ノンフィクションはこれを読め!

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一年ぶりのご無沙汰です!令和初、10月の今月読む本 その1 書影

今月読む本

一年ぶりのご無沙汰です!令和初、10月の今月読む本 その1

まずは台風15号および19号によって大きな被害にあわれた方々にお見舞い申し上げます。日に日に被害が拡大する様子をみて、今回の台風がいかに大きく規格外であったかを思い知らされます。とはいえ、台風や洪水、そして地震など、激甚被害を及ぼす天災は毎年のことになりました。図書館や書店の被害も非常に気になります。 HONZは9年目を迎えました。滅多に顔を合わすことがない

『プリンシピア 自然哲学の数学的原理』世界の大古典は、案外簡単に読めるもの 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『プリンシピア 自然哲学の数学的原理』世界の大古典は、案外簡単に読めるもの

科学者ニュートンはだれでも知っているが、彼の著作を読んだ人はめったにいない。その理由は、300年以上も前に書かれた分厚い本で、内容が数学だらけで、翻訳してもとても読めたものではない、と信じられているからだ。 しかし、それは間違っている。このたび理工書の老舗、講談社ブルーバックスから日本語版(全3巻)が刊行され、何と意外に読めるのである。そこで「科学の伝道師」

『お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』私にもあった女性差別の驚き 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』私にもあった女性差別の驚き

第161回の直木賞候補作は全員女性であった。賞創設84年の歴史で初のことだと話題になったが文学の世界で性差を論じることは陳腐なことだと私は感じていた。 『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』は一般向けフェミニズム評論だ。著者の北村紗衣の専門はシェイクスピアのフェミニスト批評。東京大学で学士、修士を、キングズ・カレッジ・ロンドンで博士号を取得している。 北村は年に

『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』それは「平成の八つ墓村事件」なのか? 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』それは「平成の八つ墓村事件」なのか?

うわさ話は甘美な娯楽だ。時にそれは人を追い詰め、取り返しのつかない事件を起こす。 2013年7月21日夜半、山口県周南市金峰地区の郷集落で連続殺人・放火事件が勃発した。この地区の住民はわずか12人、半数以上が高齢者の限界集落で5人の老人が撲殺されたのだ。犯人はすぐに捕まった。 保見光成63歳。その村に生まれ15歳で中学卒業後に東京へ出たが40歳を過ぎて戻って

『トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉』を買ったのは、どういう人たちなのか? 書影

事件・事故 / 併せて読まれたこの一冊

『トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉』を買ったのは、どういう人たちなのか?

HONZメンバーをはじめ、身近なノンフィクション読みから「絶対読んだ方がいい!」とオススメされる1冊が登場しました。ここからのノンフィクション本のアワードやベストセラーに入ってくるだろう1冊、それが『トラジャ』です。 もともと、『週刊東洋経済』に集中連載されていた「JR歪んだ労使関係」をもととした単行本となっており、JR労組に起こった労使問題を中心にその裏側

無名科学者の挑戦から読み解く『エネルギー400年史』 書影

サイエンス / 世界史

無名科学者の挑戦から読み解く『エネルギー400年史』

『原子爆弾の誕生』でピュリッツァー賞を受賞したリチャード・ローズの最新作だ。薪が主要エネルギー源だった16世紀後半から、気候変動対策を気に留めながらエネルギーのベストミックスを追及する現在まで、という400年超にわたる人類のエネルギー変遷史を描く。 有名無名の人物の物語を大きなテーマへと昇華させていく著者の手法は本書でも健在で、今回も科学者や技術者など個々人

今週のいただきもの:2019年10月6日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2019年10月6日週

台風に備え、普段はあまり買わない缶詰をたくさん買いました。つい桃の缶詰なんかも手にとってしまったのですが、缶詰の桃は、おもにアメリカのカリフォルニア州で生産されています。ちなみに、缶詰に加工されるモモは、日本の白桃とアメリカの黄桃をかけ合わせて作った、缶詰専用のものが多いです。 そろそろ今年の桃は終わりですが、とってもおいしい桃と檸檬のクリームパスタを紹介し

