気合いを入れて荷物を持ち上げている自分がいる。そしてお気に入りだったジーンズのウエストが、もう合わなくなっている…… 筋肉から脂肪へーーこうして、男たちは我が身にも老化の波が押し寄せてきていることを実感するだろう。筋肉が落ち、胴回りが増す