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741記事

AIなんか怖くない(ような気がする)『スマートマシンはこうして思考する』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

AIなんか怖くない(ような気がする)『スマートマシンはこうして思考する』

高度に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない。英国のSF作家アーサー・C・クラークの言葉である。身の回り、本当に魔法だらけだ。 魔法中の魔法といえば人工知能だろう。色々なタイプの人工知能の基本的な原理と、それらがどのように開発されてきたかについての本が、『スマートマシンはこうして思考する』である。 トップは、米国の国防高等研究計画局が主催した自動運転のコン

『人類学とは何か』分けられない人間性に取組む学問として 書影

サイエンス / 教養・雑学

『人類学とは何か』分けられない人間性に取組む学問として

人類学者が各々のフィールドで獲得した情報を綴った本は不思議と驚きの源泉である。世界にはまだまだ知らないことがあることに喜びを感じることができ、人類が辿ってきた進化の道筋への想像力を豊かにする。暗黙の前提を明るみにし、常識だと信じていた基礎をぐらつかせる。 人類学者がいなければ、聞かれることもなく、知られることもなかったフィールドの人々の知恵を集めてきた。フィ

『銀河の片隅で科学夜話』「勉強しない子どもたちにイライラし通しの妻が、この本を読んでとても優しくなったんですよね」(※個人の感想です) 書影

サイエンス / 生物・自然

『銀河の片隅で科学夜話』「勉強しない子どもたちにイライラし通しの妻が、この本を読んでとても優しくなったんですよね」(※個人の感想です)

大変だ。これは緊急事態だ。 そんなの、わかってるって? いや、世間じゃなくて、我が家の話なのです。 子どもたちは長引く休校期間を、あろうことか存分に満喫している。 息子は、 『魔術はささやく』 を読んですっかり宮部みゆきにハマり、「全冊読破する!」と宣言したきり引きこもってしまうし(そういえば3日ほど見かけない気が……)、娘はといえば、ネトフリとアマゾンプラ

『「間合い」とは何か』日本流ソーシャル・ディスタンスの研究 書影

サイエンス / 社会

『「間合い」とは何か』日本流ソーシャル・ディスタンスの研究

いまや「ソーシャル・ディスタンス」という言葉を聞かない日はない。 「社会的距離」などと直訳されるけれど、ちょっと芸がないなぁと思う。 だって日本語にはもともと「間合い」という言葉があるからだ。 「間合い」とは、単純に考えれば「相手との距離」である。でもよく考えると、この言葉はけっこう深い。実際この言葉には豊かな意味合いが含まれている。 真っ先に思い浮かぶのは

『夢の正体 夜の旅を科学する』今こそ、夢を楽しむべき時 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『夢の正体 夜の旅を科学する』今こそ、夢を楽しむべき時

まさかなるべく家に引きこもってろと叫ばれる時代が到来するとは思わなかった。評者はどちらかと言えばインドア人間なのでそこまで苦ではないが、あちこち出かけて買い物したり映画を観たり飲み歩いたりするのが楽しみな人にとってはつらい日々だと想像する。このうえ毎日暗いニュースばかり流れてくるし、世界も日本も自分の生活もどう変容していくかわからないし、気が滅入る一方である

『クリーンミート』パンデミック防止の救世主!? 書影

サイエンス / ビジネス

『クリーンミート』パンデミック防止の救世主!?

生きている動物ではなく、生物の細胞を使って食肉を生産する研究が進んでいます。この食肉生産方法は「培養肉」と呼ばれる新技術で、10年後までには店舗で販売される見込みです。培養肉はまぎれもない動物の肉ですから、既存の植物由来のフェイクミートと混同しないようにしてください。昔ながらの肉と同じ味の培養肉の安全性が長期にわたる調査で確認され、手ごろな価格で販売されたと

『生き物の死にざま』を買ったのは、どういう人たちなのか? 書影

サイエンス / 併せて読まれたこの一冊

『生き物の死にざま』を買ったのは、どういう人たちなのか?