『つけびの村』山口連続殺人事件の真相、噂は続くよ、どこまでも 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『つけびの村』山口連続殺人事件の真相、噂は続くよ、どこまでも

山口連続殺人事件は、2013年に山口県周南市の小さな集落で起きた凄惨な事件である。住民わずか8世帯12人、半数以上が65歳以上という限界集落で、ある日突然5人の連続殺人と放火が起きた。 事件からほどなく犯人として名が挙がり、現場付近の林道で捕まった保見光成もまた、集落の住民の1人であった。 後にこの事件が大きな話題になっていった背景には、この村をめぐりさまざ

悲劇のランナーが遺したことば『円谷幸吉 命の手紙』 書影

人物 / 新刊超速レビュー

悲劇のランナーが遺したことば『円谷幸吉 命の手紙』

円谷幸吉 、ある年齢以上の人にとっては決して忘れることのない名前だ。東京オリンピックのマラソン、二位で国立競技場に戻ってくるが、イギリスの ヒートリー に抜かれ惜しくも三位に。1968年のメキシコオリンピックを目指すが、その年の1月、両刃のカミソリで頸動脈を切って自殺する。 父上様、母上様、三日とろろ美味しゆうございました。 干し柿、餅も美味しゆうございまし

『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』膨大な弱いつながりを見つめ直し人間らしく生きる哲学 書影

社会 / ビジネス

『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』膨大な弱いつながりを見つめ直し人間らしく生きる哲学

我々はSNSやソーシャルゲームに備わる巧妙で強い依存性のある仕掛けに心を絡め取られている――というのは、 評者が先月レビューしたアダム・オルター『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社) の主張である。記事への反応を見るに、こうしたテクノロジーの利用法にモヤモヤしている方は大勢いるんだなあ……と思わずにはいられなかった。 さて本書『デジタル・ミニマリスト

『精密への果てなき道:シリンダーからナノメートルEUVチップへ』「精密さ」の果てに到達した自然界の「不精密さ」の価値 書影

サイエンス / 教養・雑学

『精密への果てなき道:シリンダーからナノメートルEUVチップへ』「精密さ」の果てに到達した自然界の「不精密さ」の価値

知る人ぞ知るサイエンス系ノンフィクションの名手、サイモン・ウィンチェスターの新作ということで、すぐ手にとった。 2004年に邦訳が出た『クラカトアの大噴火』は450ページを超える大部だったが、貪るように読んだ記憶がある。19世紀末スマトラ島近くのクラカトア火山が大爆発を起こし吹き飛んだ事件だ。巨大な津波が3万人を超える人々を飲み込んだ。衝撃波は地球を4周する

今週のいただきもの:2019年9月29日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2019年9月29日週

最近、ピスタチオにハマっています。「ナッツの女王」と呼ばれるのは、栄養価が高く、味がよいことから。殻付きで売られていることが多く、扱いが少々めんどうですが、風味の劣化を防ぐためには仕方ありません。ちなみに、ピスタチオの殻は熟すと自然に割れるんです。 ピスタチオを使った一品を紹介しましょう。材料は、鶏のささみ、ズッキーニ、ピスタチオです。ささみは酒蒸しに、ズッ

『「戦場のピアニスト」を救ったドイツ国防軍将校 ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯』憎悪と暴力の渦の中で人間愛を失わなかった男 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『「戦場のピアニスト」を救ったドイツ国防軍将校 ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯』憎悪と暴力の渦の中で人間愛を失わなかった男

ロマン・ポランスキー監督作品『戦場のピアニスト』をご覧になったことがあるだろうか。実話を基にして作られた映画だ。私にとっては人生の中で最も感動した映画のひとつである。 舞台はドイツ占領下のポーランド。首都ワルシャワのラジオ局でピアニストをしているウワディスワフ・シュピルマンが主人公。ユダヤ人である彼はドイツ占領下のポーランドで恐ろしい迫害を経験する。彼は絶滅

『黄金州の殺人鬼 凶悪犯を追いつめた執念の捜査録』連続殺人鬼を追い続けた女性作家の記録 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『黄金州の殺人鬼 凶悪犯を追いつめた執念の捜査録』連続殺人鬼を追い続けた女性作家の記録

