
『思考の整理学』を買ったのは、どういう人たちなのか?
『思考の整理学』で一躍有名となった外山滋比古さんが逝去されました。文庫版は250万部を超える大ベストセラーになり、今でも毎年毎年版を重ね続けています。今回はこちらについて見ていきます。 『思考の整理学』の刊行は1983年。1986年に文庫化されていらい長い間読み継がれてきた本でした。そんな動きが変わったのが2007年のこと、岩手県のさわや書店に「もっと若いと
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『思考の整理学』で一躍有名となった外山滋比古さんが逝去されました。文庫版は250万部を超える大ベストセラーになり、今でも毎年毎年版を重ね続けています。今回はこちらについて見ていきます。 『思考の整理学』の刊行は1983年。1986年に文庫化されていらい長い間読み継がれてきた本でした。そんな動きが変わったのが2007年のこと、岩手県のさわや書店に「もっと若いと

渋谷の書店で著者を見かけたことがある。 出版社の人と一緒に新刊の宣伝にでも訪れていたのだろう。棚の前でお店の人になにやら熱心に説明しているのは担当編集者のようだった。 その時の著者の様子が強く印象に残っている。 通路を通るお客さんの邪魔にならないように、プレゼンに熱が入り、動きが大きくなっていた編集者の背中を、さりげなく押さえたりしていた。本のPRそっちのけ

弁当といえば、高校時代を思い出す。ある日、一心不乱に弁当をかっ込みながらふと顔をあげると、弁当箱のふたで手元を隠して食べる女の子が目にとまった。なぜあんな食べ方を? 気になって背後からそっとのぞくと、煮物の汁が茶色く染みたごはんが見えた。ミニトマトやブロッコリーのような彩りのない地味な弁当だった。 途端に動揺してしまった。自分の弁当も似たようなものだったから

政府の緊急事態宣言でSTAY HOMEを強いられた日々、楽しみは専ら食事だった。家で晩酌をする機会が多くなると美味しいお酒が欲しくなる。私は日本酒の魅力に嵌った。 著者も日本酒の魅力に取りつかれたひとり。17年前、アルバイト先の居酒屋で飲んだ一口が彼女の人生を一転させた。タイトル通り、いつも日本酒のことばかり、考えるようになってしまったのだ。 病膏肓に入り、

2015年7月、アメリカはテキサス州プレーリー・ビューでの出来事。車を運転していたサンドラ・ブランドという若い女性が、ひとりの警察官から停車を命じられた。彼女が車線変更をする際に方向指示器を出していなかったというのだ。──そう、たったそれだけのこと。でも、たったそれだけのことが、それから思いもよらない展開を引き起こす。ブランドはその場で逮捕され、3日後に独房

20世紀後半に発達したデジタル技術は読書の形態を大きく変え、電子ブックを身近なものにした。では、紙の本から電子ブックへの転換は、人間の情報収集と脳の働きにどのような変化を生むのだろうか?そうした疑問に明快に答える啓発書が出た。 確かに電子ブックと紙の本の両方に長所・欠点がある。電子ブックはどこでも読めるし、蔵書のスペースも不要だ。だから一気に広まったが、紙の


鴨長明の『方丈記』には、有名な「ゆく川の流れは」の後に、次のようなことが書かれている。美しい都で競い合うように並んでいた建物も昔からあるものはまれだ。火事で新しくなったもの、没落して小さな家になったものなど、同じものはない、と。 鴨長明が見た中世の都よりも極端なのが現代の東京かもしれない。世界的に見ても驚くべき速度でスクラップ&ビルドが繰り返され、わずか数年


子供から「赤ちゃんはどこから産まれるの?」と訊かれたら、どう答えるだろうか。一般的には「コウノトリが運んでくるんだよ」と答えることになっている。本書のテーマである芸術的創造も神聖化されることが多い。しかし本書は、黙ってお母さんのお腹を指さすアプローチだ。「芸術的創造がどこから産まれるのか」について、最新研究に基き核心に迫っているのである。 様々なレビュアーが

本屋さんに行っても絶対に手に取りそうもない本が送られてきた。それも、人生論やのに、タイトルが『あなたは酢ダコが好きか嫌いか』とは、どういうこっちゃねん。と、訝りながらパラパラッとめくり始めたが最後、あまりに面白くて、文字通り一気に読み切ってしまった。 佐藤愛子さんと小島慶子さんの往復書簡だ。佐藤愛子さんのご本は読んだことがある。しかし、小島慶子さんは名前も存

