ノンフィクションはこれを読め!

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今週のいただきもの:2016年10月30日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2016年10月30日週

先日、映画 『永い言い訳』 を観ました。原作・脚本・監督は 『ゆれる』 をカンヌ国際映画祭に出品、国内ではブルーリボン賞を受賞した 西川美和 です。『永い言い訳』を観て印象的だったのは青い色の使い方でした。 映画では キタノブルー も有名ですが、青色は色そのものに落ち着きがあり、力があるような気がします。モロッコの シャウエン という街は色の濃淡はあるものの

『超予測力 不確実な時代の先を読む10カ条』 一番大事なのはものの考え方 書影

サイエンス / 医学・心理学

『超予測力 不確実な時代の先を読む10カ条』 一番大事なのはものの考え方

今年のアメリカ大統領選挙で勝利するのは誰か? 豊洲新市場は来年3月までに開場する? 消費税は2019年10月に10%へ引き上げられるだろうか? わたしたちはそうした事柄について日々自分なりの予測を立てている。「大統領選挙では間違いなくヒラリー・クリントンが勝利するだろうが、豊洲市場の開場にはおそらくもう少し時間がかかるだろう」という具合に。そうした予測がえて

『非モテの品格 男にとって弱さとは何か』ルサンチマンを超えた先にあるもの 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『非モテの品格 男にとって弱さとは何か』ルサンチマンを超えた先にあるもの

タイトルを見て思わず手に取った。面白そうだと思ったのではない。憤慨したのだ。 はっきり言って私はモテない。メディアに出れば、ネットの掲示板には「ブス」という心無い言葉が流れる。だから、モテないことには一家言もっている。 だが、このタイトルには全く同調できなかった。 男はたとえ生まれ持った容姿に恵まれなくとも、筋肉をつけ、身なりに気を使い、学歴や財力、権力、そ

『日本の聖域 ザ・タブー 』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『日本の聖域 ザ・タブー 』

わが家でも、「選択」を定期購読しているが、シリーズ「日本のサンクチュアリ」を毎回読んでいるわけではない。そこでこの機会に、改めて聖域に足を踏み込んでみると、自らの経験と照らして、思い当たる節のある聖域がいくつか目についた。いずれもしばらく前に書かれた記事だが、最近になって、それらの聖域には新しい動きが出ている。それは、何年かたったくらいでは、賞味期限の切れな

『熊!に出会った 襲われた』その時クマとヒトはどうしたか? 超リアルな実録体験談 書影

生物・自然 / 事件・事故

『熊!に出会った 襲われた』その時クマとヒトはどうしたか? 超リアルな実録体験談

山歩きが好きだ。地面に這いつくばってキノコの写真を撮ったり、動物の糞を見つけて内容物を調べたりしながら森を徘徊するとき、「ああ、生きててよかった!」とつくづく思う。 ところが今年6月、衝撃を受ける出来事があった。秋田県鹿角市で起きたツキノワグマによる連続人身事故。射殺されたクマの胃袋から、ごく少量だが人の組織が発見されたのだ。 北海道に生息するヒグマは過去に

『廓のおんな 金沢 名妓一代記』 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『廓のおんな 金沢 名妓一代記』

著者の井上雪さんは、地元・金沢を精緻に描くことで知られた作家だった。本書は金沢の「廓」という装置の中で精一杯がんばって生きた、1892(明治25)年生まれの山口きぬさんの生涯を描いたノンフィクションだ。 廓の脇を流れる浅野川の緩やかな流れ、瓦屋根の低い家並み、夏は打ち水され、冬は粉雪を掃いた箒目が見える置屋や料理屋の玄関先、三味線の音色、艶やかな着物の芸者た

『未来政府』と『経済学者 日本の最貧困地域に挑む』で知る民主主義の理想と現実 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『未来政府』と『経済学者 日本の最貧困地域に挑む』で知る民主主義の理想と現実

なぜ人と政府との関わりは希薄になったのか 元サンフランシスコ市長であり現カリフォルニア州副知事である著者 ギャビン・ニューサム は、ずっと疑問に感じていた。SNSで頻繁にメッセージを発信し、ポケモンGoで何百キロも歩いてモンスターを追いかけるアクティブな人々が、なぜこれほどまでに政治に関心を示さないのか。2011年にロサンゼルスで行われた重要な教育・環境に関