1976年6月から86年5月まで、カリフォルニア州の各地で50人以上をレイプし、少なくとも13人を殺害、100件以上の強盗を行ったシリアルキラーがいた。犯行現場があまりに広範であったため、その地区ごとに「EAR(イーストエリアの強姦魔)」「バイセリア・ランサッカー」「オリジナル・ナイトストーカー」などの別称で呼ばれ恐れられた。 2001年、現場に残された体液

十二人を殺害し五〇人を暴行、百件以上の強盗を行った最悪の殺人鬼──『黄金州の殺人鬼──凶悪犯を追いつめた執念の捜査録』 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

十二人を殺害し五〇人を暴行、百件以上の強盗を行った最悪の殺人鬼──『黄金州の殺人鬼──凶悪犯を追いつめた執念の捜査録』

この『黄金州の殺人鬼』は、いわゆる連続殺人鬼を追った事件物のノンフィクションなのだけれども、まず様々な他の連続殺人事件と比較して凄いのはこの殺人鬼が犯した罪の量だ。 1970年代から1980年代にかけて、少なくとも12人を殺害、50人を暴行(レイプ)とその件数だけみてみても異常だが、時には一週間に一人などのハイペースで襲って、犯人の見た目、目撃情報なども出揃

『経済学はどのように世界を歪めたのか』経済学はなぜリーマンショックを予見できなかったのか? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『経済学はどのように世界を歪めたのか』経済学はなぜリーマンショックを予見できなかったのか?

金融界の人が書く経済の本は余りにも人間や社会の視点が欠けていて、しかも限定された場での理論的整合性を失わないために、専門分野以外のことは自分の守備範囲ではないとして、それ以上の対話を拒むような自己完結したものが多く、それだと現実の世界に照らし合わせて読むことはとてもできないが、本書は秀逸だった。 「近代経済学の父」と呼ばれるアダム・スミスは、市場の調整機能を

『国境を越えたスクラム』なぜ彼らは日本代表として戦うのか 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『国境を越えたスクラム』なぜ彼らは日本代表として戦うのか

このところ泣いてばかりいる。 開幕戦のキックオフで泣き、釜石のスタンドに並んだ子どもたちの笑顔に泣き、アイルランド戦の勝利で泣いてしまった。まったくいい歳をした大人がどうしちゃったのかと自分でも思う。 でも、涙はラグビーによく似合う。 だいいち当の選手がよく泣く。彼らは勝っては仲間と抱き合って泣き、負けては相手と健闘を讃えあって泣く。いや、そもそも戦う前に国

『史上最恐の人喰い虎――436人を殺害したベンガルトラと伝説のハンター』悲しき猛獣は、なぜ生まれたか? 書影

生物・自然 / 事件・事故

『史上最恐の人喰い虎――436人を殺害したベンガルトラと伝説のハンター』悲しき猛獣は、なぜ生まれたか?

動物が人間を襲った事例でよく知られているのは、大正4(1915)年に北海道三毛別で起きたヒグマ襲撃事件だろう。これは8人が犠牲になった悲劇として語り継がれるが、それとほぼ同じ頃、ネパールとインドの国境地帯で人々を恐怖に陥れていた動物がいた。それが、チャンパーワットの人喰い虎――436人を殺害したとされる雌のベンガルトラである。 本書はそのベンガルトラの足跡を

今週のいただきもの:2019年9月22日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2019年9月22日週

戻り鰹の旬ですね。この時期の鰹は三陸沖で漁獲されます。脂がたっぷりとのっているため「脂鰹」「トロ鰹」とも呼ばれ、初鰹に比べててもっちりとした食感が特徴です。 安く大量に鰹が手に入ったら、たたきや漬けにしてもおいしいですが、ツナを手作りしてみましょう。材料は鰹、油、にんにく、塩、胡椒だけです。まず、サクのままの鰹に塩を振り、水分を抜きます。鍋にたっぷりの油(鰹

『真面目にマリファナの話をしよう』空前のブームの最前線で、いま何が起きているのか 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『真面目にマリファナの話をしよう』空前のブームの最前線で、いま何が起きているのか

