ノンフィクションはこれを読め!

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466記事

『AとZ アンリアレイジのファッション』新刊超速レビュー 書影

アート・スポーツ / 人物

『AとZ アンリアレイジのファッション』新刊超速レビュー

ファッションが突然、僕を襲った。それまでにない感覚だった。 「ファッションには伝える力がある。そして伝わる力がある。 服は言葉を持つ」。そんなことを考えたことはかつて一度も なかった。 アンリアレイジのデザイナーである森永邦彦が、ファッションの原点だと語るのは、予備校で絶大な人気を誇ったカリスマの西谷昇二先生に見せられた一着の服だという。『アバウト・ア・ガー

どうしてあなたはそんなにいい子ちゃんなの? 『目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

どうしてあなたはそんなにいい子ちゃんなの? 『目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙』

HONZが送り出す、期待の新メンバー登場! 中野 亜海は三味線と江戸時代を趣味に持ちながら、実用書やビジネス系の本も手掛ける敏腕編集者。今後の彼女の活躍にどうぞ、ご期待ください!(HONZ編集部) 目が見えない、あるいは耳の聞こえない子どもたちは、こう言われて育つらしい。「どうして、ヘレン・ケラーのようにできないの?」 筆者のジョージナ・クリーグは目が見えな

『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』 44年後に初めて解き明かされた事件の真相! 書影

人物 / 社会

『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』 44年後に初めて解き明かされた事件の真相!

アメリカ大統領選挙は、民主党のバイデン前副大統領が勝利宣言した。 菅首相もさっそく祝意を示し、次期大統領との関係構築に乗り出している。 振り返れば4年前は、大統領選を制したトランプのもとに安部前首相が真っ先にお祝いに駆けつけた。当時の報道を見ると、11月18日にはもうトランプタワーを訪問している。ペルーで開かれるAPECに向かう途中だったとはいえ、各国首脳の

偉大な父の子、鷗外の三男坊『類』の物語 書影

人物 / おすすめ本レビュー

偉大な父の子、鷗外の三男坊『類』の物語

鷗外、森林太郎は5人の子をなし、上から順に、於菟(おと)、茉莉(まり)、不律(ふりつ)、杏奴(あんぬ)、類(るい)とそれぞれに欧風の名前をつけた。タイトルの『 類 』はLouis、鷗外の三男坊をモデルにした小説だ。 於菟は先妻の子であり、不律は夭逝(ようせい)しているので、類は3人姉弟の末っ子のように育てられた。大文豪であり陸軍軍医総監まで登り詰めた鷗外の子

『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来 書影

医学・心理学 / 人物

『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来

同性愛の「治療」を受ける男。娼婦を相手に性的興奮を得ることができれば成功だ。男の頭には電極が差し込まれており、後頭部から4本のコードが隣の部屋まで延びている。その部屋では、研究者たちが電極から送られてくる計測値を見ながら、男の快楽中枢に適切な電気刺激を与える。 まるでSFだ。しかし、未来の話としてはおかしいと思われないだろうか。現在の状況を考えると、LGBT

『京都に女王と呼ばれた作家がいた』時代の寵児を描いた覚悟の評伝 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『京都に女王と呼ばれた作家がいた』時代の寵児を描いた覚悟の評伝

山村美紗の訃報は衝撃的だった。1996年9月、帝国ホテルで執筆中に心不全を起こし62歳の生涯を終えた。 超売れっ子の作家の死は大騒動となる。亡骸は京都に戻り、ゆかりのお寺で葬儀が営まれ、参列者には出版関係者はもとより、テレビ、映画関係者や俳優たちが大勢集まった。 参列者が驚いたのは「美紗さんにご主人がいた」こと。喪主は夫の巍(たかし)であった。 華やかな山村

我々は操られているのかもしれない『マインドハッキング:あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

我々は操られているのかもしれない『マインドハッキング:あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』

ソ連が西側のエージェントを使って米国の政治動向をコントロールする。冷戦時代にそんな小説が書かれていたら、とんでもなく陳腐なストーリーと思われたことただろう。しかし、現在は違う。ロシアがケンブリッジ・アナリティカ(CA)という会社を使って、トランプの大統領選に大きな影響を与えたのである。 そんなもの陰謀論のたぐいではないかという人にこそこの本を読んでほしい。ぶ