『組長の娘 ヤクザの家に生まれて』リアルな昭和ヤクザの「証言者」 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『組長の娘 ヤクザの家に生まれて』リアルな昭和ヤクザの「証言者」

あの人は、ヤクザの組長の娘だ――そう言われた場合、読者の皆さんは、どのようなイメージを持たれるだろうか。 ヤクザといっても、地域性も組の規模もシノギもさまざまであり、子分が何千人でも、あるいは数人でも、「組長」は「組長」である。 だから、その「娘」の人生も、千差万別である。父親の属する組織とそこでのポジション、あるいは家族への態度などに左右されるからだ。 本

あなたの「ふつう」をあつらえる 『未来食堂ができるまで』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

あなたの「ふつう」をあつらえる 『未来食堂ができるまで』

この夏に軽井沢で長野県産ワインをプロモーションするためのレストランをオープンしたのだが、当初の予想通りと言うか、とにかく全く儲からない。 クラウドファンディングで沢山の方々から開業資金のご支援を頂いて 、それが大きな助けになっているのだが、それでも内装・設備など開業コストの負担が重過ぎて、とても投下資金が回収できる感じはない。 レストラン経営が儲からないとは

『ピカソになりきった男』見破れない雁の「新作」 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『ピカソになりきった男』見破れない雁の「新作」

「その朝、俺はピカソだった」という一行からはじまる、まるでアラン・ドロンが登場する陰影の濃いフランス映画を小説化したような本である。過去と現在をカットバックさせながら、史上稀有な犯罪を本人が語り下ろす。著者の名前はギィ・リブ。現在69歳の天才贋作作家だ。2005年に逮捕され、禁錮4年の判決を受けた。 フランス中部のロアンヌ。ギィは高級娼館を経営する両親の間に

今週のいただきもの:2016年10月23日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2016年10月23日週

秋の果物はたくさんありますが、特に林檎が美味しくなってくる時期ですね。林檎は世界に1万5千種、日本だけでも2千種もあるそうです。 何気なく耳にする「サンつがる」や「サンふじ」など林檎の名称の「サン」ですが、これは林檎に袋をかけずに太陽の光(sun)をたっぷりあてて育てたということ。見た目は袋をかけない分、少し悪くなりますが甘みは増すようですよ。美味しい林檎の

Viva la クラフトビール『究極にうまいクラフトビールをつくる』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

Viva la クラフトビール『究極にうまいクラフトビールをつくる』

スプリングバレーブルワリー東京が代官山にオープンする。2014年7月にそのニュースを耳にしたとき、たまたまその名には見覚えがあった。ちょうどその頃、ビールにハマりはじめたところで、ビールに関する本をいろいろと読みあさっていた。そのなかで『 ぷはっとうまい日本のビール面白ヒストリー 』という本を読んでいたときに、その名前を目にしたのだ。 スプリングバレーブルワ

『限りなく完璧に近い人々』北欧の人って本当に幸せなの? 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『限りなく完璧に近い人々』北欧の人って本当に幸せなの?

北欧諸国といえば、税金は高いが充実した福祉が存在し、経済は概ね堅調でしかも労働時間が短く、民主的で腐敗の少ない政府を持ち、そのうえ、シンプルでオシャレな家具が溢れる地上の楽園というようなイメージ゙があるのかもしれない。実際に英国にあるレスター大学の心理学部の「人生の幸福度指数」という調査では、デンマーク人が人類でもっとも幸福な国民に選ばれている。2011年に

『Dining Out in Boston(洋書)』レストラン、その知られざる役割について 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『Dining Out in Boston(洋書)』レストラン、その知られざる役割について

レストランというのは、単に外で美味しい物を食べる場所だとだけ理解している人がいるかも知れないが、この本を読むとそれはレストランの役割のほんの一部に過ぎないことに気付かされる。レストランというのは、地域の食文化を形作り、それを人々のアイデンティティにまで昇華させていく強い力を持っているのである。 自分が料理好きだということと、その昔、ボストンに住んでいたことか

『英語の帝国』普及の決め手は親の不安と期待 書影

教養・雑学 / 世界史

『英語の帝国』普及の決め手は親の不安と期待

英語教育の早期化が加速している。次期学習指導要領からは、小学校5年生から英語は正式科目となり、小学校3年生から英語に親しむ授業がはじまる。そして、歩調を合わせるように、親の英語熱が加速している。 小学校の英語必修化について、2006年には52%の親が反対だったが、2013年には賛成が59%というアンケート結果が出ている。また、大学入試でも「読む・書く・聞く・

