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466記事

『問題の女 本荘幽蘭伝』その名を知らぬ者はなし。明治から大正に咲いた仇花 書影

人物 / 社会

『問題の女 本荘幽蘭伝』その名を知らぬ者はなし。明治から大正に咲いた仇花

2019年NHK大河ドラマ『いだてん』に登場する「本庄」という男っぽい女性記者のモデルは本荘幽蘭ではないかと推測される。挿話収集家の平山亜佐子は当時の新聞記事を渉猟し、彼女の一生を克明に辿るスリリングな一冊を著した。 明治12年、幽蘭は元久留米藩士で実業家の本荘一行(かずつら)の二女として誕生した。本名は久代。元芸者の妾と暮らしていた父のもとで幼少期を過ごし

『最後の角川春樹』角川文化を生み出した “メチャクチャ”な出版人 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『最後の角川春樹』角川文化を生み出した “メチャクチャ”な出版人

「あんなに有名な会社の社長がコカインを密輸して捕まるなんて。日本の大人は薬物まみれなのかもしれない」。1993年夏、世間知らずの12歳の私は角川春樹の「コカイン密輸事件」に衝撃を覚え、妄想を膨らませ続けていた。その1週間ほど前に角川が監督した映画『REX 恐竜物語』を見たばかりだった。一緒に見た友人は「社長だけど映画監督でもあるから薬物くらいやっていてもおか

『スノーボードを生んだ男 ジェイク・バートンの一生』一枚のおもちゃを世界的なスポーツに 書影

アート・スポーツ / 人物

『スノーボードを生んだ男 ジェイク・バートンの一生』一枚のおもちゃを世界的なスポーツに

雪の上を遊ぶおもちゃの板を、一つのスポーツ、一つのビジネス、一つのカルチャーに育てあげたアメリカ人の自伝である。泥臭く地べたを這いつくばりながら0から1を作り上げたThis is Americaとも言えるストーリーである。その男の名は、ジェイク・バートン、スノーボードのメーカーとしてもっとも有名で巨大なブランドを立ち上げた男である。 はじめに断っておくが、評

批判、嘲笑、挫折。底をつく資金 『ディズニーランド 世界最強のエンターテインメントが生まれるまで』 書影

人物 / ビジネス

批判、嘲笑、挫折。底をつく資金 『ディズニーランド 世界最強のエンターテインメントが生まれるまで』

よくできた物語は、幸せな家庭の食卓のようなものだ。誰かの意図によらず会話が転がって、やがては笑顔でつつまれる。破格の大事業を成し遂げた人の生涯も同じように、自力だけでなく何かに導かれるものなのかもしれない。世にも稀なる遊園地、ディズニーランドについて書かれたこの本を読んで私はそう感じた。 スティーブジョブズの本を読んだときにも、同じようなことを感じた記憶があ

『イントゥ・ザ・プラネット』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『イントゥ・ザ・プラネット』

本書は洞窟ダイバーで水中探検家、作家、写真家、映画監督であるジル・ハイナースの生涯を描いた一冊である。 1965年、カナダのトロントで生まれたジルは、幼少期から探検が好きだったという。彼女の記憶に鮮烈に残るのは、家族旅行で出かけたコテージでのできごとだ。二歳だった彼女は、コテージ前の桟橋から足を滑らせ、湖に落ちてしまう。水中に落ちたジルは、本能的に呼吸を止め

『筑紫哲也「NEWS23」とその時代』かつてジャーナリズムが元気だった時代があった 書影

人物 / 社会

『筑紫哲也「NEWS23」とその時代』かつてジャーナリズムが元気だった時代があった

本を読み終えて顔を上げた瞬間、いまどこにいるのかわからないような感覚に襲われた。一瞬とはいえ、自分を見失ったような気がしたのはなぜだろう。いましがた読み終えたばかりの本に書かれていたのは、ついこの間の出来事である。にもかかわらず、この本に描かれた時代といまとはまるで違う世界のようだ。 そうか、とようやく思い至る。文字通り世界が変わったのかもしれない。私たち

『世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ』新型コロナワクチン開発秘話! 書影

サイエンス / 人物

『世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ』新型コロナワクチン開発秘話!