「ネットが生まれた時代に居合わせていたら、今ごろIT長者になっていたかもよ」。ある日酒場でそんな会話を耳にした。酔客の戯言ではあるが、草創期が可能性に満ちあふれているのは確かだ。そこには誰にでも成功できるチャンスがある。 あいにくインターネット革命はとうの昔に終わっているが、もしあのときの客に、いま米国を震源とした革命の波が世界に広がりつつあると教えてあげた

幸福になるためのワンコイン投資(ただし税別) 『逃げろ 生きろ 生きのびろ! 』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

幸福になるためのワンコイン投資(ただし税別) 『逃げろ 生きろ 生きのびろ! 』

たかのてるこ、『生きる』シリーズ第二作である。たかのてること言われてもピンとくる人は少ないだろう。しかし、『ガンジス河でバタフライ』の原作者といえば、一定以上の年齢の人にはイメージがわくかもしれない。長澤まさみ主演のテレビドラマになったノンフィクション旅行記である。 大阪の超名門・北野高校から日大芸術学部へ進学。「人にどう見られるかばかりを気にしてしまう、『

『思いどおりになんて育たない: 反ペアレンティングの科学』あれこれ子育てに悩んだら、真っ先に読んだらいい 書影

サイエンス / 医学・心理学

『思いどおりになんて育たない: 反ペアレンティングの科学』あれこれ子育てに悩んだら、真っ先に読んだらいい

本書のタイトルから、まずわかることは、子どもが思い通りに育ってくれたらいいなという期待、思い通りに育てたいという欲望があるということだろう。それは、なぜだろうか? 急がば回れ、その背景にある社会動向の変化を見てみよう。昨今、親になった世代は充実した教育を受けてはいるものの、子どもの世話をした経験はほとんどないという状況だ。家族構成の変化、要するに核家族化が進

悪に科学で踏み込む──『悪について誰もが知るべき10の事実』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

悪に科学で踏み込む──『悪について誰もが知るべき10の事実』

本書は、人間が行う悪的な行動について、それがどのような原因によって引き起こされるのかを科学的に解き明かしていこうと試みる一冊である。悪を科学的に解き明かす──といっても、その前段階にある問い、悪とはいったい何なのか、というのがまず難しい問題だ。正義は人の数だけあるというけれど、それは悪にだって当てはまるからで、容易に誰かが悪であるとは言えないし、今多くの人が

『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』個人の実感ではなく、データの分析を重視すること 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』個人の実感ではなく、データの分析を重視すること

家族の形とはどうあるべきか。なかなか難しい。もちろん個人としてならば、自由に好きにすればいいのだ。その家族が納得しているのなら端がどうこういう問題ではない。私自身は、それが例えば娘であっても、口を出すつもりもない。成人して一人前になった娘が、この先どんな形の家庭を築こうと、あるいは築くまいと、一度きりの人生なのだからまあなんなりとやってみるべしと思う。 が、

出口さんの大著『哲学と宗教 全史』は一気読み 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

出口さんの大著『哲学と宗教 全史』は一気読み

待ってました!敬愛する出口治明さんがこの本を出されると聞いて、まずそう思った。『全世界史』などで十二分に楽しませてもらった知的興奮をもう一度味わうために、これほどのテーマはあるまい。 しかし、ご恵送いただいて、しばらくは机の上に飾っていた。もったいないから、ではない。こういった本は一気に読むべきだと考えたからである。出口さんのことだから、一本の道筋にそった論

『哲学と宗教全史』を買ったのは、どういう人たちなのか? 書影

世界史 / 併せて読まれたこの一冊

『哲学と宗教全史』を買ったのは、どういう人たちなのか?