酒、悪態、怠惰、ストレスを肯定する──『悪癖の科学 その隠れた効用をめぐる実験』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

酒、悪態、怠惰、ストレスを肯定する──『悪癖の科学 その隠れた効用をめぐる実験』

時間は充分にあったはずなのに、締め切り間際まで仕事がはじめられない。ついつい悪態をついてしまう。酒を飲んではいけない時に飲みすぎる──いわゆる「悪癖」はままならない人生に常につきまとう影のようなものだが、本書はそこに切り込んで「実は、悪いと言われていることにも効用があるんじゃないの?」と問いかけてみせる。そうだったら実に嬉しい話だ。 本書では1章が「セックス

『一汁一菜でよいという提案』 家庭の料理を初期化しよう! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『一汁一菜でよいという提案』 家庭の料理を初期化しよう!

食育では、一緒に食べることの大切さ、家族揃って食卓を囲むことの大切さが説かれます。けれど、商売をやっている家庭や、親が働いている家庭では、一緒に食卓を囲めないのは当然で、親が用意した汁を自分たちで温めて、子どもだけで食べる。そんな家庭はたくさんあると思います。それでも、大切なものはもうすでにもらっています。それが手作りの料理です、愛情そのものです。だから、別

今週のいただきもの:2016年10月16日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2016年10月16日週

体が火照り、頭の中はそのことでいっぱいで、季節の変わり目に流行るもの…そう風邪です。風邪を引きました。 風邪の語源は空気の流れの「風」と同じで、中国では空気の流れが体に影響を及ぼすと考えられ、そこから病気のこともいうようになったとされます。古くは「風」と書きましたが、近世になって身体に影響を及ぼす「悪い風」を意味する漢語の「風邪(ふうじゃ)」も用いられるよう

『超予測力 不確実な時代の先を読む10カ条』 書影

サイエンス / 「解説」から読む本

『超予測力 不確実な時代の先を読む10カ条』

「見通しが甘かった......」。仕事でもプライベートでも、そう言ってほぞをかんだ経験のない人はおそらくいないだろう。もっと先を読む力があれば、他の人より早く正確に将来を見通す力があれば、人生の想定外が減り、成功や幸せをたぐりよせることができるのではないか。みなさんが本書を手に取られたのは、そんな期待からかもしれない。その

『みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議』オマンが欲しければロマンをちょうだい 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議』オマンが欲しければロマンをちょうだい

世界全体会議とのタイトルだが、本書には新興国の経済減速もトランプ現象も日銀の金融政策の枠組み変更も出てこない。 三部構成で第一部が「男と女について」、第二部「日本人について」、第三部「人生について」。計30のテーマについて、奥が深そうな議論が展開されていそうな見出しが並ぶが、話すのが脚本家の宮藤官九郎とみうらじゅんの二人。期待を裏切らない。 例えば、「男と女

『子供の貧困が日本を滅ぼす』 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『子供の貧困が日本を滅ぼす』

子どもの貧困がよく話題に上るが、その実態を知っている人は意外に少ない。本書は、日本財団子どもの貧困対策チームがまとめたものであるが、この問題の「鳥瞰図」がとてもよく分かる好著だ。ぜひ、一人でも多くの皆さんに読んでほしい。 まず、6人に1人と言われている子どもの貧困の実態と、貧困が世代を超えて連鎖することが数字・ファクトで明瞭に示される。次いで子どもの貧困を放

『世界天才紀行 ソクラテスからスティーブ・ジョブズまで』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『世界天才紀行 ソクラテスからスティーブ・ジョブズまで』

天才たちはどこからやってくるのか。一説によると、たとえば3歳でヴァイオリンを弾きこなしていたというモーツァルトのように、天才は「生まれつく」。別の説によると、少なくとも一万時間の努力の結果として、天才は「つくられる」。たとえばトーマス・エジソンのように。だがじつは、天才は「(時代や土地に)育てられる」と、本書の著者エリック・ワイナーは考える

『ふわとろ』私たちはどこに「おいしさ」を感じているのか 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ふわとろ』私たちはどこに「おいしさ」を感じているのか

「シャキシャキ」 「ジューシー」 「もっちり」 「濃厚な」 「歯ごたえのある」 おいしい感覚を表す言葉の数々。「シズルワード」と呼ばれるこうした言葉たちを軸に、「おいしさ」とは何なのかを考えていく1冊だ。世の中に飛び交う食べ物の感想や宣伝の文句も、シズルワードに着目してみると、食べ物の何が「おいしい」とされているのかが見えてくる。 全体を通して底にあるのは、

『「火附盗賊改」の正体 幕府と盗賊の三百年戦争』江戸は意外と治安が悪い? 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『「火附盗賊改」の正体 幕府と盗賊の三百年戦争』江戸は意外と治安が悪い?