2021年8月半ば、日本では新型コロナウイルスの感染者が5000人を超えた。その後ピークアウトして減少を続け、2021年11月15日現在、全国で感染者が100人余りという日が続いている。重症者も少なくなり、ひとまず第5波のパンデミックは落ち着きを見せている。この感染者が急減している原因は特定されてないが、ワクチン接種の普及が大きな要因であることは間違いないだ

『金融庁戦記』「霞が関のジローラモ」の事件簿 書影

人物 / 社会

『金融庁戦記』「霞が関のジローラモ」の事件簿

本書の主人公は、「霞が関のジローラモ」と呼ばれた異色の官僚である。 ジムで鍛えた厚い胸板の上に派手なストライプ柄やカラフルな色のシャツをまとい、ピンクやパープルなどのネクタイを締める。肌は赤銅色に焼け、髪型は側頭部を短く刈り、頭頂部にふくらみをもたせたソフトモヒカンのようなスタイル。官僚のイメージからおよそかけ離れた外見のこの人物を、いつしか人々はイタリア人

『月夜の森の梟』“かたわれ”を喪って 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『月夜の森の梟』“かたわれ”を喪って

2020年の正月があけてしばらくしてから、藤田宜永さん逝去の報が届いた。私が「初めまして」の挨拶してからほぼ30年が経っているが、いつもスタイリッシュで若々しい姿しか記憶になかったので享年69という年齢に少し驚いた。ガンを患っていたが、少し前に薬が劇的に効いて寛解したと久しぶりのパーティ会場で本人から聞いていたのに、やはりダメだったのかと残念でたまらなかった

この人を見よ!『修羅の花 山口組トップから伝説の経済ヤクザの息子までが素顔を見せた』 書影

人物 / 社会

この人を見よ!『修羅の花 山口組トップから伝説の経済ヤクザの息子までが素顔を見せた』

この人を見よ!。本書の紹介としては、それ以上、なにもいらない。 著者略歴から、映画がいくつでもできる。最終学歴は小学校卒業、13歳でストリートチルドレンに、奇病、二度の癌、4度の結婚離婚、と、経歴だけで圧倒される。1971年生まれの著者の半生は、2016年に出版した『 不死身の花 夜の街を生き抜いた元ストリート・チルドレンの私 』(新潮社)に語られている。

『愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年』歴史に翻弄された夫婦愛の物語 書影

人物 / 社会

『愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年』歴史に翻弄された夫婦愛の物語

日本ではあまり知られていないが李仲燮(イ・ジュンソプ)は韓国の国民的画家で「韓国のゴッホ」とも呼ばれている。39歳で夭折した天才画家の妻は日本人の山本方子(まさこ)。今年100歳になるがお元気だ。 新聞記者である著者はソウル特派員時代に李仲燮の存在を知る。彼の絵に惹かれ、日本で方子とのインタビューを重ねた。 李仲燮は1916年に日本統治下にあった朝鮮半島の平

『嫌われた監督』「揺るぎない個」はなぜ嫌われたか 書影

アート・スポーツ / 人物

『嫌われた監督』「揺るぎない個」はなぜ嫌われたか

週刊誌の発売日を指折り数えて待つことなんて久しくなかった。 発売日には文書砲そっちのけで、まずこの連載のページを開き貪り読んだ。 スポーツノンフィクションの傑作といえば、誰もが山際淳司の『江夏の21球』をあげるだろう。もちろん異論はない。ただあの作品は「永遠のマスターピース」というべき傑作だし、ぼちぼち新しく語り継がれる作品が現れてもいいのではと思っていた。

『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』は、こわいもの知らずのぶつかり稽古だ! 書影

人物 / 社会

『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』は、こわいもの知らずのぶつかり稽古だ!

