
『フォッサマグナ』足下に広がるミステリー
部活動で調子が良いときは、勉強の調子も良かった記憶がある。無理やり敷延すると、読んでいる本が面白ければ、現実世界もバラ色ということになる。その時の本は、現実を忘れられるものがよい。没入感の高い小説も良いが、天文や考古学など気宇壮大な本も良い。今回は、そんな読書のご利益を得られる、素敵な一冊をご紹介したい。 そのタイトルは『フォッサマグナ』。日本のど真ん中を南
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部活動で調子が良いときは、勉強の調子も良かった記憶がある。無理やり敷延すると、読んでいる本が面白ければ、現実世界もバラ色ということになる。その時の本は、現実を忘れられるものがよい。没入感の高い小説も良いが、天文や考古学など気宇壮大な本も良い。今回は、そんな読書のご利益を得られる、素敵な一冊をご紹介したい。 そのタイトルは『フォッサマグナ』。日本のど真ん中を南

知る人ぞ知るノンフィクション作家・宮田珠己は『 日本列島津々うりゃうりゃ 』(幻冬舎)を旅する、もしかすると当代随一の紀行文作家である。ただし、その目的は『 いい感じの石ころを拾いに 』(河出書房新社)とか、『 晴れた日は巨大仏を見に 』(幻冬舎)とかなので、ちょっと変わっている。 あまりの緩さに心を入れ替えて、お遍路に出たと思ったら『 だいたい四国八十八カ

小笠原は東京から船で24時間以上かかる、東洋のガラパゴスといわれる特殊な自然の宝庫だ。 そこの固有種である「アカガシラカラスバト」は平成5年に国内希少野生動植物種に指定された貴重種だ。2001年ごろには推定個体数30羽。あまりにも少ないため島民も見たことのないこの鳥だったので、関心を向ける人は少なかった。 だがでこの島で産卵、子育てをする小笠原を代表する大型

前作である『サピエンス全史』で著者ユヴァル・ノア・ハラリは、認知革命により、自らが生み出した虚構と共同主観を信じる能力を手にした、私たちホモ・サピエンスが、いかにして農業革命、科学革命を成し遂げ、現代に至ったかを、様々な哲学、宗教、そして最新の科学研究を駆使して論じ、さらに幸福という基準を軸にサピエンスの歴史を包括的に描き出した。 ハラリは『サピエンス全史』

本書はデイビッド・モントゴメリー著“Growing a Revolution”の全訳であり、『土の文明史』『土と内臓』(ともに築地書館)に続く三部作の完結編である。三作はいずれも、人間社会とそれを包括する文明と環境を、「土」という共通の切り口で解読したものだ。 一作目『土の文明史』では、世界の文明の盛衰と土壌の関係を。世界中のさまざまな時代と地域を検証した著

ゲノム革命は我々の想像を超える速度で進行している。ワトソンとクリックが生命のセントラルドグマを解き明かしてからわずか半世紀と少しの間に、 PCR や CRISPR−Cas9 などの革新的な技術が次々と開発され、SFの世界にしか存在しないと思われたような成果を次々と現実のものとしている。 遺伝子共有サイトのデータが迷宮入りしていた凶悪犯罪の犯人を追い詰めたとい

「ようこそおこしやす」。そんな言葉が聞こえて来そうだ。”味のある座敷“で、芸妓さんが迎えてくれている……っと、どうやら迎えてくれているのは、芸妓さんだけではなさいようだ。 えええっ? この画像を見たときの衝撃といったら。イクチオステガって、こんなに小っちゃかったのおおお?! 芸妓さんに並んで三つ指(?)ついてかしこまっているのは、イクチオステガ・ステンシオエ

動物園は明るすぎる。園内は賑やかで、陽気で社交的でなければ浮いてしまいそうだ。 その点、水族館は落ち着く。全体が薄暗く静かで、どんなに陰気で孤独でも変に思われない。 水生ほ乳類には興味のない宮田珠己が向かうのは無脊椎動物の水槽の前。たいがいそこは空いていて、思う存分眺めることができるのだ。本書はそんな安寧の場所を求めた国内水族館の探訪記である。 訪れたのは葛

一昨年からずーっと続いてきた生き物ブームに変化の兆しが見えてきました。Twitterコメントがバズり、予約殺到全国的な品薄が発生した『 リアルサイズ古生物図鑑 』を皮切りに、今度は『わけあって絶滅しました。』が大ブレイク中!この夏は「ざんねん」を通りこして絶滅しちゃった生き物たちの季節になりそうです。 今回は『わけあって絶滅しました。』について見ていきたいと