テレビで取り上げられたものの売れ方というのは出版業界に限らない、大事なポイントでしょう。本についても「この人がテレビで薦めたら売れる」という方が何人かいます。ノンフィクション業界でのその筆頭格となっているのがカズレーザーさん。昨年9月に薦めた『ケーキの切れない非行少年たち』はこのオススメによって大ブレイクし、今に至っても高い売行きを見せています。 *グラフは

科学の歴史がこの一冊に!──『世界を変えた150の科学の本』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

科学の歴史がこの一冊に!──『世界を変えた150の科学の本』

この『世界を変えた150の科学の本』は、科学の歴史上重要とみられる科学ノンフィクションを150冊以上紹介した本になる。本は270ページだが、大判のフルカラーで、150冊の本の中身だったり図版だったり表紙だったりが所狭しと並んでいて、ずっしりと重厚で、中身が詰まっている。記述がおもしろいのはもちろんだが、図版などをぱらぱら見ているだけでも楽しい。 まだ本という

『世界の起源 人類を決定づけた地球の歴史』グローバル経済を左右する地球環境のベースを正しく理解する 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『世界の起源 人類を決定づけた地球の歴史』グローバル経済を左右する地球環境のベースを正しく理解する

地球上の自然環境がそこに住む人々の生き方を決定する、という考え方がある。「環境決定論」と呼ばれる思想で、四季が織りなす大自然に囲まれてきた日本人には比較的身近な見方でもある。 本書はこうした立場から、地球の誕生からさまざまな変遷を経て人間がどのように現在に至ったかを克明に論じる。副題に「人類を決定づけた地球の歴史」とあるように、地質学・地理学・地球物理学を駆

『ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学』ファイルを送るには 書影

サイエンス / HONZブックマーク

『ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学』ファイルを送るには

大きなデータファイルを送るのは、場合によっては難しい。 ファイルを送る最も単純で、最もわかりやすい方法は、そのファイルが貯蔵されているデバイスを手に取り、意図した受け手のところに歩いていき、手渡すことだ。 コンピュータを運ぶのが難しいことがある──特に、丸々一部屋の大きさだった初期のコンピュータの場合はそうだ。だったらコンピュータ全体を運ぶのではなく、コンピ

『ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学』 書影

サイエンス / 「解説」から読む本

『ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学』

突拍子もない質問に科学で答える『ホワット・イフ?』、科学絵本『ホワット・イズ・ディス?』(ともに早川書房刊)に続く、元NASAエンジニアの人気ウェブ漫画家、ランドール・マンローの新しい本、『ハウ・トゥー』が登場した。『ハウ・トゥー』は、「川を渡る」、「ピアノを弾く」、「スマホを充電する」、など、一見日常的な課題を解決するために、あえて「とんでもない」方法を科

脳科学を日常生活にとりいれる、世界的ベストセラー 『「人間とは何か」はすべて脳が教えてくれる』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

脳科学を日常生活にとりいれる、世界的ベストセラー 『「人間とは何か」はすべて脳が教えてくれる』

本書は、本国ノルウェーで「彼女こそが脳の脳だ」と評されている、著名な神経科学者が書いた世界的ベストセラー“脳科学本”である。世界21か国で翻訳出版されている。本書がこれほど多くの読者を獲得できたのは、日々の出来事を使って科学を説明しているからだろう。読み手は、そこから具体的な思考を巡らすことができるのだ。 例えば、この本で紹介される脳科学の最新研究には、次の

『時間は存在しない』を買ったのは、どういう人たちなのか? 書影

サイエンス / 併せて読まれたこの一冊

『時間は存在しない』を買ったのは、どういう人たちなのか?

天候に恵まれたこともあり、12月から年末年始はよく本が売れた月になりました。特に長い冬休みのスタートとなった12月28日は1年のなかでもっとも本が売れた日になったようです。年末年始には重厚な本がよく売れます。『21Lessons』や『サピエンス全史』『哲学と宗教全史』などここで取り上げた本もよく売れました。そういったタイトルに並び注目を集めたのが『時間は存在

『毒薬の手帖』それはダーティな1920年代アメリカで躍動する鉄人毒物学者二人の泥臭く革新的な功績 書影

サイエンス / 事件・事故

『毒薬の手帖』それはダーティな1920年代アメリカで躍動する鉄人毒物学者二人の泥臭く革新的な功績

たまらなく渋くてカッコいい主人公の紹介から始めたい。表紙の写真左、試験管を持つちょっと神経質そうな男が化学者アレグザンダー・ゲトラー、その隣にいる大柄のヤギひげおじさんが病理学者でありニューヨーク市監察医務局長も務めるチャールズ・ノリスだ。本書『毒薬の手帖』は、現代科学捜査の基礎を築いたこの毒物学者二人が力を合わせて人間の暗い欲望が充溢する1920年代アメリ

