
『働くことの人類学【活字版】 仕事と自由をめぐる8つの対話』で「働き方改革」を笑い飛ばす
「交通や通信が発達してきたし、世界中で文明化が進んできてるし、文化人類学でやることがなくなるっちゅうことはないんですか」という不躾な質問を、この本の編者である文化人類学者の松村圭一郎さんにぶつけたことがある。答えはもちろんNO。旧来とはちがった視点からの新しいテーマがいくらでもあるということだった。土佐の居酒屋で飲みながらのことだったので、その鋭い(?)質疑
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「交通や通信が発達してきたし、世界中で文明化が進んできてるし、文化人類学でやることがなくなるっちゅうことはないんですか」という不躾な質問を、この本の編者である文化人類学者の松村圭一郎さんにぶつけたことがある。答えはもちろんNO。旧来とはちがった視点からの新しいテーマがいくらでもあるということだった。土佐の居酒屋で飲みながらのことだったので、その鋭い(?)質疑

我が家で「G」といえば例のアレである。妻がこの世でもっとも苦手とし、名前すら口にしたくないということで、我が家では「G」と呼ばれている。「G」が出ると私の出番だ。悲鳴をあげる妻をよそに素手でぱっと捕まえる。妻によれば、「この人と一緒になって良かった」と思う唯一の瞬間らしい。ちなみに「G」が現れるのは年に一度あるかないかくらいなのだが。 ところで、東京都庁にも

みなさんいかがお過ごしですか?私はこの連休ひたすら、小学生の夏休みみたいなご飯を作っています。簡単だけどおいしかったのは、九条葱と柚子ひき肉のそばです。 ひき肉を塩胡椒を振って炒め、柚子胡椒で味を付けます。九条葱も半量入れましょう。茹で上がった蕎麦に出汁、水菜、先ほどのひき肉、残りの九条葱、胡麻をかけてできあがりです。 それでは今週献本いただいた新刊本のご紹

オリンピックが開幕しました。しかしこの夏も自粛の夏、そして暑い夏となってしまいました。大きなスポーツイベントの最中は本が売れなくなるというのが業界ジンクスになっていますが、今年の夏はどうなるでしょう。 これから出る注目ノンフィクションを紹介していきます。まずは予約ランキングから。2021年7月20日時点の予約受注実績からこの先発売になるタイトルを抽出しノンフ

『偉い人ほどすぐ逃げる』という、身も蓋もないタイトルだ。その「はじめに」には、日本の現状が次のように書かれている。 「いつも同じことが起きている。偉い人が、疑われているか、釈明しているか、逆にあなたたちはどうなんですかと反撃しているか、隠していたものが遂にバレたか、それはもう終わったことですからと開き直っているか、だ。/国家を揺るがす問題であっても、また別の

小説家・古川日出男は福島のシイタケ生産農家に生まれた。三人兄弟の末っ子で、兄と姉がいる。18歳で故郷を離れ家業は兄が継いだ。そして2011年3月11日、東日本大震災が彼の故郷を襲う。 冒頭は2019年12月に行われた母親の納骨風景だ。その直前、施設で寝たきりだった母の胃瘻をやめることを兄弟で決めたときに、躊躇っていた震災後の取材を兄に初めて申し出る。 第一部

『誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論』(みすず書房)は、アディクション(嗜癖障害)治療を専門とされる松本俊彦医師による本だ。少なくとも私にとってはかなり衝撃的な内容だった。薬物依存に抱いていたイメージが大きく覆された。ほとんどの人も、読めばきっとそうなるだろう。 自伝的な語りを軸に、経験に基づいた考えが綴られていく。自ら進んだ道ではない、「左遷」かと

近所の魚屋へ行ったら、小ぶりなイナダが2尾350円で売っていたので、思わず買ってしまいました。そのまま刺身で食べてもおいしいのですが、タルタル風と香草パン粉焼きで食べたので、レシピをご紹介します。 ・イナダのタルタル風 3枚におろしたイナダをたたき、刻んだ玉ねぎ、トマト、バジルと和えて、塩、レモン、オリーブオイルで味を整えてできあがり。イナダはブリに比べてあ

戦争にはお金がかかる。多くの燃料や弾薬が必要になるし、軍需補給にも人員や物資が大量に投入される。だが、国の一大事とはいえ、それらを湯水のように使えるわけではない。 軍隊も国の機関の1つだ。ほかの役所と同じで、予算がなければ動けない。では、戦前・戦中の日本では、いかに予算内で軍需品を調達していたのか。本書は日本陸軍の会計経理機能に着目し、軍におけるお金の流れを

