
『くらしのための料理学』「手を抜く」のではなく「力を抜く」
毎週『おかずのクッキング』を楽しみに見ている。献立の参考になるのはもちろんなのだが、それ以上に、土井善晴さんの「家庭料理への向き合い方」や料理しながら溢れる言葉の端々に刺激を受け、料理の楽しさを知ることができるからだ。同じ思いで見ているファンは多いだろう。 家庭料理は日常生活の料理。無理せず、自然が与えてくれた恵みを信じて。余計なことはしなくても良いんだよ。
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毎週『おかずのクッキング』を楽しみに見ている。献立の参考になるのはもちろんなのだが、それ以上に、土井善晴さんの「家庭料理への向き合い方」や料理しながら溢れる言葉の端々に刺激を受け、料理の楽しさを知ることができるからだ。同じ思いで見ているファンは多いだろう。 家庭料理は日常生活の料理。無理せず、自然が与えてくれた恵みを信じて。余計なことはしなくても良いんだよ。

力士というと、いかついイメージがある。でも、おすもうさんというと、なんだかほのぼのした感じがする。タイトルどおり、世界のおすもうさん、いろんな場所でおこなわれるさまざまな相撲についてのイラスト付きルポルタージュだ。 執筆は女性ライターがふたり。ひとりは、音楽や相撲についてのライターである和田静香さんで、相撲道場で稽古をつんだことがあり「マイまわし」まで持って

科学者は何を考え、どのように仕事をしているのか?それを一般向けに解説したのが本書である。 私は地球科学を専門にして40年ほど経つが、これまで研究と教育で色々な工夫をしてきた。特に地球を研究する際、フィールドワークから新しい知見を効率よく生み出すことは、研究者としての至上命題である。 世界の学問水準に照らして本質を追究し、その成果を学術雑誌に発表する。実は、そ

こんな本を待っていた! そんな一冊に挙げられそうな、あの超絶ベストセラー『嫌われる勇気』の古賀史健さんの新刊だ。3年間かかりっきりだったとも聞く内容は、タイトル通りの「取材」「執筆」「推敲」という対象に、真正面から取り組んでいて、圧倒される。 現物を手にすると、書籍でよくある四六版のサイズよりも大ぶりだ。カバーには、シンプルにタイトルや著者名がポンと載せてあ

久しぶりに江戸前寿司について、アップデートされた情報満載の本が出版された。 江戸前寿司に関しては、その昔は北大路魯山人の『握り寿司の名人』(1952年)、最近では川路明の『江戸前にぎりこだわり日記―鮨職人の系譜(御馴走読本)』(1993年)が極めつけだった。その後は、寿司ブームに乗って似たり寄ったりの本がたくさん出版されたが、どれも物足りなかった。有名な店を

著者は放送作家であり、『永遠の0』(累計400万部)や『海賊と呼ばれた男』(累計450万部)などを手がける小説家だ。タイトルに相対性理論とあるように、本書では新たな時間の概念について考察している。 その特徴は「時間」を全ての基準に置き、社会を「時間の売買」で成り立っていると捉える点だ。人は赤ちゃんとして生まれた瞬間から時間を与えられ、時間を失った瞬間に死に

今回は4月1日に発売される私自身の著書『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』を紹介させて頂きます。 いまだ収まらない新型コロナ禍の中で、今はほとんど軽井沢にこもってオンラインで仕事をこなしています。実は一昨年から新著の執筆を依頼されていたのですが、東京と軽井沢を往復しながら多くの仕事に従事していたため、とても執筆の時間

なんやかんやで25年間も大学教授をやってきました。定年までカウントダウンになって、あらためて、大学って何をするところなのかと考えることがよくあります。ひとことで言うと、学問をする場、でしょうか。あるいは、昨今の大学をとりまく状況を考えると、「そうあるべき場」と言ったほうが正しいかもしれません。 大学の二大ミッションは教育と研究です。ならば、学問=研究+教育か

寝る前に読む本、通勤時に読む本と状況に合わせて本を読み分けている人は少なくないだろう。私もそのひとりだが、意外に難しいのがトイレで読む本の選択だ。 トイレと聞いて馬鹿にしてはいけない。選書の難しさでは最高峰にある。トイレタイムには長短がある。拾い読みが可能で、間をあけても腐らないものでありながら、時には続けて読むに値する、そんな質の高さが求められる。真剣に選