世界の自然保護は、大論争と新しい希望の時代に入った感がある。人の暮らしから隔絶された 「手つかず」の自然、人の撹乱を受けなかったはずの過去の自然、「外来種」を徹底的に排除した自然生態系、そんな自然にこそ価値ありとし、その回復を自明の指針としてきた伝統的な理解に、改定をせまる多様な論議・実践が登場している。 ここ10年ほど、その新時代を展望する出版が英語圏で目

・内臓を食べながら成長し、内部から首を切り落とす ・子どもを誘拐し、奴隷として育てる ・泳げない生物の行動を操り、川に飛び込ませる 身の毛もよだつ所業の数々――。 「おそろしい……」「許せない!」 そう思われても仕方ない書き方をしてしまいましたが、これらはすべて実在する「寄生生物」の生き方なのです。 寄生生物は、決して怖いだけではありません。他の生物からおこ

ハチやアリの毒針は、そのライフスタイルを映し出す鏡らしい。ひとくちにハチ・アリ類と言っても、じつに多彩で、みな独特の生き方をしている。しかし、その毒針の機能は、見事なくらいその生存戦略にぴったり合っているのだ。毒針の痛さとライフスタイルの、切っても切れない関係について語ったのが本書である。 本書の著者は、虫刺されの痛みのスケール(尺度)を作った功績で2015

私は、1年のうち少なくとも3ヶ月は、海外で恐竜化石調査を行っている。主な調査地は、モンゴル・アラスカ・カナダ・中国、そして日本である。2017年4月には、北海道むかわ町穂別から発見された日本で最初の大型恐竜の全身骨格について、発表をした。全長8メートルのハドロサウルス科という恐竜で、全身の8割以上が揃っている、世紀の大発見だ。私の研究は、それだけではない。恐

ここ数年、腸に関する話題が増えてきている。山中伸弥教授が司会を務めたNHKスペシャル「人体」では、腸は全身の免疫を司り、万病を撃退すると放送された。いささか誇張しすぎだと思うのだが、興味深い番組だった。 じっさい、コンビニの棚にはビフィズス菌や乳酸菌、食物繊維を含む食品がずらりと並んでいるし、サプリメントも次々と発売されている。花粉症などのアレルギーを抑制し

このように、近年、生物に着想を得たテクノロジーが増えてきている。「生物模倣」(ビオミミクリーやバイオロジカリー・インスパイアード)と呼ばれる、現在注目集める新たな分野だ。 イカの皮膚機能に似た軍事迷彩服の開発、ナマコの硬軟接続を真似したインプラント開発、トカゲ型ロボットなど、奇抜なテクノロジーが本書では数多く紹介されている。 私たち人類は自分たちがついつい動

さて、4回にわたってお送りした本連載( ①シャークジャーナリストは、死を覚悟した! ②サメのふしぎと、謎とロマンの古代ザメ ③サメは安全?サメはおいしい? ④インドネシアで危機一髪!?……ガチで「ほぼ命がけ」 )。いかがでしたか? 最後に番外編として、沼口さんのサメイベントに参加してきたレポートと、取材直後におこったシャーク・セレンディピティ体験、そして沼口

さて、 ①シャークジャーナリストは、死を覚悟した! ②サメのふしぎと、謎とロマンの古代ザメ 、 ③サメは安全?サメはおいしい? と続き、そろそろ終わりかなー、と雑談モードになったころ。本日最大の衝撃話が沼口さんの口から語られた……。 沼口 : ドバイでサメを食べたときに、じつは私、すごい痴漢にあってるんですよ。ドバイって治安が良くて、夜でも若い女の子が普通に

『ほぼ命がけサメ図鑑』の著者・沼口麻子さんとのお話も佳境。 ①シャークジャーナリストは、死を覚悟した! ②サメのふしぎと、謎とロマンの古代ザメ 、に続く、第3回。さらにディープなサメ話は続きます。 塩田 : チョウザメやコバンザメは、じつはサメではないんですが、よくサメと混同されますよね? 沼口 : ええ、でも和名に「サメ」とついているので、それはしかたない

さて、 その①では「シャークジャーナリスト」という仕事についてうかがいましたが 、今回はサメそのもののおもしろさを中心に、沼口さんへのインタビューを続けます。 塩田 : ご著書『ほぼ命がけサメ図鑑』を読んで、サメすごいって思ったところがいろいろあって。 そのひとつが「サメの第六感」と言われる、ロレンチーニ器官。人間にないからわからないんですが、どういうものな