火附盗賊改といえば、池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』を思い浮かべる人も多いであろう。特にテレビドラマで中村吉右衛門が演じる長谷川平蔵が「火附盗賊改である!」と見得を切るシーンは有名だ。 ところが、小説やドラマなどで有名な火附盗賊改という組織がどのような組織であったのかと問われると、私をはじめ多くの人が明確には答えられないのではないか。そもそも江戸の治安を守って

今の日本を知るならこれ!『フランス文学は役に立つ!』 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

今の日本を知るならこれ!『フランス文学は役に立つ!』

別世界、別次元を楽しむための小説の一節に不意にドキッとさせられることがある。「これ今、私の目の前で起こっていることじゃん!?」「あの生意気小僧、この主人公にそっくりだな。」「あのおばさんも確かにこんな感じだった。」「これ今の日本の状況と同じだな。」 フランス文学の面白いところは100年以上前に他国で書かれたものなのに、現在の日本を正確に捉えていて、現実世界と

『遺伝子の社会』 書影

サイエンス / 「解説」から読む本

『遺伝子の社会』

本書は2人の生物学者、イタイ・ヤナイとマルティン・レルヒャーの共著です。ヤナイはニューヨーク大学医学部教授、レルヒャーはデュッセルドルフのハインリッヒ・ハイネ大学のバイオインフォマティクス教授です。20年ほど前、二人はそれぞれリチャード・ドーキンスの傑作『利己的な遺伝子』に触発されて、進化生物学の道を歩み始めます。「生物とは遺伝子と呼ばれる利己的な分子を保存

『都市と地方をかきまぜる 』 都市住民を閉じ込める、二つの「見えない檻」 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『都市と地方をかきまぜる 』 都市住民を閉じ込める、二つの「見えない檻」

「 食べる通信 」という情報誌をご存知だろうか? これは、農業や漁業など食の作り手の情報が書かれた冊子と、彼らが収穫した野菜や魚が定期的にセットで届く、生産者と消費者をつなぐ新しいタイプの「食べ物付き情報誌」である。それに加えて、ここには生産者と消費者が直接つながる様々な仕掛けも設けられている。 この情報誌を始めたのが、本書の著者で、岩手県花巻市のNPO法人

10月のこれから読む本 その3 書影

今月読む本

10月のこれから読む本 その3

ボブ・ディランがノーベル文学賞!いやはや、びっくりいたしました。 今月読む本 その3は欠席者から届いたラインナップをご紹介します。読みたい理由は本人からのコメントです。 ◆ まずは、忙しくてなかなか上京できない 鰐部祥平 日本と国境を接し、領土問題を抱えているロシア。だが私たちはあまりにもロシアの歴史や宗教観、世界観に無知ではないか?と常々考えていたので選ん

今週のいただきもの:2016年10月9日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2016年10月9日週

今月13日タイの国王が亡くなり、喪に服すため国民の多くが黒い服を着ているそうです。葬儀に参列する際、日本では黒の喪服を着ることが一般的ですが国によって事情が少し異なります。そもそも喪服というものがなく派手な服でなければOKだったり、中国や韓国、ベトナムでは白の喪服を着るようです。 実はかつて日本でも白い喪服が着用されていました。『日本書紀』には喪服は白との記

『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』 世界的第一人者による記念碑的大著 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』 世界的第一人者による記念碑的大著

戦場体験、交通事故、家庭内暴力、性的虐待、ネグレクト…。人はそうした恐ろしい経験によって、絶望的なまでに過去に囚われてしまうことがある。もともとの体験はもう何年も前のことだというのに、いまだに悪夢やフラッシュバックに襲われたり、爆発的な憤激や感情の麻痺に陥ったり。しかし、そのようにトラウマを負っている人は、正確に言ってどのような状態にあるのか。また、そうした