プロ棋士への道は、険しい。かつて米長邦雄・永世棋聖が「兄たちは頭が悪いから東大に行った。私はよかったから棋士になった」と話したように、プロ棋士を目指す奨励会は日本有数の「頭脳集団」ともいわれる。だが、ひたすら将棋に打ち込むエリートたちの中でも、中学生にしてプロ入りした「天才」は長い歴史の中でわずか5人にすぎない。加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明、そして

2019年8月に病のため47歳の若さで亡くなった瀧本哲史さん。彼はずっと若者世代である「君たち」にメッセージを送り続けてきた。『2020年6月30日にまたここで会おう』は、瀧本さんが2012年に東京大学伊藤謝恩ホールで行った講義を1冊にまとめたものだ。生徒の参加資格を29歳以下に限定し、全国から約300人の10代・20代が集結したという。2時間にわたる講義の

人類学者が各々のフィールドで獲得した情報を綴った本は不思議と驚きの源泉である。世界にはまだまだ知らないことがあることに喜びを感じることができ、人類が辿ってきた進化の道筋への想像力を豊かにする。暗黙の前提を明るみにし、常識だと信じていた基礎をぐらつかせる。 人類学者がいなければ、聞かれることもなく、知られることもなかったフィールドの人々の知恵を集めてきた。フィ

マル経=マルクス経済学が復活の兆しらしい。そんな話を、半年ほど前、内田樹先生から聞いた。なんでも、石川康宏氏との共著『若者よマルクスを読もう(略称:若マル)』シリーズがけっこう売れているというのだ。それだけだと、ふ~ん、という感じなのだが(ウチダ先生、ごめんなさい)、経済学がご専門の先生も同じことをおっしゃっていた。 マルクス主義に基づいた社会主義国家がこと

アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである──よく耳にする言葉である。しかし、組み合わせの新しさにも程があるだろう。本書は新約聖書の物語を、なぜか広島ヤクザ風に語り直して紹介し、それらを題材とした美術作品の読み解き方を教えてくれる一冊なのだ。 かの有名な「最後の晩餐」のシーン。イエスは周囲の面々にこう告げる。「言うとくがの。この中にわしのことを密告(チン

二週間前はまだ連休だったことが信じられない。どこにも出かけないGWはあまりにも一瞬すぎて、何をしていたのか早くも記憶がなくなっている。巣ごもり生活にもすっかり慣れ、むしろ快適に感じるくらいだ。これから自粛が解かれていったとしても、しばらくは遠出なしで平気だとけっこう本気で思っている。 本書を読んで、そんな気持ちが変わってきた。日頃の外出は減るとしても、やっぱ

陽ざしの強い京都、すだれ、浴衣、冷やしきゅうり……。今年の夏は京都旅行も難しいかな、と残念に思っていたが、本書を読むと京都の街並みが鮮やかに浮かび上がってきた。本書では、今から30年ほど前にタイムスリップ。祗園祭や茶会、料亭、花街などいたるところで活躍するのは「配膳さん」と呼ばれる職業人である。配膳さんはまるで「おもてなし」の職人のようだ。 著者は配膳さんを

小学生男子的な好奇心のままに、日常にある目の前の身近な食べ物を掘り下げる不思議な人がいる。「これなに?」と思ったら猪突猛進、栽培したり採集したりして、食す! 食べることに旺盛な人は楽しく生きている気がするぞ。よくわからないタイトルなのだけれど、その実践指南書の、ご紹介。 著者の玉置標本さんは1976年、埼玉県生まれ。山形で大学時代を過ごしたころに野山の楽しさ

ずっと家にいると、考えるのは本や映画、そして毎日のご飯のことだ。先日ふと私は「かもめ食堂」という映画を観たくなった。決して猛烈な欲求ではない。“ふと”思っただけだ。でも、ネットで探してテレビにキャストしたら、次の瞬間にはその思いが叶えられた。便利な世の中になったものである。 映画「かもめ食堂」は、群ようこ原作、小林聡美主演の2006年の作品だ。舞台は、フィン

