
『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』リクルートを生んだ希代の経営者の光と影
本書はさまざまな読み方ができる多面的なビジネス書である。江副浩正という希代の経営者の波乱に富んだ人生をつづった伝記として、戦後のわが国の企業がたどってきた経営史として、そしてリクルートという会社の特異なビジネスモデルの研究書として読むことができる。 江副は非常に人見知りをする性格で、創業社長にありがちないわゆる「親分肌」ではなかった。それが逆に功を奏し、自分
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本書はさまざまな読み方ができる多面的なビジネス書である。江副浩正という希代の経営者の波乱に富んだ人生をつづった伝記として、戦後のわが国の企業がたどってきた経営史として、そしてリクルートという会社の特異なビジネスモデルの研究書として読むことができる。 江副は非常に人見知りをする性格で、創業社長にありがちないわゆる「親分肌」ではなかった。それが逆に功を奏し、自分

世代的に、リクルート事件のことを知らない。むしろ、就職氷河期世代の私にとってのリクルートといえば、「エリート学生を超青田買いしている会社」といった印象だ。「すごい成果主義なんでしょ?」「定年退職までいられなくて、入社したら必ず独立しなきゃいけないんでしょ?」と、私も、周りも大学生たちは思っていた。 しかし、読み始めてまず最初に思ったことはひとつだ。「この時代

組織の中で、自分の発言が曲解されてしまうのではないかとか、それで足を引っ張られるのではないかと心配しだしたら、表立った発言は控えるようになり、裏で根回しするようになるのではないだろうか。 今回の東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の女性理事登用についての発言も、むしろそうしたありがちな状況を積極的に利用して会議を早く終わらせてしまおうという、いかにも日本的

この本をここで紹介していいものか迷ったが、著者の真摯な姿勢に心を動かされたので、おもねらずにレビューしてみたい。 本書は、ベストセラー『7つの習慣 最優先事項』の訳で一躍売れっ子翻訳家になった著者が、出版社との様々なトラブルを経て業界に背を向けるまでの顛末を綴った、げに恐ろしきドキュメントだ。 驚くことに、名前こそ伏せてあるが、理不尽な目に遭わされた出版社の

本書は、経営学者の野中郁次郎と竹内弘高による世界的ベストセラー『知識創造企業』の四半世紀ぶりの続編である。ナレッジマネジメント分野では最も重要な文献の1つとされるこの前著では、新しい組織的知識がSECI(セキ)(共同化 Socialization、表出化 Externalization、連結化 Combination、内面化 Internalization)

第三次AIブームにのって有象無象のスタートアップベンチャーが立ち上げられた。一次は玉石混合の状態だった中、ここ数年で真に社会課題を解決しそうなベンチャーが生き残るようになってきている。その中でもユニコーン(企業価値10億ドル以上の非上場企業)まで評価されるようになったのがPreferredNetworksという会社だ。 同社は、2020年初時点では日本最高の

本書の冒頭で、思想家チャールズ・アイゼンシュタインの、「バンカーとは、おカネを美しく使う人を探してくる人のことをいう」(『聖なる経済学』)という言葉が紹介されている。本書のタイトルである「誇りある金融」とは、こういう金融のことをいうのであろう。では逆に、「誇りのない金融」とはどういうものか。 銀行は、しばしば「晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」と言われ

タイトルが結論である。装丁は黒を背景に白文字、力強いフォント、白と黒を反転させた帯。脱線のない文章で、余計な虚飾もなく、淡々と展開される。表題の結論の骨格に、4人の経営者の物語で肉付けしていく。安藤百福、小倉昌男、本田宗一郎、西山彌太郎、それぞれチキンラーメン、宅急便、二輪車、銑鋼一貫の製鉄所を作り上げた名経営者である。 直感で発想し、論理で検証し、哲学で跳
今や巨人となったスタートアップ企業の成功譚ではあるのだが、不思議な読後感をもたらす一冊だ。世間知らずの大学生によるウェブサービスが世界中へ広がっていく爽快感もなければ、急成長に浮かれて失敗するお茶目さもない。例えるなら、人気ファンタジードラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の重厚なタイトルBGMが延々流れているような世界観。その通奏低音の中に、人を物語へ強く引き