「被害にあった人は、他の人が同じような目にあわないために活動をしている人が多い」ということをよく聞く。 大変な使命を背負わされて、勇気をもってそれを果たしている人がいる。本書の編著者、入江杏さんもそのひとりだ。世田谷事件の被害者遺族だ。 この本は、入江杏さんが主宰する「ミシュカの森」に登壇した、柳田邦夫、若松英輔、星野智幸、東畑開人、平野啓一郎、島薗進の錚々

この『アニメーションの女王たち』は、ディズニー・アニメーションの中で、アートに脚本にと活躍してきたにも関わらず、エンドクレジットにも表記されず、伝記などにも存在がほとんど残されていない、女性アーティストを焦点に当てた一冊である。 その立ち上げの時期、最初の女性の参画からはじまって、『アナと雪の女王』までを通して、ディズニーと女性アーティストの関係性は一直線に


読書の楽しみは、煎じ詰めれば、「これまで知らなかったことを知る」ことにある。その喜びは何物にも代えがたい。だから本好きにとって最高の本というのは、書かれていることが「知らないことだらけ」の本なのです。 本書はまさにそういう一冊だった。 店頭で思わずスルーしてしまいそうな地味なタイトル。でも手にとってみると、これまでまったく知らなかった奥深い世界が広がっていた

当たり前にあると思っていたものが、実は”当たり前”ではなく“有り難い”ものだったと、コロナ禍を経て、誰しも何か感じているものがあるのではないだろうか。 2020年4月初旬、コロナの影響で休業が相次ぐ全国のミニシアターを応援するためのクラウドファンディング「 ミニシアター・エイド基金 」が始まると、開始からわずか3日間で当初の目標額の1億円を突破。そこから約1

自信を持って断言する。恋愛コラム本なんて、私は買わない。たとえ176頁税別1300円の本が150円で売られていても、買わない。ただし、著者がメレ山メレ子さんならば話は別だ。 メレ山さんは、昆虫大学の学長である。「昆虫大学」が何か気になる方は、検索して調べてみてほしい。そして「虫? そんなのマニアの世界の話でしょ」と思ったみなさん。昆虫は地球の陸上生物では、圧

羊といえば、なにを思い浮かべるだろうか。私の場合は、チェスターコートやメリノウールのセーターなど、ふだん愛用している衣類だ。浅はかながら、それ以外に思いつくことがなかった。本書では、羊と人間との思いもよらぬ関係が語りつくされている。文化、貿易、軍事など多くの面で、羊は人類の歴史に影響を与えてきたのである。 例えば、撥水性のある羊毛はモンゴルの遊牧民の移動式住

ミャンマーはタイと同じ敬虔な仏教国というイメージが強い。2011年には軍事政権から民主政権に移行した。長い軟禁状態から解放されたアウンサンスーチーが16年に国家顧問となって政権の中枢に立ち、昨年の総選挙では与党が過半数を獲得したことは記憶に新しい。 13年にヤンゴンに新聞記者として駐在していた著者は、情報省の中堅幹部との会談で「テインセン大統領の誕生日を確認

100万部を突破したハンス・ロスリング『ファクトフルネス』、ビル・ゲイツがここ10年で読んだ最高の一冊と評したスティーブン・ピンカー『暴力の人類史』、暗い時代に明るい未来を想像させてくれるマット・リドレーの『繁栄』、いずれも世界は良い方向に進んでいることを明らかにし、読者に希望を与える書籍である。また、ビル・ゲイツは自身でも「世界は良い方向に向かっている」と

この『英語独習法』は、認知科学や発達心理学を専門とする今井むつみによる、認知科学の観点から考えた最強の英語学習について書かれた一冊である。 『「わかりやすく教えれば、教えた内容が学び手の脳に移植されて定着する」という考えは幻想であることは認知心理学の常識なのである。』 といったり、多読がそこまで良くはない理由を解説したり、一般的に良しとされる学習法から離れた

本書を読んで思ったのは、私も生命科学を理解できるんだな、という単純すぎる驚きです。私は科学に憧れがあったので、流行りのものや面白そうなものは一通り読んでいました。しかし、ワクワクするまではいかない。たとえば、伝記スタイルであれば、科学者の破天荒な人生に惹きつけられて楽しめることもあります。でも、「一から分かる科学〜」のような、科学の魅力をストレートに伝える本