2020年代突入直後にめくりたい!未来の本 3冊 書影

サイエンス / 教養・雑学

2020年代突入直後にめくりたい!未来の本 3冊

そもそも、編集部からの無茶振りをよくも引き受けたものだ。100年前に『日本及日本人』という雑誌の臨時増刊号で前例があったといえども、100年後に思いを巡らせることなど、あまりに無謀だ。 100年後なら生きていないから、当たってもハズレても生きていないから結果は問われないと開き直るのは、上野千鶴子だ。そのまま現政権の批判に流れ込んでいく結論あは、読者の期待に答

日本の科学は失速状態  『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』 書影

サイエンス / 社会

日本の科学は失速状態 『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』

日本の科学は失速している。一昨年の3月、ネイチャー誌に掲載されたレポートは大きな反響を呼んだ。一般の人たちには驚きを持って迎えられたようだが、多くの研究者にとっては、やはりそうかという感じであった。 『誰が科学を殺すのか』は、企業の「失われた10年」、「選択と集中」でゆがむ大学、「改革病」の源流を探る、海外の潮流、の4章から構成されている。毎日新聞に掲載され

『宇宙から帰ってきた日本人』あの名著から36年、宇宙は近くなりにけり 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『宇宙から帰ってきた日本人』あの名著から36年、宇宙は近くなりにけり

1983年、知的欲求旺盛なあるジャーナリストが一冊の本を上梓した。それは、米ソが宇宙開発戦争に明け暮れていた時代、母なる地球を離れ、宇宙へと向かった飛行士たちの精神的変化に着目し、幅広い知識をベースに、インタビューイを搾り尽くさんばかりに貪欲な取材を重ねまとめ上げたノンフィクション――立花隆『宇宙からの帰還』である。 人類は今の地上の支配者だ……と書いても過

DNA鑑定とFACT 『DNA鑑定 犯罪捜査から新種発見、日本人の起源まで』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

DNA鑑定とFACT 『DNA鑑定 犯罪捜査から新種発見、日本人の起源まで』

DNA鑑定と聞いて私がまず連想したのは、テレビドラマの犯罪捜査のシーンだ。「トレース」や「アンナチュラル」など、最近、その手のドラマをよく見かける。まるで水戸黄門の印籠のように、クライマックスでDNA鑑定結果と真実が提示される。 本書は、著者が手がけてきたDNA鑑定を紹介するだけでなく、「DNA」「染色体」「遺伝子」「ゲノム」といった言葉の使い分け方など、基

『プリンシピア 自然哲学の数学的原理』世界の大古典は、案外簡単に読めるもの 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『プリンシピア 自然哲学の数学的原理』世界の大古典は、案外簡単に読めるもの

科学者ニュートンはだれでも知っているが、彼の著作を読んだ人はめったにいない。その理由は、300年以上も前に書かれた分厚い本で、内容が数学だらけで、翻訳してもとても読めたものではない、と信じられているからだ。 しかし、それは間違っている。このたび理工書の老舗、講談社ブルーバックスから日本語版(全3巻)が刊行され、何と意外に読めるのである。そこで「科学の伝道師」

無名科学者の挑戦から読み解く『エネルギー400年史』 書影

サイエンス / 世界史

無名科学者の挑戦から読み解く『エネルギー400年史』

『原子爆弾の誕生』でピュリッツァー賞を受賞したリチャード・ローズの最新作だ。薪が主要エネルギー源だった16世紀後半から、気候変動対策を気に留めながらエネルギーのベストミックスを追及する現在まで、という400年超にわたる人類のエネルギー変遷史を描く。 有名無名の人物の物語を大きなテーマへと昇華させていく著者の手法は本書でも健在で、今回も科学者や技術者など個々人