"不可能" を追い求めた科学者の冒険 『「第二の不可能」を追え! ― 理論物理学者、ありえない物質を求めてカムチャツカへ』 書影

サイエンス / 人物

"不可能" を追い求めた科学者の冒険 『「第二の不可能」を追え! ― 理論物理学者、ありえない物質を求めてカムチャツカへ』

ラジオ体操じゃあるまいし、不可能に第一とか第二とかあるのか。『「第二の不可能」を追え!』というタイトルを見たら誰しもがそう思うだろう。その違いは冒頭で説明される。第一の不可能とは、けっして1+1が3にならないように、絶対的な不可能のこと。未来永劫、可能になることがありえない不可能である。 それに対して、「第二の不可能」とは、必ずしも正しいとはいえない前提に基

なんたるガッツ!『明治を生きた男装の女医』がスゴすぎる 書影

医学・心理学 / 人物

なんたるガッツ!『明治を生きた男装の女医』がスゴすぎる

高橋瑞(たかはし みず)、嘉永5年(1852年)生まれ。その名を知っている人はどれくらいいるだろう。日本で三番目に医師国家資格を取得した女性である。『明治を生きた男装の女医』は、その人生を丹念に綴った伝記小説だ。 24歳にして家出、旅芸人の賄い、女中、短く不幸な結婚の後、産婆に弟子入りする。28歳の時、跡継ぎになれと誘われるが、女医になりたいと固辞する。しか

『ロレンスになれなかった男 空手でアラブを制した岡本秀樹の生涯』 書影

人物 / 世界史

『ロレンスになれなかった男 空手でアラブを制した岡本秀樹の生涯』

社会人になってよく考えることがある。「仕事中に個人として意見したり行動することって、そんなに良くないことですか?」たとえば、あるミーティングで、私自身の意見を述べるときに、必要以上にプレッシャーを感じて「私個人の意見としましては……」なんて、いきなり真面目口調になってしまう。また、ミーティング後に上司から「会社の発言となるから、勝手な意見は言わないように」と

『京都に女王と呼ばれた作家がいた』男たちはなぜ彼女に魅了されたのか 書影

人物 / 小説

『京都に女王と呼ばれた作家がいた』男たちはなぜ彼女に魅了されたのか

この本の帯は傑作だ。そこにはこう書かれている。 「京都で人が殺されていないところはない」 1200年の歴史を繙けば、戦乱で都が荒廃した時代もあるし、いかにもそこら中で人が死んでいそうだが、これは小説の話だ。 京都に住み、京都を舞台にしたミステリーを書き続けた作家といえば、山村美紗である。22年間の作家生活の中で200冊以上の本を出し、売り上げは3200万部を

『KGBの男 冷戦史上最大の二重スパイ』 書影

人物 / HONZ客員レビュー

『KGBの男 冷戦史上最大の二重スパイ』

僕はスパイ小説には目がなくて、若いころはイアン・フレミングやジョン・ル・カレに耽溺したものだった。このジャンルは、なぜか、連合王国(uk、イギリス)のお家芸だが、本書も例外ではない。しかもフィクションではなく、これは実話なのだ。まさに「事実は小説より奇なり」を地で行く物語で、心臓をドキドキさせながら2日で一気に読み込んだ。あまりにも面白くて途中で止めることが

真打ち登場!テレビを見るならこれを読め『新型コロナウイルスを制圧する』 書影

サイエンス / 医学・心理学

真打ち登場!テレビを見るならこれを読め『新型コロナウイルスを制圧する』

「待ってましたっ!」思わず声を掛けたくなる1冊だ。ウイルス学の泰斗中の泰斗、東京大学医科学研究所教授の河岡義裕教授による新型コロナウイルスの解説書である。ただし、最初に書いておく。この本は、新型コロナウイルス感染症がどう制圧されていくかを示す預言の書などではないということを。 新型コロナウイルスとはどういうウイルスなのか、現状で何がわかっていて何がわかってい

稀代の名医、その壮絶なる生涯『評伝 関寛斎 1830-1912:極寒の地に一身を捧げた老医』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