自民党総裁選のニュースが連日報じられている。前回に比べれば、四人が立候補して政策論戦が交わされているのは望ましいことだ。しかし、報道はいつもどおり、政治内容そのものよりも政局に偏っている。政治は何のためにあるのか。それこそが重要問題であるはずなのに、真っ正面から問われることはあまりない。 ライターの和田靜香が、立憲民主党の衆議院議員である小川淳也にそれを問う

自分の人生を輝かせる「スーパーボランティア」の生き方――『お天道様は見てる 尾畠春夫のことば』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

自分の人生を輝かせる「スーパーボランティア」の生き方――『お天道様は見てる 尾畠春夫のことば』

2018年8月、瀬戸内海に浮かぶ山口県の島で、2歳の男の子が行方不明になった。警察や消防が150人体制で3日間探しても見つからなかったその男の子を、大分県から駆けつけたボランティア男性が捜索開始からわずか20分で無事見つけ出したニュースを覚えておられる方も多いだろう。「スーパーボランティア」と呼ばれたその男性こそが、尾畠春夫さんである。 5万5千円の年金暮ら

『仁義なき戦い 菅原文太伝』日本映画界のスター その魅力の源泉に迫る 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『仁義なき戦い 菅原文太伝』日本映画界のスター その魅力の源泉に迫る

不器用で一本気。昭和の日本映画界を支えた俳優、菅原文太の印象を聞かれたらこう答える人は多いのではないか。 1973年、菅原が39歳のときに1作目が公開された代表作『仁義なき戦い』シリーズでのアウトローでありながらも筋を通すヤクザ役や、広島弁で語りかけるCMでの頑固親父の印象が強い。 本書は菅原の生前の発言、俳優仲間や関係者の証言を積み上げ、「人間・菅原文太」

『暁の宇品』日本はなぜ「海の戦争」で敗れたのか 書影

人物 / 世界史

『暁の宇品』日本はなぜ「海の戦争」で敗れたのか

新刊が出たと聞けば、迷わず購入する著者がいる。内容を事前に確かめることはない。なぜならその人が書くものに期待を裏切られたことはこれまで一度もないからだ。 堀川惠子氏は、当代最高のノンフィクションの書き手のひとりである。著作はいずれも高い評価を受け、受賞歴も数知れない。本書も凄い本だった。すでに膨大な文献が世に出ている太平洋戦争について、これまでにない新しい視

『きみが死んだあとで』羽田闘争で亡くなった京大生を悼む14人へのインタビュー 書影

人物 / 社会

『きみが死んだあとで』羽田闘争で亡くなった京大生を悼む14人へのインタビュー

1967年10月8日、ベトナム戦争反対を叫び佐藤栄作総理の南ベトナム訪問を阻止せんとする全学連と機動隊とが羽田・弁天橋で激突した。 当時18歳の京都大学一年生、山﨑博昭さんがこの争いの中で命を落とす。死因は学生たちが奪った装甲車に轢かれたとも、機動隊に殴られたからとも言われている。 全共闘世代の一まわり下「しらけ世代」である代島治彦監督はこの闘争をめぐって山

『最悪の予感』穴だらけのスライスチーズ 書影

人物 / 社会

『最悪の予感』穴だらけのスライスチーズ

世界最大の「コロナ敗戦国」になったアメリカ。新型コロナウイルスの感染者数は3440万人。死亡者数は61万人を超えた。これは第一次世界大戦と第二次世界大戦、そしてベトナム戦争で亡くなった死者の合計よりも多い。CDC(疾病予防管理センター)やトランプ前大統領が楽観的だったこともあり、初期対応がまずかったのは間違いない。しかしアメリカは新型コロナウイルスに対して無

『偉い人ほどすぐ逃げる』責任を取らない「偉い人」 日本社会「劣化」の本質 書影

教養・雑学 / 人物

『偉い人ほどすぐ逃げる』責任を取らない「偉い人」 日本社会「劣化」の本質

『偉い人ほどすぐ逃げる』という、身も蓋もないタイトルだ。その「はじめに」には、日本の現状が次のように書かれている。 「いつも同じことが起きている。偉い人が、疑われているか、釈明しているか、逆にあなたたちはどうなんですかと反撃しているか、隠していたものが遂にバレたか、それはもう終わったことですからと開き直っているか、だ。/国家を揺るがす問題であっても、また別の