4人の女性が、顔と名前をあかし、before・afterの写真とともに整形体験を語る。いつもHONZに掲載されるノンフィクションと、傾向はちがう。けれど、これも現実、という読後感を持つだろう。 タイトルどおり東京に来たことこそ、彼女たちの転機だった。「東京はデカい、強い、カッコいい!」。華やかで刺激の多い街で生きる。そのためには綺麗になるしかない。 整形なん

著者のタラ・ウェストーバーは1986年生まれの34歳。現在ハーバード大学公共政策大学院上級研究員で歴史家。エッセイストでもある。 彼女はアイダホ州クリフトンで父親の思想が強く反映された反政府主義を貫くサバイバリストのモルモン教徒の両親のもと、7人兄弟の末っ子として生まれた。 公立学校へは通わせてもらえず、家庭内で科学や医療を否定した偏った教育を受けて育った。

カール・フォン・オシエツキーの名前を知っている人が今、どれほどいるだろうか。彼は1935年にノーベル平和賞を受賞したドイツのジャーナリストで、当時のヒトラー政権が受賞に猛反発したことで知られる。ノーベル平和賞の選定理由は時に物議を醸す。激しい議論を呼ぶのは、この賞の注目度の高さの裏返しでもあるだろう。 1901年に創設されたノーベル平和賞は「世界で最も栄誉あ

元号が誰によって考案され、どのようにして決められるのかを知る人は多くない。「令和」の改元準備が約30年前の「平成」改元の頃からすでに始まっていたと聞けば驚くだろう。 本書の著者は、2011年から毎日新聞の政治部記者として7年半、元号取材に奔走した。最大の使命は、次の元号を他紙に先駆けてスクープすることだ。 とはいえ、元号取材は難しい。いつ元号が替わるかは想像

サクラギシノを知っていますか? もちろんラブドール(旧名ダッチワイフ)の桜樹志乃ではなくて、今その受賞作、ラブホテルを舞台に繰り広げられる『ホテルローヤル』が上映中である直木賞作家の桜木紫乃の方。前者はともかくとして、後者をご存じの人は結構おられるだろう。 NHKの『 あさイチ 』に出演された10月23日、ツイッターのトレンディーワードに「桜木紫乃」が大躍進

こんな経験はないだろうか。 ガヤガヤと混み合う居酒屋で「すいませーん」と店員に声をかける。 だが、まったく気づいてもらえない。 手をピンと伸ばして、もう一度叫んでみても結果は同じ。 「すいませーん!す、すいませーん……。す……すい……」 声をあげるたびに腕が下がっていき、最後は曖昧な語尾とともに萎んでしまう……。 世間には「声が通らない」ことに悩む人たちがい

この『アンダーランド』は、山岳の歴史語りや大自然を相手にした旅行記に定評のある、イギリス作家ロバート・マクファーレンによる、地底をめぐる紀行文学である。マクファーレンは本書の中で、イングランド南西部で青銅器時代の墳墓を探索し、ダークマターの検出など、科学的な実験のために用いられている地下科学施設におもむき、ある時は氷河の中にロープを用いて降りていき、最終的に

私が住む東京都町田市の小田急町田駅の東口の広場には「絹の道」という石碑がある。それをゼミ生に見せてからJR横浜線の下り線に乗り、八王子に向かう。その車中で、なぜ八王子と町田を結ぶこの街道が絹の道と呼ばれるか、学生たちに説明する。 このあたりの多摩丘陵の地形地質が桑畑に向いていて、それが地域の養蚕業を盛んにしたこと。そうして絹製品の産業基盤がこのあたりにあった

今年も1年を振り返る時期がやってきた。多くの人にとって、新型コロナウイルスにまつわる出来事が記憶に刻まれた年だったことは疑う余地もない。しかし、「コロナ」はそれだけじゃないとばかりに登場したのが、本書『コロナマニア』だ。 もちろん「コロナ」に関する本ではあるが、ウイルスについての本ではない。本書には、「コロナ」を名前に含む国内外のお店や企業がズラリと並ぶ。事

地下愛好家という人々がいるらしい。皆が寝静まった真夜中に都市の下水溝や地下鉄のトンネルに忍び込み、日常では味わうことのできない感覚を求める人々だ。 本書の著者、ウィル・ハントもそんな地下愛好家の1人だ。きっかけとなったのは、16歳のとき、近所の廃棄されたトンネルに潜り込んだ際に見た光景だ。トンネルの奥深く、何者かが作ったバケツの祭壇に天井から染み出た水が滴り