やばい、遅刻だ! 必死で走る私。バッグの中には、『ほぼ命がけサメ図鑑』。 その日私は、世界でただひとりのサメ専門ジャーナリスト(シャークジャーナリスト)であり本書の著者でもある、沼口麻子さんと会う約束をしていた。が、池袋駅前で道に迷ってしまっていた。 サメ――海に行ってもお会いしたくない生物の代表格。「凶暴な海のハンター」というイメージをもつ人も多いことだろ

生物模倣、バイオミミクリーという用語がある。 これは端的にいってしまえばアリやハチが持っている、生物が進化の果てに築き上げた独自の機能を模倣し、技術として取り込もうという考え方のことである。本書では、そうしたバイオミミクリー(または、「生物に着想を得た」バイオインスパイアード)の事例──具体的には、イカにナマコ、ゴキブリにヤモリ、生態系そのものから着想を得て

歩くという行為に魅せられた冒険者は、世界の隅々まで足を運び、新たな発見を得る。それが未開の地であろうと、多くの人が足を運ぶ場所であろうと、日数をかけて歩くと、頭がスッキリして、自分の価値観が明白になる。本書の著者、小島聖は歩くことで何をみつけたのだろうか。 彼女が最初にトレッキングに魅せられたのは、初めて訪れたネパールでのこと。カトマンズ市内を観光し、ポカラ

探検家・角幡唯介が、「そのときまでに得られた思考や認識をすべて注ぎ込み、それまでの自分自身を旅というかたちで問う」た大探検記である。 準備に四年をかけ、四ヶ月以上の間、真冬の北極圏を一人で歩く探検。それは極夜の暗闇の中である。極夜、聞き慣れない言葉であるが、白夜の逆といえばわかりやすい。太陽が顔を出さない暗闇の中を行こうというのである。 地味といえば地味であ

この冬、最強寒波が世界各地を襲っている。日本の北海道・東北・北陸地方では記録的な豪雪となっているし、世界各地でも年初よりアメリカ北東部やロシアの東シベリアは猛烈な寒波におそわれている。ついには北アフリカのサハラ砂漠にて異例の積雪が観測されたという。いったい全体、何がおこっているのか。 どうやら北極の温暖化がその原因のようである。北極の海氷が溶けたことが中緯度

ベンチャー企業の経営を10年やってみて、分かったことの1つは、ダーウィンの進化論の根源的な正しさだった。強いものや賢いものが生き残るのではない、世界はどう変化するか誰にも分からないのだから、運と適応以外に生き残る術はない。全くもって、その通りだと思う。 2006年にライフネットプロジェクトをスタートさせた時、世の中にスマホはゼロだった。これほどまでにスマホが

先日のペットフード協会の発表によると、全国犬猫飼育実態調査で、調査開始以来、はじめてネコの推定飼育数が犬の数を上回ったという。人類の相棒は犬じゃなくてネコだった──というわけではないけれども、少なくともペットの王は今やネコに移り変わりつつあるといえるのではないだろうか。飼いやすいというのもあるが、ネットをみればネコの画像や動画はいつだって大流行で、あっという

「ことりはとってもうたがすき かあさんよぶのもうたでよぶ♪」 子どもの頃、大好きだった童謡。ただ……ふと思う。小鳥が歌うのって、「好き」だからなの? 早朝、森に降りそそぐ小鳥たちのコーラス。聴く側もさわやかで心地よいけれど、小さな体に似合わぬ大きな声で精いっぱい歌う姿を見ていると、やっぱり「歌が好き」なんじゃない?という気がしてくる。 でも「歌う」ことは、わ

(HONZ 東えりかとのクロスレビュー:東えりかの書評は こちら ) イルカとクジラの問題について日本人としてのアカウンタビリティ(説明責任)を問う一冊だ。 捕鯨問題に対して自分なりの意見を表明できるようにすることは、日本人のアカウンタビリティと著者はいう。捕鯨への反感は日本人が想像もつかないほど広く根深く世界に浸透しているからだ。 たしかに筆者も海外で経験

「ありそうもないこと、稀有なこと、不可思議なこと、奇跡的なこと」。生物地理学者のギャレス・ネルソンはかつてそんな言葉でそれを嘲笑したという。だが実際には、どうやらそれは生物の歴史において何度も生じていたようだ。それというのは、生物たちによる長距離に及ぶ「海越え」である。 本書が挑んでいる問題は、世界における生物の不連続分布である。世界地図と各地に生息する生物