『ツボちゃんの話』愛おしい25年間の記憶 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『ツボちゃんの話』愛おしい25年間の記憶

つくづく子どもは親の思い通りに育たないものだと思う。 息子が生まれた時、英才教育を施そうと思った。といっても、勉強やスポーツではない。あらゆるサブカルチャーに通暁した人間に育てようと思ったのだ。 本やマンガ、音楽、映画などに幼い頃から親しませ、各ジャンルの押さえておくべき名作や傑作などを順に与えていけば、ひとかどのサブカルエリートに育つのではないかと思ったの

『闇の盾』伝説のトラブルシューターの回想録 書影

人物 / 事件・事故

『闇の盾』伝説のトラブルシューターの回想録

型破りな人物のノンフィクションに時々お目にかかるが、本書は極めつきではないだろうか。 著者は「日本リスクコントロール」という危機管理会社の社長である。ところが「どんな会社?」とググってもホームページは存在しない。電話番号も公開されていない。それもそのはず。同社にアクセスする方法は、紹介者による仲介しかない。 しかも会費がとてつもなく高い。トラブルの最終処理ま

『越えていく人——南米、日系の若者たちをたずねて』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『越えていく人——南米、日系の若者たちをたずねて』

「移民」という言葉を聞いて、構えてしまう人は多いのではないだろうか。 日本生まれ日本育ちの私が、「移民」から連想するのは、難民だったり、昔読んだ井田真紀子の『小蓮(シャオリェン)の恋人』に出てくる残留孤児二世の話だったり。または、一緒に働いているベトナムからの留学生だったり。私は無意識に迎え入れる側の人間となり、社会問題として一歩引いた目線で「移民」を眺めて

『奴は・・・』写真で辿る小説家・北方謙三の40年 書影

アート・スポーツ / 人物

『奴は・・・』写真で辿る小説家・北方謙三の40年

今では中国ものの歴史小説家というイメージが強い北方謙三。だがデビューは大学時代に書いた純文学で、その後鳴かず飛ばず。十年余りボツ原稿を積み上げ腕を磨いた結果、エンターテインメントに転向、ハードボイルド作家として再デビューした。折からの冒険小説ブームにも助けられ次々と新刊を上梓。一時は年間に12冊の単行本を出し「月刊キタカタ」と呼ばれた時もあった。 それから4

『一度きりの大泉の話』初めて明かすあの日の出来事 書影

人物 / マンガ

『一度きりの大泉の話』初めて明かすあの日の出来事

まるで神様が血を流しながら苦しんでいるのを目の当たりにしているようだった。その傷跡からは、半世紀近くたった今も鮮血が滴り続けている……。 1960年代の終わりから70年代にかけて、少女漫画という新しいジャンルが誕生した。女性の漫画家が一斉に登場して、自分たちの読みたい物語を描き始めたのだ。彼女たちの漫画は、それまで男の漫画家が描いていた女の子が主人公の物語と

超人?それとも悪魔?『フォン・ノイマンの哲学』 書影

サイエンス / 人物

超人?それとも悪魔?『フォン・ノイマンの哲学』

天才には世界がどう見えているのだろうか。 これは凡人には一生わからない謎かもしれない。 たとえばアイザック・ニュートンは、なぜあれだけ物理法則を発見することができたのか。同じように夜空を見上げても、凡人はせいぜい月がきれいだと感心するくらいなのに対して、ニュートンは「なぜ月は落下してこないのか」と考えた。天才の目にはどうやら凡人とは違うものが見えるらしい。

『しゃにむに写真家』小学校教員から写真家に、「いばらの道」で何を撮るか 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『しゃにむに写真家』小学校教員から写真家に、「いばらの道」で何を撮るか

「今の仕事をこのまま続けるつもり?」。妻のその一言で人生が思わぬ方向へと動いた男のエッセイだ。 なるほど、妻にここまで言わせるとは、この男、芽の出ないアーティストか何かだろうか。そう思う人も多いかもしれない。しかしそうではない。著者の吉田亮人は小学校の教諭だった。安定した人生が約束された公務員だ。 著者と同じく教師をしている妻は畳み掛けるように言う。「つまん