『哲学と宗教全史』がじわじわと売れています。 本体価格2,400円、分厚い!という印象のある本ながら、多くの方に手にとられ感動を与え続けている秘密はどこにあるのでしょう。データからその裏側を見てみたいと思います。 まずは発売からの動きを見てみます。発売からの動きをグラフにしてみました。(日販オープンネットワークWIN調べ) 出口さんには熱心なファンがついてい

今週のいただきもの:2019年9月15日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2019年9月15日週

先週末はウラジオストクへ行ってきました。フライト時間は成田から2時間半ほどなので、韓国や台湾へ行く感覚で旅行できちゃいます。電子ビザの申請が必要ですが、入国予定日の20日~4日前までにネットで申請すればOKです。ロシア料理は、ボルシチやピロシキ、ペリメニなどが有名ですが、他にもおいしいものがたくさんあるのでぜひ現地で食べてみてください。あと、ジョージア(グル

『チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学』緩くつながり、ときに裏切り、香港で見たアングラ経済の姿 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学』緩くつながり、ときに裏切り、香港で見たアングラ経済の姿

香港の中心街に立地するチョンキンマンション。安宿が密集するこの建物は、沢木耕太郎の『深夜特急』に登場したこともあり、今でも日本からの旅行客を引きつけている。 2016年に香港の大学に客員教授として所属した著者は、ひとりのタンザニア人、カラマと知り合う。彼は「チョンキンマンションのボス」と名乗った。 「ボス」の日常は怪しさに満ちあふれていた。毎日、昼ぐらいに起

『哲学と宗教全史』読み終えたとき、旅がはじまる 書影

教養・雑学 / 世界史

『哲学と宗教全史』読み終えたとき、旅がはじまる

著者の出口治明さんは不思議な人である。何が不思議って、分厚い歴史書を何冊も出しているにも関わらず、真の正体はビジネスマンなのだ。今は、立命館アジア太平洋大学(APU)の学長をされている。どうして出口さんは何冊も歴史についての分厚い本を出版するのだろうか。趣味なのか、それとも哲学や宗教に疎い人が増えすぎた日本を危惧して、使命感を持って書かれているのだろうか。

『生物の中の悪魔』我々の中にもいるかも知れない「マクスウェルの悪魔」 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『生物の中の悪魔』我々の中にもいるかも知れない「マクスウェルの悪魔」

本書の原題は”The Demon in the Machine”である。邦題は『生物の中の悪魔』なので、だいぶ受け取る側の印象は違うと思うが、本書に出てくる「悪魔」というのは、宗教やオカルト的な意味での悪魔ではなく、「マクスウェルの悪魔」に由来する架空の存在である。 これは、1867年にスコットランドの物理学者マクスウェルが提唱した思考実験に出てくる悪魔(d

『交通誘導員ヨレヨレ日記』人生の縮図そのものの悲哀 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『交通誘導員ヨレヨレ日記』人生の縮図そのものの悲哀

車を運転する人なら誰でも、行く先に赤い光が見えると工事を覚悟して「あまり待たないといいな」と思うだろう。でもその誘導灯を持つ誘導員に注意を払うことはなく、ほとんど風景のようになっている。 しかし本書を読んで「交通誘導員」を気にするようになると、確かに男女問わず老人と言ってもいい人が、夏の真っ盛り、炎天下のアスファルトの上で真っ黒に日焼けして働いている姿がよく

地図帳は、愛玩物であり夜空である 『地図帳の深読み』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

地図帳は、愛玩物であり夜空である 『地図帳の深読み』

帝国書院の本だ。そう、あの地図帳の出版社である。ほとんどの教科書は捨ててしまったが、歴史の資料集や星座の早見盤などと一緒に「地図帳」は手元に残しておいた、という方も多いのではないだろうか。本書は、そんな方にピッタリの本である。 捨てずにとっておいたのは、表向きには「ニュースの時に確認用に使えるから」かもしれない。しかし、実はそれ以上に「黙って眺めているだけで

これが実話だなんて!『大英自然史博物館珍鳥標本盗難事件』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

これが実話だなんて!『大英自然史博物館珍鳥標本盗難事件』

ロンドンの王立学院に通う20歳の音大生が、あの大英自然史博物館から、死んだ鳥の羽を盗んだ――なぜ、前途有望な若者が300羽近い鳥の美しい羽根を? 世にも不可思議な盗難事件の顛末を追った犯罪ルポ。ページをめくる手が止まらない、思いがけない快作登場! 世界でも有数の音楽院にアメリカから入学したフルート奏者。裕福で、整った品のいい顔立ちの20歳の青年。その青年が、