稀代の名医、その壮絶なる生涯『評伝 関寛斎 1830-1912:極寒の地に一身を捧げた老医』

偉い人がいたものである。江戸時代、文政年間から大正元年まで生きた医師・ 関寛斎 。あまり有名とはいえないが、その人生はすごいの一言だ。 上総の農家に生まれ、儒家に養子として入り、世の中の役にたちたいと、蘭方医学の塾兼診療所であった 佐倉順天堂 に学ぶ。とりわけ貧しい塾生であったが極めて優秀で、塾の創始者・ 佐藤泰然 の弟子として、手術などの記録を「 順天堂外

『ルポ百田尚樹現象』私たちが知りたかった「社会の見取り図」がここにある! 書影

人物 / 社会

『ルポ百田尚樹現象』私たちが知りたかった「社会の見取り図」がここにある!

職場のそばにわりと大きめの書店がある。いつの頃からか売れ筋の棚に「反日」や「愛国」を打ち出した本ばかり並ぶようになった。百田尚樹はその棚の常連である。一昨年出版された『日本国紀』もいまだに棚の一角を占めている。『日本国紀』は関連本をあわせ累計100万部を突破したというし、『永遠の0』や『海賊とよばれた男』のようなメガヒット作品もある。百田はいまもっとも売れる

VRの父と呼ばれるジャロン・ラニアーによる、激動の半生とVRについて──『万物創生をはじめよう──私的VR事始』 書影

サイエンス / 人物

VRの父と呼ばれるジャロン・ラニアーによる、激動の半生とVRについて──『万物創生をはじめよう──私的VR事始』

この『万物創生をはじめよう』は、最初期のVR技術の探求、起業者であり、VRの父と呼ばれる(バーチャルリアリティという言葉の発案者でもある)ジャロン・ラニアーによる自伝的な一冊である。幼少期からはじまり、VRとは何なのか、どこを目指すことが可能なのかというVRそれ自体への問をはさみながら、彼が設立したVR系企業VPLリサーチを去る92年までが描かれていく。 ジ

『女帝 小池百合子』を買ったのは、どういう人たちなのか? 書影

人物 / 併せて読まれたこの一冊

『女帝 小池百合子』を買ったのは、どういう人たちなのか?

2017年の東京都議選の前に「隠し球」として出版されたのが、小池百合子「ファースト」写真集『小池百合子写真集 YURiKO KOiKE 1992-2017』でした。 そのときのデータ からは、写真集としては異例のクラスタが見え、品格のあるステキな年の重ね方や生き方を求める方たちにとっての、ロールモデルとしての「小池百合子」という存在が強く見えてきました。 そ

『つかこうへい正伝』”記憶”を”記録”へ 書影

人物 / 「解説」から読む本

『つかこうへい正伝』”記憶”を”記録”へ

「世の中にこんなに面白い芝居があるのか」 初めてつかこうへいの芝居『ストリッパー物語・惜別編』を観た、紀伊國屋ホール支配人(当時)、金子和一郎氏の感想です。時は1975年暮れ、場所は青山のVAN99ホール。1960年代に「アイビー・ルック」で一世を風靡した服飾メーカー「ヴァンヂャケット」が、73年3月に、青山通りに面した同社別館一階にオープンしたのが、このホ

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医学・心理学 / 人物

『患者になった名医たちの選択』に生き方を学ぶ

これまで大きな病気をしたことがない。もちろん入院経験はゼロ。それどころか、風邪と下痢をたまにするくらいで、インフルエンザに罹った記憶もない。63歳にもなってこれではちょっとあかんのと違うか。 友人に聞いたら、なんやかやと薬を飲んでいるのが多い。そうか、薬を飲んだらひょっとして一人前になれるかもと、中性脂肪の値がボーダーくらいなので、高脂血症治療薬を処方しても

彼女はいったい何者なのかー。『女帝 小池百合子』 書影

人物 / 社会

彼女はいったい何者なのかー。『女帝 小池百合子』

この2ヶ月間、彼女を見かけない日があっただろうか。テレビや新聞、ネットで私たちは毎日のように彼女の姿を目にし、彼女が語る言葉に耳を傾けてきた。誰もが彼女の顔と名前を知っている。そこには見慣れたリーダーの姿があった。 だが本書を読んだ後は、奇妙な感覚にとらわれるに違いない。彼女のことを確かに知っていたはずなのに、急に見知らぬ人間のように思えるからだ。そして次の