奇跡の付き人、げそ太郎 『我が師・志村けん』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

奇跡の付き人、げそ太郎 『我が師・志村けん』

昨年、新型コロナで急逝した「笑いの王様」志村けん。本書は、1994年から7年に渡ってその付き人を務め、朝から晩、海外ロケまで同行した著者が師匠の姿を振り返ったものである。運良くドライバーとして採用された若き日。「笑いは正解のない世界だから、俺から教えることは何もないぞ」という師匠に出会い、二人はどう交わっていったのか。 本書を読んだのは発売直後。今から1か月

『起業の天才!』リクルート創業社長、江副が社会を不安がらせた理由 書影

人物 / ビジネス

『起業の天才!』リクルート創業社長、江副が社会を不安がらせた理由

世代的に、リクルート事件のことを知らない。むしろ、就職氷河期世代の私にとってのリクルートといえば、「エリート学生を超青田買いしている会社」といった印象だ。「すごい成果主義なんでしょ?」「定年退職までいられなくて、入社したら必ず独立しなきゃいけないんでしょ?」と、私も、周りも大学生たちは思っていた。 しかし、読み始めてまず最初に思ったことはひとつだ。「この時代

『潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景』宮城の海に潜り続けた男の濃密な半生を描く評伝 書影

人物 / 事件・事故

『潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景』宮城の海に潜り続けた男の濃密な半生を描く評伝

その人にしか語り得ない境地というものがある。人生は十人十色だが、特殊な技能が必要で、なおかつ特異な環境に我が身を起き続けた人の軌跡はとりわけ面白い。 本書は、若くして潜水の才能を発揮し、宮城の海から無数の遺体を引き上げてきた男・吉田浩文の激動の半生を綴る克明の記録である。 初めての遺体引き上げは1996年。死者は交番勤務の男性警察官で、車ごと海中に突っ込む入

『堕ちたバンカー 國重惇史の告白』「住銀を救った男」が銀行を追われた理由に迫る 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『堕ちたバンカー 國重惇史の告白』「住銀を救った男」が銀行を追われた理由に迫る

大阪の中堅商社イトマンから数千億円ともいわれるバブルマネーが裏社会に流れ込んだ「イトマン事件」。2016年のベストセラー『住友銀行秘史』は、四半世紀を経てその内実を明らかにした。 イトマン事件をめぐり、バブル紳士の暗躍を描いた作品は少なくなかったが、同書は当事の経営幹部の姿を実名で詳述し、銀行組織の暗部に光を当てたため金融業界に衝撃が走った。著者で、当時住銀

『鬼才』不世出の編集者の知られざる生涯 書影

人物 / 社会

『鬼才』不世出の編集者の知られざる生涯

「◯◯の天皇」という形容がある。 最近あまり目にしなくなったが、かつては週刊誌などでよく見かけた表現だ。ただしこの言葉を冠するには、相手もそれなりの人物でなければならない。たとえば「◯◯」に適当な企業や団体の名前でも入れてみれば、天皇になぞらえるには、あまりに小粒な人物しかいないことがよくわかるだろう。 出版界にはかつてこの呼称がぴたりと当てはまる人物がいた

音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』

近田春夫を知っている人は、すでに読んだにちがいない。知らない人は、いますぐ読んでほしい。音楽で生きる、東京で生きる、その2つを味わえる。日本のロック、パンク、ヒップホップ、さらにはJ-POPやCM音楽まで網羅した音楽史であり、東京でクールに生きてきた大人の足跡を体感できるだろう。 タイトル「調子悪くてあたりまえ」は、ビブラストーンの名曲からとられている。ご存

ギネスに届け!爆笑『明石家さんまヒストリー1、1955~1981 「明石家さんま」の誕生 』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