チャールズ・ラング・フリーア。知る人ぞ知る世界有数の日本美術コレクターだ。大富豪ロックフェラーとならぶ美術蒐集家で、世界有数の東アジア美術を収蔵する美術館が彼の名を冠して建てられている。 なかでも日本美術への思い入れが強く、数多くの日本美術をあつめている。コレクションは遺言にもとづき米国連邦政府に寄贈され、今ではワシントンDCのフリーア美術館としてアジア文化

若者の3年内離職率が過去10年で最高、というニュースがあった。記事によると、若い世代で成長性の高い分野をめざす動きが活発だという。私は非常に明るい変化だと感じたが、周囲には否定的に受け取る人がいた。いわく「とりあえず就職してその中で頑張る」という生き方が通用しなくなって、可哀想だというのである。 あなたはどう思うだろうか。経済の動きにあわせて動く数値なので、

近所の八百屋へ行ったら、マッシュルームが大袋で600円だったので思わず買ってしまいました。マスタードドレッシングで和えてサラダにしたり、オリーブオイルでひたひたにしてアヒージョにしたりなど、普段はなかなかできない贅沢な使い方をしています。 中でも個人的ヒットだったのが、マッシュルームのフリットです。薄力粉、卵、牛乳で衣を作り、好みのハーブを入れ、マッシュルー

新型コロナウィルス感染爆発の初期、台湾はIQ180の頭脳を持つデジタル担当相オードリー・タンによる的確な対策でパニックを免れた。昨年出版された評伝『Auオードリー・タン』(文藝春秋)では彼女の生い立ちから家族や仲間への思い、未来への展望などが詳述されている。 そのなかで、彼女の原点が、いじめにあった台湾の小学校を離れドイツで教育を受けたことだと知った。 オー

余計なお世話かもしれないが、本書を読み終えて、あることが心配になった。このままではSFというジャンルが消滅してしまうのではないか、ということだ。 かつてはSF映画の脚本めいたことを思い付いたとしても、それをフィクションとして記述するに留まったはずだ。しかし今や、あらゆることが現実に実装できる世の中になりつつある。どんな突飛なアイデアも、実装されてしまえば、ノ

2011年7月15日、東日本大震災の混乱がおさまらぬなか、ノンフィクションに特化したインターネット書評サイト「HONZ」が船出しました。代表の成毛眞自らが選抜したレビュアー10名が半年間準備して創立したHONZは、ひたすら面白いノンフィクションを紹介しつづけ10年が経ちました。この間レビュアーは増え、紹介した本は延べ3000冊に及びます。今回、10周年を記念

コロナ禍が契機となり、自宅からでも学ぶことができるオンライン動画学習やコーチングサービスが活況に沸いている。学びたいけれど、時間がない、高額で払えない、仲間がいない、という悩みが解消され、学び直す人が増えているようだ。 新しい知識や技術を手に入れ満足はしたし、アウトプットや小さな実践・副業もした。だけれど、仕事が忙しくなって、元の木阿弥になってしまった。もし

HONZは今年の7月で、10周年を迎えます。 この10年でどれだけのレビュー記事を書いてきたのか、そしてどれだけの人が本を手にとってくれたのか、もはや我々にもよく分かりません。 その膨大なノンフィクション書籍の中から、よりすぐりの100冊をレビューとともに紹介する『決定版 HONZが選んだノンフィクション』が発売されることになりました。 HONZ10年間の集

コロナ禍によって取材やフィールドワークが制限されるなか、自伝や歴史ものの大物新刊が続いています。6月はどんな本が発売されていたのでしょう。先月出た本の売上ランキングから売場を見ていきましょう。 日販オープンネットワークWINから6月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2021/6

今、あんまり海に行けなくないですか?家にすごく近くない限り。行ったとしても、行ったとか言えないですよね、なかなか、多分。だってこういうご時世ですしね。 海。 海いいですよね。 海。 私も、海の良さを知ったのはここ数年です。出身が神奈川県藤沢市なんで、ばりばり海っぽいじゃんて思われがちなんですが、違う。藤沢市は南北に長い。南は海と街があり、北は田んぼと畑と工場