『旅のつばくろ』道中だけが旅じゃない 書影

教養・雑学 / 人物

『旅のつばくろ』道中だけが旅じゃない

二週間前はまだ連休だったことが信じられない。どこにも出かけないGWはあまりにも一瞬すぎて、何をしていたのか早くも記憶がなくなっている。巣ごもり生活にもすっかり慣れ、むしろ快適に感じるくらいだ。これから自粛が解かれていったとしても、しばらくは遠出なしで平気だとけっこう本気で思っている。 本書を読んで、そんな気持ちが変わってきた。日頃の外出は減るとしても、やっぱ

『宿無し弘文』ジョブズが師と仰いだ日本人僧侶の生涯 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『宿無し弘文』ジョブズが師と仰いだ日本人僧侶の生涯

禅には昔からおっかないイメージがあった。 それはきっと若い頃に読んだエピソードが強烈だったせいだろう。 禅の始祖である達磨に弟子入りを乞い、覚悟のほどを示すために自らの左肘を斬り落としてみせた慧可のエピソードである。雪舟の国宝『慧可断臂図(えかだんぴず)』にも描かれた有名な場面だ。 この話を初めて知った時、あまりに訳がわからなすぎて混乱した。弟子入りを断られ

弱い心を何度も叱り、金かりに行く『文豪と借金』 書影

人物 / 小説

弱い心を何度も叱り、金かりに行く『文豪と借金』

文豪と借金というのは切っても切り離せないものなのかもしれない。石川啄木、内田百閒、川端康成など、借金にまつわるエピソードを持つ文豪は枚挙に遑がない。なかでも有名でゲスの極みといっても差し支えないのは石川啄木である。 親友の金田一京助をはじめ、借金に借金を重ねたあげく、金は返さずに踏み倒し、妻子に金をやらずに、手にした金で女遊びに明け暮れていた。本書にはそんな

『宮沢賢治の真実』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『宮沢賢治の真実』

きっかけはいつも不意に訪れる。人生とはどうやらそういうものらしい。 丈夫な体だけが取り柄だったのに、仕事中に倒れ、人生初の入院生活を経験した。精魂傾けていた仕事を放り出し、おとなしくベッドで横になっているなんて想像すらしなかったし、その後、医師に命じられたジム通いで、まさか筋肉をいじめるマゾヒスティックな喜びに目覚めようとは思わなかった。 人生はいつだって偶

『未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために』あえて、幼い子どもがいる家庭にすすめたい 書影

アート・スポーツ / 人物

『未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために』あえて、幼い子どもがいる家庭にすすめたい

物心がつく頃になると、彼が世界のあちらこちらに散在する家族と電話で話すときに口にする様々な言語の響きを聴きながら、「一体この人にはどんな世界が見えているのだろう」と不思議に感じた 著者は、遺伝学上はアジア諸国の混血でありながら、東京でフランス国籍者として生まれた出自を持つ。さらに、子ども時代の言語獲得、濁音との共生、高校時代はパリでフランス語を、大学在学中は

ドミニク・チェンって何者だ? 『未来をつくる言葉:わかりあえなさをつなぐために』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

ドミニク・チェンって何者だ? 『未来をつくる言葉:わかりあえなさをつなぐために』

この本、HONZの、そして新潮社の編集者でもある足立真穂から送られてきた。ドミニク・チェン、最近、ときどき目にする名前だが予備知識はまったくない。「ドミニク・チェンって何者なん?」とメッセージを送ったら、「それを聞かれるので書いてもらった一冊です」と返事が来た。さすが敏腕編集者、あざといことを言う。 そして読んだ。ドミニク・チェンが何者かがわかったかと尋ねら

「知の巨人」立花隆のすべてがここに『知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

「知の巨人」立花隆のすべてがここに『知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと』

立花隆 といえば、誰がなんと言おうと言おうまいと『宇宙からの帰還』である。立花隆の最高傑作というだけでなく、日本のノンフィクションとして、他を全く寄せ付けない、世界に通用する空前絶後の作品だと断言できる。 1983年に出版されたその本以来、立花隆の本を何冊読んできたかわからない。それに、露出の多い人なので、ある程度のことは知っていると思っていた。しかし、この