ギネスに届け!爆笑『明石家さんまヒストリー1、1955~1981 「明石家さんま」の誕生 』

かつて『 ヤングおー!おー! 』というテレビ番組があった。大阪の毎日放送が1969年から10年あまりにわたって制作した公開バラエティーで、視聴率が30%を越えたこともある驚異的な番組だった。日曜夕方6時からの1時間番組で、最盛期には、大阪の中高生は全員が見ていたのではないかと思えるほどの人気だった。 スタート時は笑福亭仁鶴と桂三枝(現在の文枝)が司会を務め、

『オードリー・タン 自由への手紙』天才デジタル担当大臣が日本に贈るロードマップ 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『オードリー・タン 自由への手紙』天才デジタル担当大臣が日本に贈るロードマップ

新型コロナ禍でのマスク不足対策で大成功を収め、世界的な脚光を浴びたのが、ジェネレーションYと呼ばれる若い世代を代表する、台湾の「天才デジタル担当大臣」である。そんな39歳のオードリー・タンが、本当の自由とは何か、どうしたら手に入れることができるのかを、「本書を手にした日本のみなさんへ」と語りかけたのが本書だ。 オードリーが表象するものは、あらゆる既成概念から

おばちゃん牧師の激烈な愛@西成 『愛をばらまけ』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

おばちゃん牧師の激烈な愛@西成 『愛をばらまけ』

新年早々、私は圧倒された。本書は、大阪・西成の小さな教会で、約20人の信徒たちとともに生き抜く女性牧師を描いたノンフィクションである。いや、そんな説明ではミスリードをまねく。教会といっても床が抜けた古い中華料理店の居抜き物件だし、主役は1950年生まれのおばちゃん牧師である。そこはいわば、元野宿者たちとの壮絶な「生きる舞台(=家)」だ。 本書には、想像をはる

最強&最恐のアートディレクターは時代を超える『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

最強&最恐のアートディレクターは時代を超える『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』

石岡瑛子 、どれくらいの知名度なのだろう。不覚にもまったく知らなかった。あるところで、この本のことが話題になった。誰です、それ?と尋ねたら、あんな有名なデザイナーを知らないのですか、作品は絶対に見覚えがあるはずです。いま展覧会をやってますから行ってみられたらどうですかと教えられた。 東京出張の折りに、 その展覧会 『血が、汗が、涙がデザインできるか』を東京都

『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』成長か、それとも変節か。悲哀と戸惑いの成功譚 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』成長か、それとも変節か。悲哀と戸惑いの成功譚

リベラル・アーツは、「教養」と訳されることが多い。しかしその語源は古代ギリシャにまでさかのぼり、「奴隷ではない自由人として生きるための技術」の意味を持つという。そんな大げさなと思われるかもしれないが、本書からはその意味を十分に感じとることができる。 モルモン教原理主義のサバイバリストである反政府的な両親の下、学校や病院とは無縁の環境で育った少女が、やがて大学

『喧嘩の流儀 菅義偉、知られざる履歴書』「ガースー」を笑えたら・・・。 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『喧嘩の流儀 菅義偉、知られざる履歴書』「ガースー」を笑えたら・・・。

笑えなかった。あなたも、「ガースーです」と自称した菅義偉総理を笑えなかったのではないか。世の中の空気を読みまちがえただけではない。イントネーションもちがう。寿司をひっくりかえした「シースー」のように、平板に言わなくてはならない。 「鬼滅の刃」にあやかって「全集中の呼吸で」を国会答弁でつかったときも、菅総理は「すべった」。つまらないから、だけではない。「202

『浪花節で生きてみる!』女一匹、魂の咆哮 書影

人物 / 民俗・風俗

『浪花節で生きてみる!』女一匹、魂の咆哮

2017年4月から翌年2月まで、私はほぼ毎月、神奈川県の自宅から亀戸まで、東京都を縦断して「玉川奈々福がたずねる語り芸パースペクティブ」という勉強会に通っていた。 主催者は玉川奈々福。日本にはなぜこんなに多種多様な「語り芸」があるのだろうという疑問のもと、演者や研究者など各方面の第一人者を招き、実演とトーク、および考察をするという壮大な勉強会だった。 20世