大正4年に北海道の開拓集落で死者8人を出した、三毛別ヒグマ襲撃事故。昭和45年に大学生のワンゲル部員3人が亡くなった、日高山脈でのヒグマ事故。記憶に新しいところでは、昨年5月に秋田県鹿角市で起きた4件のツキノワグマによる死亡事故。人とクマとの軋轢、その歴史は長い。 だが、本書でも「クマが人を襲う理由も、99%以上はクマが自分自身の安全を確保するための防御的攻

本書は、『海馬』などのベストセラーでおなじみの脳研究者・池谷裕二さんが、愛娘の4歳までの成長を脳科学の観点から、観察・分析した本だ。育児ノウハウをまとめた実用書ではない。8歳と4歳の2児の父である私が読んで、手放しで面白かった。「うちの子はもう小学生だから、幼児教育の本を読んでも遅い」などと躊躇せず、ぜひ、多くの方に読んでほしい。 本書を紹介する前に触れたい

長野県南部、中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷。この地を拠点に、半世紀にわたって活動してきた写真家がいる。本書の著者、宮崎学である。1947年、長野県の中川村に生まれた彼は、精密機械会社に勤めた後、72年に写真家として独立し、「自然界の報道写真家」として現在も日本中の自然を観察している。 宮崎さんの写真の特徴は、何といっても「無人カメラ」を用いている点

人間を人間たらしめているのは何か。古来より繰り返されてきたその問いに、豊富な実験と観察を重ねながら、とりわけユニークな回答を与えようとしている研究者がいる。本書の著者、松沢哲郎がその人である。 著者の名前については多くの人が耳にしたことがあるだろう。1977年からチンパンジーのアイらと行っている研究(アイ・プロジェクト)でも知られる、日本と世界を代表する霊長

生きることは問題だらけだ。 仲間との競争あり、食べ物にありつけなければ明日はなく、絶えず捕食者に狙われ、もちろん愛のお相手も見つけなくちゃ...... いま地球上に棲息している生きものは、こうした問題を、進化の途上で解決してきた「つわもの」揃いだ。——(といっても、生きもの自らの意思によって解決したわけではなく、 たまたま変異によってうまくい

パンダ・トラ・ゾウ・ライオン・ゴリラ。 これらはふだん動物園で見ることができる動物だ。そのせいかあまり意識しないのだが、じつは国際自然保護連合(IUCN)が作成する絶滅の レッドリストカテゴリー にすべて該当してる。 カテゴリー「CR:近絶滅種」「EN:絶滅危惧種」「VU:危急種」に分類された動植物は、特に絶滅寸前種と考えられ、哺乳類1194種、鳥類1460

ヒトが生殖以外の方法で新たなヒトの命を生み出す、改変するというアイディアは、数千年にわたって人類の想像を掻き立て続けてきた。科学者による理想の人間の創造を目指した『 フランケンシュタイン 』や遺伝子操作による優生学的な階級社会を舞台とした映画『 ガタカ 』など、このテーマを扱った作品は数え切れない。これらのフィクションが描き出すディストピアとクローン羊ドリー

どうやったら、我々人間は動物の感覚にもっと近づくことができるのだろう。たとえばアナクマのように巣穴で眠り、森を徘徊して獲物を物色する。たとえばカワウソのように水辺に住んで魚やザリガニを食べて生き、ツバメのように空を飛び、糞を撒き散らす。そうやって動物たちと同じように生きたら、彼らがみている世界を追体験できるのではないだろうか? そんな、言っていることはわから

変形菌、それは粘菌のことだ。粘菌、それは南方熊楠が愛し、昭和天皇が新種をいくつも発見され、2度もイグ・ノーベル賞に貢献した生物だ。「梅雨時のじめっとした林、あるいは真夏の暑い公園で、粘り気があって色あざやかなアメーバ状のものが倒木や切り株に広がっている」、そのアメーバ状のものこそ、そいつだ。植物でも動物でもキノコでもない単細胞生物。なのに、色も形も、多様で興

生きものによって人に好かれるのとそうでないのがある。それは、その生きもの固有の性質による場合もあれば、社会的なファクターによるものもある。たとえばアイアイを考えてみればよくわかる。 アイアイはその原産地・マダガスカルでは悪魔の使いとされており、忌み嫌われている。どれほど嫌われているかというと、一旦目撃すると、そのアイアイを殺さないと不幸になる、と言われていた