伝説の編集者に会ってきた! ――出版に、希望を探して 書影

人物 / HONZ活動記

伝説の編集者に会ってきた! ――出版に、希望を探して

「とりあえず加藤さんに会うことかな」 右肩下がりの出版業界。同業他社の友人たちと話していても、明るい話題は聞こえてこない。器用でもなければ体力もない自分が仕事の質を落とさずにこの業界でやっていくのは、もう無理なんじゃないか……と落ち込んでいたとき、HONZの成毛代表がかけてくれた言葉が、上記のものだった。 加藤さん――加藤晴之さんは、講談社で数々の話題作を世

『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』人生がどうしようもないほど暗くむなしいときに悲観を楽しむ方法論 書影

人物 / 社会

『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』人生がどうしようもないほど暗くむなしいときに悲観を楽しむ方法論

告白しよう。評者はずっと、なるべく他人と関わりたくないと祈りながら生きてきた。楽しいことも悲しいことも何も経験したいと思わない。誰かと揉めたり争ったりするなどもってのほかだ。人生の糧になる? 知るか。全部ストレスだ。願いは一つ、社会的接点を一切放棄して、永遠に寝床で布団にくるまっていたい……。 こんな暗い感情を披瀝したところで会話が盛り上がるはずがなく、賛同

『映画監督 神代辰巳』読者を圧倒する重量と熱量! 日本映画史を辿る貴重な一冊 書影

アート・スポーツ / 人物

『映画監督 神代辰巳』読者を圧倒する重量と熱量! 日本映画史を辿る貴重な一冊

縦26.5センチ 横20センチ 厚さ4.5センチ。700ページ強で重さは1620グラム。価格は税別1万2000円。年末に入手してから、机の左側にずっと置かれている。持ち歩くことも、ベッドに仰向けになって読むこともできないので、家事や仕事の合間に椅子に背筋を伸ばして座り、少しずつ読み進めるほかはない。だがこの重量に見合う熱量に終始圧倒された。 1995年2月2

アフリカのエイズをなくせ! 『撃ち落とされたエイズの巨星』 書影

医学・心理学 / 人物

アフリカのエイズをなくせ! 『撃ち落とされたエイズの巨星』

『エイズの起源』(みすず書房)や『完治』(岩波書店)など、エイズ関連の優れた図書はたくさんある。その多くは、現代医学がエイズという病気に一丸となって取り組み、克服してきたかの成功物語である。 抗HIV薬が開発され、感染してもエイズの発症を抑えることができるようになった。1981年に最初の症例がNEJM(ニューイングランド医学雑誌)に発表されてわずか40年たら

『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』

伝記は文芸の分野の一つである。 一人の人物の生涯と事績を書くものだから、対象はそれに値する人でなくてはならない。 リットン・ストレイチーというイギリスの文人に『ヴィクトリア朝のエミネントな人々』という列伝の名著がある。取り上げられているのはマニング枢機卿、フローレンス・ナイチンゲール、教育家のトーマス・アーノルド、ゴードン将軍。 ここでぼくはエミネント(em

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医学・心理学 / 人物

医学界の「怪物」、その壮絶なドラマ『ゴッドドクター 徳田虎雄』

徳田虎雄。その名を聞いたとき、どのようなイメージが思い浮かぶだろう。医療に風穴をあけた風雲児、潤沢な資金をバックにした金権政治家、あるいは、難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)と闘う患者だろうか。それは世代や立場によって大きく異なってくるに違いない。いや、そもそも若い人には、その名さえ知られていないかもしれない。 まったくの徒手空拳から、昭和48年、大阪の松原

『無敗の男 中村喜四郎 全告白』竹のようなしなやかさを特徴とする組織づくり 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『無敗の男 中村喜四郎 全告白』竹のようなしなやかさを特徴とする組織づくり

「中村喜四郎」という名を聞いて何を思い浮かべるだろうか。もはやかすかな記憶…「なにか汚職で捕まった人じゃなかったかしら」。若い人たちなら思い出す記憶もなく「だれ?」というだろう。 その「キシロー」の名を最近なぜか、チラチラと見かけるのである。それも思いがけないところで。「え?このキシローさんは、あのキシローさん?」 中村喜四郎氏は1949年生まれ。大学卒業後

天才プログラマーにして闇社会の帝王、超大金持ちにしてドケチ。その男の名はル・ルー。ドラマ化決定の『魔王: 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』は超弩級のノンフィクションだ! 書影

人物 / 事件・事故

天才プログラマーにして闇社会の帝王、超大金持ちにしてドケチ。その男の名はル・ルー。ドラマ化決定の『魔王: 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』は超弩級のノンフィクションだ!