挨拶をするときに、必ず自分で詠んだ和歌を1首入れ込む友人がいた。そういえば、必ず和歌が出てくる「いいね!光源氏くん」というドラマもある。本書は、女優、美村里江の第一歌集であるが、普通の歌集と異なるのは、書き下しエッセイ10篇がサンドイッチのように歌と歌との間に挟まれており、とても読みやすい仕掛けがなされていることだ。加えて、視線の休憩所としてのイラストも全て

2015年には全世界でのべ12億人が外国旅行をしたが、これは1950年の48倍に相当する数である。過去に3度の経済危機で海外旅行者は減ったことはあったが、今回のコロナ禍は、歴史に残る減少幅になるだろう。 多くの旅好きと同じように、このゴールデンウィークは旅行をする予定だった。柄でもなく、半年前もからどこに行こうか、思い巡らせていた。が、もちろん、すべて中止で

「意志の強さは成功するかどうかと無関係」と喝破するビジネス書が現れた。確かに仕事がうまくゆかないとき、「自分の意志が弱いから」と落ち込む人は少なくない。「意志力の不足」が一番の原因と考える経営者も多い。 しかし、気合いを入れても集中力が続かないことはよくある(恥ずかしながら私自身、しょっちゅうそうだ)。本書はそうした悩みを持つ人に一筋の光をもたらす優れた自己

運動でも始めようか、せめて食生活を変えようかと決意して何回目の春を迎えただろうか。実は、腹まわりがここ5年で10センチメートル増えた。かけ声だけは威勢がいいのだが、見た目が物語るように動きが重い。私のように、いま動かないでいつ動くんだ、と思いながらも動けない人に、本書は最適な一冊かもしれない。 50歳を過ぎたオジサンが、譜面の読み方も知らないところからピアノ

「忍者学」は立派な学問である。三重大学では、伊賀地域を中心とした忍者に関する教育研究を推進し、その成果を広く国内外に発信する国際的な忍者研究の拠点として、また伊賀の地域創生に資することを目的として2017年7月1日に 国際忍者研究センター を開設し、忍者研究に取り組んでいる。 『忍者学研究』は副センター長で三重大学人文学部の山田雄司教授のもと、文系だけでなく

※ ネットでは hontoで取り扱っています。 真剣での立ち合いを見るような、ヒリヒリと緊張感漂う対談である。 一人は武術家甲野善紀。日本古来の武術を伝書と技の両面から独自に研究している。もう一人は土田昇。東京の三軒茶屋にある土田刃物店三代目店主で、明治から昭和にかけて活躍した不世出の道具鍛冶、千代鶴是秀作品の研究家。父、一郎が遺した多くの手道具を所持し研究

おおよそ世の中の中高年男性というのは、衣服を買いに行くのが苦手とちゃうんか。自分がそうだから、そう思うだけかもしれない。しかし、いつも買いに行くお店、たいがいが奥さん、あるいは、奥さんとおぼしき人と買いに来てるおっちゃんが多い。もちろん、わたしも妻についてきてもらう。 スーツやブレザー、パンツ、シャツ、思えば、ほとんどがその店である。特に似合うからとかいうよ

私が料理なるものをやり始めたのは高校生の時だった。ずっと専業主婦だった母が、離婚を見据えて働き始めた頃で、弟や妹の食事の支度は私の仕事になったのだ。といっても別に料理好きでも何でもなく、とにかく食べ盛りの弟妹の空腹を満たすものを作るのだ。 年中作っていたのが炊き込みご飯。残り物の野菜だのツナ缶だの適当に放り込んでしょうゆ入れて炊く。ほぼ毎日作っていた。炊き込

舞妓さん? 京都で歩いているのを見たことがあるかな。そう、多くの人にとっては、観光の景色のひとつか、映画の世界だろう。そこになんと、リアルな舞妓さんの世界を京都5ヶ所、東京7カ所、ほか全国各地を含め合計25カ所の花街で追究し、写真満載で紹介する豪華本が登場だ! 掲載された写真は、ざっと数えて630点は優にある(地図と図版を入れるともう少し増える)。しかも、大

探偵と聞くと、即座にユニークな名探偵たちの姿が思い浮かぶ。明晰な頭脳と驚異の観察眼を持ち、ヘビースモーカーで薬物中毒でもある世界一有名なあの顧問探偵。同じく英国発で灰色の脳細胞が自慢の小男。日本発ならボサボサの蓬髪に形の崩れた帽子を被りよれよれの着物を着た清潔感のない中年男、等々。 だが、悲しいことに彼らは架空の人物だ。実際のところ、街角で探偵社のポスターや