レーニン、トロツキー、ピカソ、マネ、ヘミングウェイ、サルトル、藤田嗣治、ボーヴォワール、後に天才と呼ばれる彼らが、まだ何者でもないころ、通いつめ議論した場所がある。パリのカフェ、モンパルナス界隈のドゥ・マゴやロトンド、モンマルトル界隈のラパン・アジルやラ・ヌーベル・アテヌなどである。 常連となった天才以前の彼らは、自分の仕事スペースを確保するために朝一番でカ

先日、東京都調布市で陥没事故があった。地下40メートル付近で行われていた道路の掘削工事との関連が取りざたされているが、原因はいまだ不明である。以来、私は大型トラックの振動で道が揺れると、その下に大きな空洞があることをイメージするようになってしまった。無論、疑心暗鬼になっているだけだ。でも、見えないものはわからない。 そんな時、本書に出会った。著者は、ニューヨ

いきなりだが、問題です。さて、あなたは「ウンコ」という言葉を聞いて、どんな言葉をイメージされるだろうか。「汚い」あるいは「臭い」だろうか?「嫌い」という人はいても「好き」という人はおられないかもしれない。しかし、この本を読めば、「好き」とまではいかなくとも、「偉い」、いや、「偉かった」くらいにまでイメージアップするはずだ。 まずは第一章「ウンコとはなにか?」

読書には、大きく分けると外在的読書と内在的読書の2種類が存在すると言われている。外在的読書とは読書の目的が本の外部にあって、本は手段の一つというケースを指す。一方、内在的読書は本を読むこと自体が目的化しているケースだ。これをたとえは悪いが、私は薬とヤクブツのような関係と解釈している。 一般的に「本好き」と言われる人は、内在的読書を実践しているケースが多いと思

日本ではあまり知られてないが、マサチューセッツ工科大学(MIT)ではSTEM教育だけでなく、人文学や芸術科目にも力が入れられている。なかでも音楽科目の人気は高く、この10年でその比重が増してきているという。本書は、その授業内容を関係者へのインタビューを交えた現地取材でまとめた、非常に興味深い一冊である。 著者は、豊富な取材経験をもつ音楽ジャーナリストである。

贈与論の本につい手が伸びてしまう。それは贈与が既存の経済の仕組みの辺縁にあり、もしかしたら新しい社会の仕組みを構想できる可能性を感じること、オルタナティブさに魅力を感じてしまうからだ。しかし、本書はその淡い期待に答える贈与を褒め称え、可能性を肥大化させる本ではない。むしろ、冷や水を浴びせ、冷静に贈与について考えるための構造を提示する。 贈与でよく語られるのは

特定の時代や場所に、すごい才能の持ち主がなぜか集まることがある。新しい芸術や思想を生み出した19世紀末のウィーン、あるいは1920年代のパリ。歴史をひもとけばいくらでも例を挙げることができる。 本書はクリエイターたちが特定の場所に集まるメカニズムと要因を解き明かそうとする試みだ。そこで扱われるのは、戦後日本のカルチャー史を彩る数々の伝説的サロンやコミュニティ

“日本以外でも納豆が食べられていたの?納豆にこんなにすごい背景があるなんて!”と衝撃を与えた 『謎のアジア納豆 そして帰ってきた〈日本納豆〉』 から4年。前作で解き明かしきれなかった異国の納豆の正体を、完全に明らかにした驚天動地のノンフィクションがいよいよ発売された。 発売直前のある日、新潮社の会議室を高野秀行さんは一日ジャックしていた。リモートを含め取材が

自分の携帯番号を公開し、悩める誰からの電話でも受け止める人物がいる。その「いのっちの電話」で2万人の声を耳にしながら、「坂口医院0円診察室」を開設! 「0円ハウス」の次はこう来たか。コロナ禍でどうも気落ちしがちなあなたへの応援歌になるやも。読んで損なし、0円で気持ちが楽になる一冊を紹介したい。 あの坂口恭平さんが、なんだか奇天烈な本を出したらしい。 そう、1

誰しも一度くらいは、スポーツで胸を熱くしたことがあるだろう。しかし、その理由を問われても、明確な答えにたどり着くことは難しいのではないか。例えばイチロー選手なら、技術とか、記録とか、勝負強さとか、語るべきことはたくさんあるに違いない。 だが、その核心をきれいに取り出すことなど、誰にもできはしない。多くのメディアは、最大公約数の受け取り手に向かって記事を作る。