『精密への果てなき道:シリンダーからナノメートルEUVチップへ』「精密さ」の果てに到達した自然界の「不精密さ」の価値 書影

サイエンス / 教養・雑学

『精密への果てなき道:シリンダーからナノメートルEUVチップへ』「精密さ」の果てに到達した自然界の「不精密さ」の価値

知る人ぞ知るサイエンス系ノンフィクションの名手、サイモン・ウィンチェスターの新作ということで、すぐ手にとった。 2004年に邦訳が出た『クラカトアの大噴火』は450ページを超える大部だったが、貪るように読んだ記憶がある。19世紀末スマトラ島近くのクラカトア火山が大爆発を起こし吹き飛んだ事件だ。巨大な津波が3万人を超える人々を飲み込んだ。衝撃波は地球を4周する

『思いどおりになんて育たない: 反ペアレンティングの科学』あれこれ子育てに悩んだら、真っ先に読んだらいい 書影

サイエンス / 医学・心理学

『思いどおりになんて育たない: 反ペアレンティングの科学』あれこれ子育てに悩んだら、真っ先に読んだらいい

本書のタイトルから、まずわかることは、子どもが思い通りに育ってくれたらいいなという期待、思い通りに育てたいという欲望があるということだろう。それは、なぜだろうか? 急がば回れ、その背景にある社会動向の変化を見てみよう。昨今、親になった世代は充実した教育を受けてはいるものの、子どもの世話をした経験はほとんどないという状況だ。家族構成の変化、要するに核家族化が進

悪に科学で踏み込む──『悪について誰もが知るべき10の事実』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

悪に科学で踏み込む──『悪について誰もが知るべき10の事実』

本書は、人間が行う悪的な行動について、それがどのような原因によって引き起こされるのかを科学的に解き明かしていこうと試みる一冊である。悪を科学的に解き明かす──といっても、その前段階にある問い、悪とはいったい何なのか、というのがまず難しい問題だ。正義は人の数だけあるというけれど、それは悪にだって当てはまるからで、容易に誰かが悪であるとは言えないし、今多くの人が

『ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する』この宇宙を作ったのは神か? それとも科学者か? 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する』この宇宙を作ったのは神か? それとも科学者か?

かつてノーベル賞物理学者のリチャード・ファインマンはこう言った。「自分で作れないものを、私は理解していない」。 このようなDIY精神こそが、世の中のイノベーションを加速させてきたことは言うまでもないだろう。情報科学しかり、ゲノム科学しかり。しかしこの潮流が、宇宙科学の領域にまで及んでいるとは知らなかった。 実験室で宇宙を作る。そんなことが、理論的には実現可能

時間とはいったいなんなのか?──『時間は存在しない』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

時間とはいったいなんなのか?──『時間は存在しない』

時間は存在しない、といきなり言われても、いやそうは言ったってこうやって呼吸をしている間にもカチッカチッカチッと時計の針は動いているんだから──とつい否定したくなるが、これを言っているのは、一般相対性理論と量子力学を統合する、量子重力理論の専門家である、本職のちゃんとした(念押し)理論物理学者なのである。 名をカルロ・ロヴェッリ。彼が提唱者の一人である「ループ

『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち 書影

サイエンス / 医学・心理学

『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち

具体的な数字やデータを示してもダメ。明晰な論理で説いてもムダ。そんなとき、あなたはきっとこう思ってしまうのではないか。「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」。 実際問題、日々の生活でそんな思いを抱いてしまう場面は少なくないだろう。失敗例がすでにいくつもあるのに、それでもまだ無理筋を通そうとする社内のプレゼンター。子育てのあり方をめぐって、何を言っても聞く耳

『恐竜の世界史──負け犬が覇者となり、絶滅するまで』 失われた世界の新たな歴史 書影

サイエンス / 生物・自然

『恐竜の世界史──負け犬が覇者となり、絶滅するまで』 失われた世界の新たな歴史

そこに描かれている恐竜の姿に圧倒されつつ、胸をワクワクさせてページを繰った子どもの頃。そのワクワク感を思い起こさせてくれるような快著である。 2010年代に描かれる恐竜は、かつてわたしたちが見聞きした恐竜とはまるで異なっている。というのも、恐竜にまつわる研究がこの20年ほどで著しく進展し、恐竜のイメージが大きく書き換えられたからだ。驚くなかれ、たとえば新種の