海賊が跋扈するため、ソマリア沖ではマグロ漁ができなくなっていた。そこで漁をすれば一網打尽、一攫千金だ。しかし、そのためにはロジスティクスも安全も確保しなければならない。巨額の資金による、飛行場付き、傭兵が警護する完全武装の漁業基地建設が始まった。 全米で多くの医師や薬剤師がオンライン薬局での処方薬販売にかかわっていた。違法ぎりぎりの取引に気づいた麻薬捜査官に

『悩めるローマ法王 フランシスコの改革』バチカンでいま何が起きているのか 書影

人物 / 世界史

『悩めるローマ法王 フランシスコの改革』バチカンでいま何が起きているのか

ローマ法王が38年ぶりに来日する。 滞在中は広島と長崎の訪問や、東日本大震災の被災者との面会などが予定されている。前回ヨハネ・パウロ2世が来日した時は、初めてローマ法王が日本を訪れたとあって、各地で熱狂的に迎えられた。今回はどうなるだろう。個人的に気になっているのは、東京ドームで行われるミサである。何か荘厳な雰囲気を出すための演出はあるのだろうか。いまから気

『海峡に立つ 泥と血の我が半生』生臭い社会を駆け抜けた「フィクサー」の半生 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『海峡に立つ 泥と血の我が半生』生臭い社会を駆け抜けた「フィクサー」の半生

戦後最大の経済事件といわれる「イトマン事件」で逮捕された許永中が自身の半生を綴った自伝である。 許永中が語る戦後からバブル期までの日本は、現代のような漂白された潔癖な社会ではなく、政、財、官と裏社会が分かちがたく深く結びついた社会である。良しあしは別にして、混沌としながらもエネルギーに満ち溢れ、どこか生臭いにおいのする社会が、つい数十年前までこの国に存在して

『アインシュタインの旅行日記―日本・パレスチナ・スペイン』天才物理学者が見た日本人と日本文化 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『アインシュタインの旅行日記―日本・パレスチナ・スペイン』天才物理学者が見た日本人と日本文化

ロケットが飛ぶのもエアコンを使えるのも大元の原理には物理学がある。現代社会の科学技術は全て物理で説明されるが、その根底を作った科学者の筆頭にアインシュタイン(1875-1955)がいる。 相対性理論を発表した物理学者としても有名だが、彼は1922年(大正11年)から翌年にかけて約1ヶ月半の間、妻エルザとともに日本を訪問したことがある。しかも彼は日本へ向かう船

『地図と読む 現代語訳 信長公記』さらに読みやすくなった"信長の一代記"の現代語訳 書影

人物 / 日本史

『地図と読む 現代語訳 信長公記』さらに読みやすくなった"信長の一代記"の現代語訳

著者太田牛一は長寿の人であった。名古屋市北区に生まれ、大阪市中央区で亡くなった。享年86。死因はインフルエンザをこじらせたためだといわれる。 と、今日の人のように書いたのは、その筆致がじつに現代的だからだ。もちろん原文はいわゆる古文なのだが、現代語訳すると論理的な構成になっていることに驚かされる。中川太古氏の現代語訳が素晴らしいということはいうまでもない。

『実像 広島の「ばっちゃん」中本忠子の真実』 ”広島のマザー・テレサ”の知られざる半生 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『実像 広島の「ばっちゃん」中本忠子の真実』 ”広島のマザー・テレサ”の知られざる半生

「ばっちゃん」をご存知だろうか。 中本忠子さん。84歳。広島市の基町アパートを拠点に、40年近くにわたって非行少年たちに無償で手料理を提供してきた人物だ。この活動と並行して、76歳の定年まで30年にわたり保護司も務めた。把握されているだけでも、これまで数百人を立ち直らせてきたという。こうした活動が評価され、国や各種団体からの表彰多数、その半生はNHKのドキュ