「昔よ、もう一度」とノスタルジーに浸っていては、革新は生まれない。過去よりも未来を知りたいという意見も、もっともだ。だが、1930年代生まれ、卒寿に近い方々に「思い出に浸るな」というのは酷だろう。むしろ、人生100年時代が現実になりつつある今、回顧に回顧を重ねる本書は「超高齢者による高齢者向けの書籍」という新たなジャンルを拓(ひら)く一冊になるかもしれない。

大学入試改革についての議論がにぎやかだ。現行の制度に多くの問題があることは間違いない。それ以前に、そもそも大学入試が目的化している教育の現状こそが問題ではないのか。 『だれもが<科学者>になれる』という書名を見た時には驚いた。科学者という生業はそんなに甘くないぞ。しかし、内容は、職業としての科学者ではなく、米国の小学校でおこなわれている「探究理科」教育につい

オギャーと産まれ、人は学校や家庭や世の中などから色々なことを学んでいきます。若いってことは美しいもので「君たちはどう生きるか」なんてことを懸命に考えながら、成長していきます。それはまるで、地球に就職しているような時期です。 やがて企業に就職すると、視野は一気に狭くなり、経済的な価値が頭の中心を占めるようになります。そんな時期を長らく過ごして定年退職すると、ほ

1968年のまだ冬か春浅き頃のことだ。父が会社からシールのシートを一束持って帰ってきた。私は幼稚園の年少組から年中組に上がる頃。満4歳である。 シールは「ウルトラセブン」の番組宣伝用だった。父の勤める広告代理店は、TBS系列の日曜夜7時から30分間、大手製薬会社が単独でスポンサーをしていた番組枠を担当することを、大きな食い扶持ちにしていた。その枠で前年秋から

何もない土曜日。我が家で最初に「行ってきます」を言ったのは、84歳の母だった。朝8時、迎えに来たデイサービスの車に車椅子のまま乗り込んでいった。そしてさっき、「お年玉でオモチャを買いたい」という息子と「友達の誕生日プレゼントを買いたい」という娘を連れて、妻が出ていった。そして、私は一人リビングに残された。 早速、昨日泣きながら読んだ本書『エンド・オブ・ライフ

平成の終わりに、「子を持つ男子たる者、イクメンにあらずんば人にあらず」のような空気が一時流れたが、男性の育児休業の取得率は依然低調だ。厚生労働省の調べでは6%にとどまり、取得期間も5日未満が約6割を占める。「それでは有給休暇と変わらないのでは」という突っ込みはもっともだ。 とはいえ、世の父親は子を思っていないわけではない。時代が変わり始めたとはいえ、同調圧力

ペンシルベニア大学教授のアダム・グラントは、人間を「ギバー(人に惜しみなく与える人)」「テイカー(自分の利益を優先させる人)」「マッチャー(状況によってギバーにもテイカーにもなる人)」と3種に分類した。そしてギバーこそが、成功者になれることを実験と調査で明らかにした。 本書は実際に徳を積むことで、どれだけ自分が得をするかを、渋沢栄一や土光敏夫など偉人から検証

私たちは、いま「読む脳」の歴史的な大転換期に生きている。それは文字の発明や、グーテンベルクの印刷革命にも比肩しうる出来事だ。こうした変容を目の当たりにするには、電車に乗るだけで十分だろう。多くの人が(きっとあなたも)、読んでいる(見ている)のは、スマホやタブレットなどのデジタル機器に違いない。実際、さまざまな統計でも、パソコンを含めたデジタル機器への接触時間

大阪にいると、ほとんどちくわぶなるものを目にすることもなければ、耳にすることもない。もちろん、口にすることもない。基本的にチャレンジャーなので、一度は食べてみるべきだ。と思ったわたしがアホでした。 名前から、竹輪と麩の中間的なものかと塑像していた。普通、そう思いますわな。竹輪は全国的におでん種として使われているし、麩は地域限定的かもしれないが、金沢おでんの車

書店員の仕事にはマニュアルがなく、口伝や仕事を盗んで覚えるしかないと言われてきた。そんな中『本を売る技術』という本が売っていたので買ってみたところ、本書には自分が書店員になったときに口伝で教わったことや、誰からも教わることなく、働いていた間にトライ&エラーを繰り返して、最適解だと思ってやっていた技術が書かれていた。本書を読み終えたとき、書店員になったときに、