宇宙誕生の謎を解き明かしつつある人々の話──『ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

宇宙誕生の謎を解き明かしつつある人々の話──『ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する』

本書は、宇宙の始まりについての本である。宇宙の始まりといっても、意味は二つある。 一つは、無論我々が住むこの宇宙の始まりについて。基本的な同意が得られている部分としては、この宇宙はビッグバンによって始まったとされる。高温で高密度の閃光とともに極小の宇宙がまず産まれ、そこに時間と空間が生まれ、次いで物質が生じた。 生まれるのはいいが、なぜ宇宙は突然、指数関数的

『ことばにできない宇宙のふしぎ』「宇宙と人間」を楽しむ大人の絵本 書影

サイエンス / 教養・雑学

『ことばにできない宇宙のふしぎ』「宇宙と人間」を楽しむ大人の絵本

本書の3年前に出版された同じ作家の『翻訳できない世界のことば』は本当にステキな大人の絵本でした。世界中の言語から、その言語にしかない言葉を選び、その意味とイメージに合わせた絵が添えられているのです。たとえば 「PORONKUSEMA」 フィンランド語で「トナカイが休憩なしで、疲れずに移動できる距離」 「IKTSUARPOK」 イヌイット語で「だれか来ているの

『発酵野郎! 世界一のビールを野生酵母でつくる』著者はまちがいなく、ボクを超えるADHDだ 書影

サイエンス / 生物・自然

『発酵野郎! 世界一のビールを野生酵母でつくる』著者はまちがいなく、ボクを超えるADHDだ

著者はボクがこれまでにお目にかかった経営者のなかで3本指に入る無茶な人だ。ある意味でビル・ゲイツや孫さんを超える。戦国時代から続く伊勢の超老舗当主が約束されていた人だ。創業は天正3年。この年、伊勢から直線距離で50km北東では織田信長と徳川家康が武田勝頼と戦っていた。長篠の戦いである。 東北大学では血尿がでるまで空手に打込み、社会人になってからは盛大な失敗つ

そうだ、夏休みには伝記を読もう! 『生命科学者たちのむこうみずな日常と華麗なる研究』 書影

サイエンス / 人物

そうだ、夏休みには伝記を読もう! 『生命科学者たちのむこうみずな日常と華麗なる研究』

単行本「なかのとおるの生命科学者の伝記を読む」を出版してから早くも八年。思いがけず文庫化のお話をいただきました。あちこちに講演や講義でお呼びいただいた時に、けっこう「先生の伝記の本、面白かったです」と声をかけてもらえたり、サインをお願いしますと頼まれることがあって、ほんとうにありがたいことだと思っています。 何を書いたか忘れてしまっていることが多いことには、

『無人の兵団 AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』現実の政治と軍事に即したロボット兵器の未来 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『無人の兵団 AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』現実の政治と軍事に即したロボット兵器の未来

あのビル・ゲイツが2018年の年間ベストブックに選出した本だ。読んでみるしかない。テーマは未来の兵器と戦争。未来といってもすぐそこにある未来だ。 爆発的に普及したスマホのおかげで高度な機能を持つ電子部品の価格が劇的に安くなった。その結果、爆弾を運搬するミサイルやドローンなどの飛行体、機関銃をもつ戦闘ロボットなども安価に大量生産することが可能になった。いわば無

自律型兵器に関する、一般読者向けの最良の道案内となるノンフィクション──『無人の兵団──AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

自律型兵器に関する、一般読者向けの最良の道案内となるノンフィクション──『無人の兵団──AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』

無人兵器についての一般向けのノンフィクションはこれまでも出ていたが、ようやく最新の政治、技術を踏まえた上で自律型兵器を網羅的に語ってくれる本が現れた! これから紹介する、ポール・シャーレ『無人の兵団──AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』がまさにそれで、「自律型兵器とはなんなのか、その定義」、「自律型兵器にどこまでの決定権をもたせるかについて、軍事的な意

思わず二度見してしまう『おならのサイエンス』 書影

サイエンス / 教養・雑学

思わず二度見してしまう『おならのサイエンス』

誰もが少しは恥ずかしい経験あるであろう「おなら」。力を入れた時、油断した時、大事な時、突然とやってくる私たちの生理現象だ。まだ音が出るだけなら笑ってごまかせるが、クサい場合は本当に恥ずかしく、目も当てられない。 生理現象にもかかわらず、恥ずかしいものとしてある意味避けられている「おなら」。これまで、「おなら本」があったとしても、どちらかというと健康よりの本で

郡司芽久の『キリン解剖記』は研究の真骨頂だ! 書影

サイエンス / 新刊超速レビュー

郡司芽久の『キリン解剖記』は研究の真骨頂だ!