今週のいただきもの:2019年9月8日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2019年9月8日週

パクチー(タイ語)は、コリアンダー(英語)やシャンツァイ(中国語)とも言いますが、どの呼び方も日本で定着していますね。カメムシとよく似た独特の香の為、別名「カメムシソウ」と呼ばれる事もあります。カメムシは日本では食材として扱われませんが、昆虫の中ではよく食べられているんです。 カメムシの食べ方は知りませんが、おいしいパクチーサラダを紹介しましょう。パクチーと

『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』日本型雇用慣行は、なぜこれほどまでに変わらないのか 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』日本型雇用慣行は、なぜこれほどまでに変わらないのか

いったんでき上がった社会の仕組みは、社会のコンセンサスがなければ決して変わらない。 そして、その前提となるのは透明性と公開性であり、これがない改革は必ずつまずく。 こうした仮説のもと、雇用、教育、社会保障、地域社会、政治、さらには日本人の「生き方」までを規定している「慣習の束」がどのようにでき上がってきたのかを、歴史的事実と豊富な参考文献に基づいて丹念に解き

『暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病』平等は破壊の後にやってくる 書影

教養・雑学 / 世界史

『暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病』平等は破壊の後にやってくる

ものすごい本だ。まずはページ数。索引と原注だけで141ページ。本文582ページ。重い。 次は帯。「核戦争なき平等化はありえるか?」という文章が美しい縦書きで書かれている。不意をつかれてギョッとする。横書きには第二次世界大戦、毛沢東の「大躍進」、欧州のペストという千万人単位が死亡した事件の結果として起こった平等化、生活向上、賃金上昇などの例を上げている。さらに

『韓国 内なる分断: 葛藤する政治、疲弊する国民』これを読まずに韓国政治を語ってはいけない 書影

社会 / 世界史

『韓国 内なる分断: 葛藤する政治、疲弊する国民』これを読まずに韓国政治を語ってはいけない

「韓国の現代政治史」をコンパクトにまとめた本だと理解した。立場は中立にして冷静。これを読まずに韓国政治について語ってはいけないと思う。 連続する大統領の悲劇や反日など、この本の中では小事に過ぎない。それほど韓国内の政治対立は歴史的にも地域的にも根が深く、制度的にも心理的にも激烈で、とてつもなく複雑かつ深刻なのだ。これほどまでとは思わなかった。 朝鮮戦争は朝鮮

『月下の犯罪』名門一族の秘められた罪をめぐる極私的ノンフィクション 書影

事件・事故 / 世界史

『月下の犯罪』名門一族の秘められた罪をめぐる極私的ノンフィクション

「180人のユダヤ人を虐殺したのは、私の大叔母だったのだろうか…」 そんな帯の文句に惹かれて本書を手に取った。 1945年3月24日の晩、オーストリア国境近くの村レヒニッツにあるバッチャーニ家の居城で、ナチとその軍属のためのパーティーが開かれていた。月が明るい晩だった。この時、駅には200人近いユダヤ人たちが立たされていた。彼らは対赤軍用の防護壁を築くために

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 未来は彼らの手の中にある! 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 未来は彼らの手の中にある!

本書はHONZでも複数の記事があがっている人気の本だ(※)。それでも私が「追いレビュー」をすることにしたのは、それだけ強く心を揺さぶられたからだ。英国での著者親子の日常に触れ、熱い思いが体中の毛穴から噴き出しつづけた。めくるめく読書体験だった。 ※HONZ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』記事一覧 ・ 首藤淳哉のレビュー ・ 東えりかの著者インタ

『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない 書影

社会 / ビジネス

『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない

スティーブ・ジョブズは自分の子供たちにiPadを使わせていなかった――彼はその影響力をもって世界中に自社のテクノロジーを広める一方で、プライベートでは極端なほどテクノロジーを避ける生活をしていた。デジタルデバイスの危険性を知っていたから。彼だけでなく、IT業界の大物の多くが似たようなルールを守っている。まるで自分の商売道具でハイにならぬよう立ち回る薬物売人み