鮎がおいしい季節ですね。資源保護のため11〜5月は禁漁となっているところが多く、旬は禁猟明けの6〜8月頃とされています。鮎漁は友釣が有名ですが、四万十川では火振り漁という伝統的な漁法もあるんです。名前の通り火を振り、川に張った網へ大量の鮎を追い込むができます。 以前もご紹介したことがありますが、自宅で簡単においしく鮎を食べられるのはコンフィでしょう。まず、鮎

ノンフィクション作家の溝口敦といえば、暴力団(ヤクザ)関連を中心に多くの著作を持つ、この分野では有名な書き手だ。『五代目山口組』の出版をめぐるトラブルから山口組関係者に背中を刺されるなど、危険な目にもあってきた。山口組を50年間ウォッチし続けてきた男なのだからさぞ任侠の世界に興味があったのだろうと思いきや、学生時代はヤクザにまったく関心がなかったという。 就

つくづく子どもは親の思い通りに育たないものだと思う。 息子が生まれた時、英才教育を施そうと思った。といっても、勉強やスポーツではない。あらゆるサブカルチャーに通暁した人間に育てようと思ったのだ。 本やマンガ、音楽、映画などに幼い頃から親しませ、各ジャンルの押さえておくべき名作や傑作などを順に与えていけば、ひとかどのサブカルエリートに育つのではないかと思ったの

暑くなると、エスニックな料理を食べたくなりませんか。パクチーやナンプラーを使った料理は、食欲がない時でも不思議と箸が進みます。今日は、その2つが入ったパクチーと玉ねぎのサラダをご紹介しましょう。 パクチーと玉ねぎのサラダは、玉ねぎ、炒めたベーコン、マッシュルーム、きゅうりをみじん切りにし、スーパー大麦とパクチーを入れます。味付けは、レモン、ナンプラー、ほんの

アバウトにしてアナーキー。ざっくりまとめるとこうなるのだろうか。なんだかやたらと凶暴でハードボイルドな室町時代。日本人は律儀で柔和などという言い方は絶対に通用しない。室町時代の後半は戦国時代だったから、というわけではない。武士たちだけでなく、農民や女性、僧侶までもがなんだか殺気立っているのだ。まずは『びわ湖無差別殺傷事件』から。 びわ湖がくびれていちばん細く

「民泊」という言葉にどんなイメージがあるだろうか。住宅街に見知らぬ外国人が押し寄せ住民との間でゴミや騒音のトラブルが発生、とネガティブな印象を持つ人もいるかもしれない。実は本書の著者もその一人だった。英語の「バケーションレンタル」に比べると、「民泊」にはどことなく貧乏くさい響きもあって大嫌いだったという。 そんな著者自身が民泊を始めることになったのだから人生

本書『裏切り者』は、映画にもなった「ハイネケンCEO誘拐事件」の実行犯として知られ、その後も犯罪を重ね「オランダ史上最悪の犯罪者」と恐れられるまでになった男ウィレム・ホーレーダーについて書かれた犯罪ノンフィクション/体験記である。 現在ウィレムは逮捕され、終身刑を食らっているのだが、彼の罪を告発し終身刑にまで追い込んだのは実の妹で、本書の著者であるアストリッ

古幡の 「これから出る本 2021年7月」 でも触れていましたが、HONZ 10周年を記念して 『決定版―HONZが選んだノンフィクション』 が出版されます!我々、本を紹介するWEBサイトを運営しているわけですが、やはり紙の本が出せるのは嬉しいですね。7/7(水)発売予定です。 さて、今週のレシピのご紹介します。暑くて食欲のない時でもモリモリ食べられる、山形

先月のこのコーナーで『SFプロトタイピング』を紹介しましたが、SFを経営に活かすという本の出版が増えてきました。各分野、各国の最新技術を知り未来を予測するためにもノンフィクションの持つ役割が大きくなってくるのかもしれません。 これから出る注目ノンフィクションを紹介していきます。まずは予約ランキングから。2021年6月18日時点の予約受注実績からこの先発売にな

いまから15年ほど前のこと、「週刊現代」編集部に戻って、まっさきに執筆を依頼したのが溝口敦さんだった。そのときの様子を、溝口さんは自伝的ノンフィクション『喰うか喰われるか 私の山口組体験』(5月13日刊、講談社)でこう書いている。 二〇〇六年三月、講談社の加藤晴之さんに会ったとき、彼から「細木数子について四回くらい連載できないか」といわれた。彼はこの年の二月