もしかすると本書は20年代を代表する企業の経営について書かれた初めての本になるかもしれない。まだ7月だが今年のベストビジネス書はこの本で決まり?と言ってもいいくらい素晴らしい本だった。小売業で働く人は必読の1冊である。いまや日本を代表する企業となったユニクロを追い抜くかもしれない企業が現れたのだ。その名はワークマン。作業服専門店で知られるあのワークマンである

人類は化石燃料に支えられた世界からの脱却を試みている。石炭や石油といった過去2度の産業革命を支えた燃料から、再生可能エネルギーへと舵を切っているのだ。ただ、この流れには落とし穴があるとフランスの新進気鋭ジャーナリストが警鐘を鳴らす。 地産地消型の再生可能エネルギーの普及は、化石燃料由来の温室効果ガスの抑制と中東など一部地域に偏重する資源から脱却できると信じら

本書は「事業再生のプロ」冨山和彦のビジネスマン人生の集大成ともいうべきものである。 産業再生機構COO(最高執行責任者)として八面六臂の活躍をした著者だが、彼が去り、跡を継いだ産業革新機構や政府の経済運営は、すべてを金融政策に押しつけて現実から目を背けてしまった。 そうして水面下に潜ってしまった日本経済の病理を鮮やかにあぶり出したのが、今回のコロナショックが

2019年8月に病のため47歳の若さで亡くなった瀧本哲史さん。彼はずっと若者世代である「君たち」にメッセージを送り続けてきた。『2020年6月30日にまたここで会おう』は、瀧本さんが2012年に東京大学伊藤謝恩ホールで行った講義を1冊にまとめたものだ。生徒の参加資格を29歳以下に限定し、全国から約300人の10代・20代が集結したという。2時間にわたる講義の

2020年3月、原油価格は暴落した。年初、原油の代表指標であるBrentは60~70$/bblで推移していたが、3月6日以降に急降下。一時、20$/bblを割り、その価値は60%以上下がった。別の代表指標であるWTI原油は、特殊要因あったとはいえ、史上初のマイナス価格まで値下がったことも大きなニュースとなった。エネルギーアナリスト岩瀬昇の言葉を借りれば『海図

「これまでのやり方が通用しなくなり始めている」 これは多くの伝統的な日本企業が抱いている実感だろう。市場環境の急激な変化、AI(人口知能)を始めとするデジタル技術や新興企業の参入によるディスラプション(創造的破壊)、従業員の価値観の多様化や働き方改革など、企業は従来のやり方では対処できない数多くの現実に直面している。 本書は、2016年に出版された『両利きの

生きている動物ではなく、生物の細胞を使って食肉を生産する研究が進んでいます。この食肉生産方法は「培養肉」と呼ばれる新技術で、10年後までには店舗で販売される見込みです。培養肉はまぎれもない動物の肉ですから、既存の植物由来のフェイクミートと混同しないようにしてください。昔ながらの肉と同じ味の培養肉の安全性が長期にわたる調査で確認され、手ごろな価格で販売されたと

2013年にマーク・ポストとピーター・フェアストラータというオランダ人研究者2人が、世界初の培養肉で作られたハンバーガーを発表した。培養肉でできたパテの値段は33万ドルという高額なものだった。 わざわざ動物の細胞を採取し試験管内で高価な肉を培養する必要があるのかと、いぶかる人もいるであろう。 そんな疑問に答えてくれるのが本書だ。本書は培養肉を「クリーンミート

最初にパソコンを買ったのは1997年のこと。Windows95の発売で一般家庭でもコンピュータを持つことが普通になった。インターネットもダイアルアップで繋ぎ、ジリジリという音を聞きながら画像が出てくるのを待った。 思えばわずか20年ほど前のことだ。今では当たり前に手の中にスマホがあり、気になることはググれば済む。むしろ携帯を忘れると心細くてたまらない。若い世

この本が送られてきた時、腰が抜けるほど驚いた。あの栗下直也が徳を説くというのだ。すでに レビュー を書いているアーヤ藍ならずとも、栗下を知っている人なら全員が驚愕反応を示すはずだ。もちろん、日本中で栗下を知っている人はそう多くないだろうが、知らない人も同じくらい驚いていただきたい。 なにしろ、栗下といえば酒である。それしかない。HONZで飲み会があると、その