どうしてもアマゾンで本を買うことが多いが、やはり本屋さんへもでかけねばならない。いきなりこの本が目に飛び込んできた。はぁ?『キリン解剖記』?? なんじゃそら。経験上、この手の本はあたりはずれが大きい。いったい誰が書いているのかと著者紹介を見ると、なんと女性の写真が… 郡司芽久、きっと「ぐんじナントカひさ」という名前だと思ったのに「ぐんじめぐ」らしい。キリンの

『アインシュタインの旅行日記: 日本・パレスチナ・スペイン』天才物理学者の日記にある日本の"今"と"昔" 書影

サイエンス / 教養・雑学

『アインシュタインの旅行日記: 日本・パレスチナ・スペイン』天才物理学者の日記にある日本の"今"と"昔"

1922年(大正11年)11月17日アインシュタインは神戸港に到着した。この日は京都の都ホテルに宿泊。日記には「下の町はまるで光の海。強烈な印象」「日本人は簡素で上品、とても好ましい」と綴っている。 アインシュタインが特殊相対性理論と光量子仮説を発表したのは1905年。26歳のときだった。自身のノーベル物理学賞受賞を知ったのは日本への船上だった。さぞかし楽し

人文文化と科学文化の融合──『なぜ脳はアートがわかるのか 現代美術史から学ぶ脳科学入門』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

人文文化と科学文化の融合──『なぜ脳はアートがわかるのか 現代美術史から学ぶ脳科学入門』

なぜ脳はアートがわかるのか。そんなことをいうと、「いや、そもそも自分にゃさっぱりアートはわからねえ」という人がわらわら湧いて出そうだが、かくいう僕もそのタイプ。真四角の図形をぽこぽこ置いて、赤だの黄色だので適当に塗ったとしか思えない絵が抽象絵でありアートなのだと言われても素人が作ったものとの違いがよくわからないことが多い。 だが、ある意味ではそういう人たちに

『流れといのち 万物の進化を支配するコンストラクタル法則』物理学から見えてくる生命の新しい景色 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『流れといのち 万物の進化を支配するコンストラクタル法則』物理学から見えてくる生命の新しい景色

生命とは何か? こう問われたら、多くの人は生物学というフレームワークを用いて解を導こうとするだろう。しかし、本書のアプローチは一味違う。徹底的に物理学からアプローチして、この問いに挑もうとするのだ。 著者は2018年に米国版ノーベル賞と言われるベンジャミン・フランクリン・メダルを受賞した科学者。これだけ聞けば、本書には難解な数式が多く出てくると思うかもしれな

『「うつ」は炎症で起きる』 「それは体の問題」という新たな視点 書影

サイエンス / 医学・心理学

『「うつ」は炎症で起きる』 「それは体の問題」という新たな視点

若い医師はあるとき、リウマチ性関節炎と診断されていた女性患者がうつ病をも患っていることに気づいた。そのささやかな発見に気をよくした彼は、上機嫌で先輩医師にその旨を伝える。だが、先輩医師から返ってきた反応はきわめて淡白なものであった。「うつ病? そりゃ、君だってそうなるだろうよ」。 以上は、本書の著者エドワード・ブルモアが内科の研修医時代に実際に経験したことで

『138億年宇宙の旅』 書影

サイエンス / 「解説」から読む本

『138億年宇宙の旅』

この本を読んでいると、目がくらくらします。 これにはいくつかの意味があります。まず、息を呑む展開でぐいぐいと話が進んでいくので、そのままの勢いで読み続けると目が回り始めます。ときどき立ち止まって深く息をして、ちょっと戻ってからあらためて読み始めないといけません。 次に、「あなた」と呼びかけられて、いきなり星の爆発に出くわされ、ブラックホールからジェットで噴き