「運も実力のうち」という慣用句はよく聞くが、「実力も運のうち」というのはどうだろう。「実力」という言葉はフェアに聞こえるが、それが単に「生まれ」という「運」による幻想にすぎないとしたら。 そうした不都合な真実に切り込んだのが、米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授による本書である。原題は“The Tyranny of Merit”、直訳すれば「能力の専制」

昨年、私は東京を離れ、某南の島に拠点を移した。周囲に、自生の葉物や果物を見分けて収穫する人や、自分で魚や猪を獲る人、潮の満ち引きや風の流れを読める人がぐんと増えたなかで、痛感しているのが「ああ、私何もできない」ということだ。頭でっかちで、「生きる力」「生きた知恵」が悲しいほどない…。 そんな反省の日々を送っていたなかで出会った本書『学校の枠をはずした』は、子

「スーパーバグ superbug」という言葉をご存じだろうか。日本語だと「超多剤耐性菌」とか「スーパー耐性菌」という訳なのでなんとなくわかる。ほとんどの抗生物質に反応しない病原性細菌のことだ。CDCによると、米国では毎年280万人が感染し、うち3万5000人が命を落とすとされている。 カリフォルニア大学サンディエゴ校で教授を務める夫婦、社会生物学・心理学のト

自分の研究を「何の役に立つか」と質問されたら科学者は明確に答えられるだろうか。「おもしろいから研究しているのだ」と堂々と言える人は少ないだろう。日常生活で研究者を直接知る機会は少なく、研究は象牙の塔の中だけで行われていると思われている。 それではいけないと本書の編者・柴藤亮介は考えた。彼は学術系クラウドファンディングサイト 「academist」 を立ち上げ

写真映えはしないけれど、おいしいものってたくさんありますよね。先日作った、スペアリブのトマト煮がまさにそうでした。 スペアリブに塩を振って焼き付けて、玉ねぎを入れ、トマトケチャップ、砂糖(各大さじ2)、レモン、水1/4カップを加えて煮込むだけ。トマトソースが少し残っていたので、ついでに入れました。 食べたりなかったので、残ったスペアリブのソースにキャベツとベ

勉強法や学習術はベストセラーの定番である。世界が劇的に変化する中、仕事に未知の要素が激増することに危機感を抱くビジネスパーソンは少なくない。ここで余裕を持って取り組むには、新たな分野の効率的な学習は避けられない。本書の「LIMITLESS=リミットレス」とは、自分の能力と可能性に限界を設けず「ラクに」学習できる状態を言う。 そもそも制約や限界を感じるのは単な

「中世ヨーロッパ」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。「疫病と飢饉」、「魔女狩り」、「異端審問」……。代表的なものを挙げたが、いずれにせよ、西ローマ帝国が滅んだ5世紀末からの約1000年間に明るく進歩的な印象を抱く人は少ないだろう。 だが著者は、そうしたネガティブなイメージはここ200年ほどの間に私たちに植え付けられた誤解だと説く。本書には、中世に関する11

昨年、お昼ご飯にレトルトカレーばかり食べている時期があった。なかでも「エリックサウス」の南インド風チキンカレーの味が気に入って、二日に一度は食べていた。お店には行ったことがないのだが、レトルトで病みつきになった。外出自粛の折、ありがたい限りである。レトルトなんて、という評価はいまどき非常識なのかもしれない。 そのスタンスは本書にもある。「ざっかけない(=ざっ

型破りな人物のノンフィクションに時々お目にかかるが、本書は極めつきではないだろうか。 著者は「日本リスクコントロール」という危機管理会社の社長である。ところが「どんな会社?」とググってもホームページは存在しない。電話番号も公開されていない。それもそのはず。同社にアクセスする方法は、紹介者による仲介しかない。 しかも会費がとてつもなく高い。トラブルの最終処理ま

芸術家として国際的に活動する李禹煥(リ・ウファン)によるエッセイだ。 著者は1936年に韓国で生まれ、活動拠点を日本へ移し、1970年代からは「もの派」運動の支柱として芸術を解体構築してきた。世界中のビエンナーレに出展し、アンディ・ウォーホルやヨーゼフ・ボイスなどアート史に痕跡を残す作家達との交流を経て、ヴェルサイユ宮殿の彫刻プロジェクトも手がける現役のアー

5月の書店店頭はすこーし静かな感じでした。どんな本が売れていたのでしょうか。 先月出た本の売上ランキングから売場を見ていきましょう。 日販オープンネットワークWINから5月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2021/5/1~2021/5/31の売上) HONZでもおなじみの堀内