先月初めて予約本ランキングを発表したところ、多くの反応をいただきました。そろそろ2019年も終わります、予約本ランキングから、2020年1月の注目本を見ていきたいと思います。 まずは予約ランキングから。 2019/12/20現在の予約リストから1月以降に発売になるタイトルを抽出しました。(日販調べ:タイトル等今後変更になる可能性があります) 三浦崇宏さんの『

最近、電車の中などで襟元にSDGs(Sustainable Development Goals)のバッジをつけている人をよく見るようになりました。2015年の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されて以降、年々注目度は上がっており、いまや企業にとっても避けて通ることが出来ない大事なテーマになっているとも言われています。(そんな中、

本書の「中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか」というサブタイトルは非常に刺激的で、早くも各所で物議を醸している。 著者のデービッド・アトキンソン氏は、英オックスフォード大学で日本学を専攻し、米ゴールドマン・サックスの経済アナリストとして、1997年からの金融危機とその後の銀行大再編を予測して名をはせた、「伝説のアナリスト」である。 今は、縁あって文化

イノベーションは、意味のあいまいなままに、いかにも新しい内容を伝えているかのように思わせる言葉として、多用されています。日本企業の「有価証券報告書」を調べると、1,100社以上がイノベーションという言葉を用いています。この10年で4倍以上(2006〜2007年では、262社)に増え、短期間で浸透しています。 時事用語辞典では、プラスティック・ワード(人工的で

2019年のビジネス本で一番の奇書といっても過言ではないだろう。タイトルの長さに目を奪われるが、内容も語り口こそ熱いながら読み手のモチベーションは上がるどころか下がりかねない。「俺がラーメン屋を始める前にこの本を読んでいたら、絶対にラーメン屋だけはやらなかったよ!」と胸を張られても。失敗談から学び、起業を後押しするビジネス本は少なくないが、失敗から学んで起業

著者のウォルター・アイザックソンは評伝の名手だ。これまでにもアインシュタイン、スティーブ・ジョブズ、レオナルド・ダ・ヴィンチといった歴史に名を残す天才たちの生涯を、独自の視点から描き出してきた。 しかし本書は、これまでの彼の作品とは一味違う。何といっても登場人物が220人を超えるというスケール感だ。チューリング、ENIACでのプログラミングを扱った6人の理系

50年前の1969年11月、日本は初の液化天然ガス(LNG)の輸入を成功させた。日本初の輸入LNGは米国アラスカから出荷され、太平洋を渡って日本へやってきた。購入したのは東京ガス・東京電力の連合で、三菱商事が交渉を取りまとめた歴史的快挙だ。 1969年時点では未知のエネルギー源であり、価格競争力もなかったLNGであるが、50年経った今では日本の一次エネルギー

ここ最近の10年間で新聞の部数は約1000万部減り、売上は5645億円減少したという。これは新聞社一社が、まるまるなくなるほどのスケール感を持つ数字だ。 これほどまでに、急速に市場がシュリンクすることのインパクトは大きい。多くの場合、このようなケースにおいていは、古参同士が潰しあいをしながら新規参入組も迎え撃つという挟み撃ちの状況が強いられるのだ。プレーヤー

「『イノベーションか、死か』『テクノロジーか、死か』そういう時代を今、我々は否応なしに生きている」 こうした書き出しで始まる本書は、シンガポールを拠点として、長年にわたり世界各国のテクノロジーやイノベーションに投資してきたベンチャーキャピタリストの著者が、今、テクノロジーの最前線で何が起きているのかを、一般のビジネスマン向けにわかりやすく解説したものである。

仕事の「ムダ」をなくすには、まずムダな仕事をしないことだ。本書のエッセンスを一言で表せばこうなる。いたってシンプル。そして「整理術」系の全てのビジネス書は、同じ内容を説く。 と言って、「ムダな仕事をしないこと」は、決して容易ではない。というのは、何が「ムダな仕事」かが分からないからだ。誰しもムダだと分からないから、ダラダラ仕事を続けてしまう。 これは人ごとで

著者の小林宙(そら)くんは、15歳でタネの会社を起業した。会社名は、「鶴頸(かくけい)種苗流通プロモーション」。どんな会社かというと、伝統野菜を主とするタネと苗の販売、そして農薬と化学肥料不使用の野菜(伝統野菜)の販売を生業としている。 本書は、宙くんが各地域の伝統野菜を守るために、「流通」を生業とした事業を立ち上げるまでの、ストーリーが綴られている。どうし

我々はSNSやソーシャルゲームに備わる巧妙で強い依存性のある仕掛けに心を絡め取られている――というのは、 評者が先月レビューしたアダム・オルター『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社) の主張である。記事への反応を見るに、こうしたテクノロジーの利用法にモヤモヤしている方は大勢いるんだなあ……と思わずにはいられなかった。 さて本書『デジタル・ミニマリスト

著者の出口治明さんは不思議な人である。何が不思議って、分厚い歴史書を何冊も出しているにも関わらず、真の正体はビジネスマンなのだ。今は、立命館アジア太平洋大学(APU)の学長をされている。どうして出口さんは何冊も歴史についての分厚い本を出版するのだろうか。趣味なのか、それとも哲学や宗教に疎い人が増えすぎた日本を危惧して、使命感を持って書かれているのだろうか。

スティーブ・ジョブズは自分の子供たちにiPadを使わせていなかった――彼はその影響力をもって世界中に自社のテクノロジーを広める一方で、プライベートでは極端なほどテクノロジーを避ける生活をしていた。デジタルデバイスの危険性を知っていたから。彼だけでなく、IT業界の大物の多くが似たようなルールを守っている。まるで自分の商売道具でハイにならぬよう立ち回る薬物売人み

経済も政治も社会もいろいろ停滞して、明るい展望が見えない時代に、おじさん、おばさんが若者に向かって、つい繰り出してしまうのが、「バブルの時はこうだった話」です。 日本中がカネあまりの熱に浮かれ、調子に乗った企業がNYのロックフェラー・センタービルを買ったり、客を入り口で選別するディスコが六本木にできたり、夜に出社して早朝にタクシーで帰る、というワークライフバ

経営者や政治家といった方のインタビューを読むと、しばしば“尊敬する人”“目標にする人”として稲盛和夫という名を挙げるのを目にします。様々な著作のある著者ですが、『生き方』はビジネスパーソンだけでなく、様々な人に手に取られ、大ベストセラーとなりました。今回発売された『心。』は『生き方』の続編。発売直後から話題になり、多くの人の手に取られています。今回はこの『心

パソコンから顔をあげて、遠くをみつめてみる。そこにある景色は、2年後にはもうない。新しい社屋に移転するからだ。その頃は、働き方や価値観も変わっているのだろうか。でも…。その時、私の脳裏をシモーヌ・ヴェイユの言葉がよぎった。 「未来は、現在と同じ材料でできている」。だとしたら私は、「移転」というイベントを頼りにするのではなく、今この瞬間の小さな変化こそ大切にす

京セラ、KDDIという二つの世界的大企業を設立し、経営破綻したJAL(日本航空)を奇跡の再生に導いた稲盛和夫氏。不朽の名著である『生き方』は2004年8月に発売されてから15年間売れ続け、現在では130万部を突破している大ベストセラーである。私が書店で働いていた間は常に平積みで展開されていた。おそらく私が辞めた後も同様の展開は続いていたはずなので、15年間常

「不確実な状況で、意思決定するのが経営者の仕事だ」と言われるが、実際にそれを実践することは非常に難しい。確実に答えがわかっていれば、意思決定は必要でない。また、ロジカルに考えて、生み出された確実性の高い施策は、おおよそ先駆者がおり、競争が激しく、莫大な利益を生む可能性は低い。 いっぽう、現場の社員は、現状を打破しようと、不確実性は高いが、おもしろそうなアイデ

どんなに有名な大企業であっても、始まりはちっぽけなスタートアップにすぎない。今や世界中の人に知られる存在となったNETFLIXであっても、それは同様だった。 本書は世界を熱狂させる数々のエンターテインメント作品を手がけてきた同社における、創業当時の物語である。まだストリーミング配信というものが主流ではなく、宅配DVDレンタル業を営んでいた時代が舞台だ。 彼ら

毎回、「これを買った人はこれを買っています」という原稿を書いていますが、定期的に「あのベストセラーを発売すぐに買った人は、今これを買っています」という見方をしています。今年のビジネス書ジャンルでの定点観測銘柄は『FACTFULNESS』。これを発売1ヶ月以内に購入した方の動向を見ていると、7月に入って急激に売上を伸ばしてきた銘柄があります。それが『ニュータイ