あなたも知りたくないですか? 『医者とはどういう職業か』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

あなたも知りたくないですか? 『医者とはどういう職業か』

医業を営んでいるわけではないけれど、医学部で教える身として、医者関係の本はけっこう手に取ることが多い。しかし、残念ながら、どう考えても内実を知らない人が書いていたり、特殊すぎる例があげられていたり、いまひとつ実感とそぐわない本も多い。そんな中、この本は納得の一冊である。 ただし、これには、少し注意すべき点があるかもしれない。筆者の里見清一先生が4~5歳年下で

『生と死のケルト美学』アイルランド人に学ぶ、アートシンキングという思考法 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『生と死のケルト美学』アイルランド人に学ぶ、アートシンキングという思考法

「ケルト」という言葉は、紀元前600年頃に古代ギリシア人が、西方ヨーロッパに住む異文化集団を「ケルトイ」 (よそ者)と呼んだことに由来する。只、ケルトという言葉は知っていても、その内容を聞かれて正確に答えられる人は少ないのではないだろうか? 現在、ケルトという言葉は、インド・ヨーロッパ語族の語派のひとつであるケルト語派(アイルランド語、ウェールズ語、ブルトン

出会った、食べた、襲われた!『逃げろツチノコ』伝説の奇書、待望の復刊 書影

生物・自然 / 教養・雑学

出会った、食べた、襲われた!『逃げろツチノコ』伝説の奇書、待望の復刊

昭和34年8月、京都市北部の山中。かねてから催していた便意が高まり、山道を急ぐ男の姿があった。彼こそは本書の著者・山本素石(1919-1988年)。稀代の渓流釣り師として知られ、数多くのエッセイや紀行文を遺した。その素石のもう一つの功績は、ツチノコ探索隊ノータリンクラブの会長として世間にツチノコの存在を知らしめたことである。そのきっかけとなる瞬間が、今まさに

『住友銀行秘史』戦後最大の経済事件、イトマン事件を告発したのは私です 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『住友銀行秘史』戦後最大の経済事件、イトマン事件を告発したのは私です

本書『住友銀行秘史』は、日本における「戦後最大の経済事件」と言われたイトマン事件を、銀行側からの証言で綴った貴重な資料である。当時、自分は住友銀行東京本店の隣に位置する銀行で残業しながらヒーヒー言っていたが、まさか隣でこんな壮絶な出来事が繰り広げられていたとは…。自分はつくづく子供だったと思う。 バブルを経験していない若い人には理解できないかも知れないが、1

『竜宮城は二つあった ウミガメの回遊行動と生活史の多型』 役に立たない面白い研究 書影

サイエンス / 生物・自然

『竜宮城は二つあった ウミガメの回遊行動と生活史の多型』 役に立たない面白い研究

「将来の野外生態学を担う若者に刺激を与えるような楽しい本を提供する」ことを目的とする『フィールドの生物学』シリーズの最新作である。本書のタイトルにある竜宮城とは、ウミガメの回遊先の餌場のことだ。ウミガメの餌場が二つあるということが、なぜ驚くべきことなのか、そこからウミガメの生態の何が分かるというのか。本書では、著者が大変な苦労の末にかき集めた豊富なデータとと

『トランプ』氏の圧勝か!? ただし評伝の面白さで比べるなら… 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『トランプ』氏の圧勝か!? ただし評伝の面白さで比べるなら…

本書が発売されるにあたり、本人はこう言ったそうだ。 買うな! 退屈な本だ! しかしこの発言こそが、より一層の好奇心をかき立て、最強の宣伝文句になってしまう。今、世界で最も耳目を集め、あらゆる面で逆説的な男、それがドナルド・トランプだ。 先日行われた、大統領選の2回目のテレビ討論をご覧になられた方も多いことだろう。人の質問にきちんと答えない、 変なところに立つ

『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』 書影

サイエンス / 「解説」から読む本

『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』

本書の著書、ヴァン・デア・コークはエピローグの冒頭で、次のように書く。 「私たちの社会は今、トラウマを強く意識する時代を迎えようとしている」 本書は、凡百のトラウマに関する啓発書とはちがう。本書は、自伝的な要素を有し、著者の精神科医としての、そしてトラウマに関する世界的な研究者としての歩みがそのまま記されている。オランダ系移民であるヴァン・デア・コークの父親

『いま世界の哲学者が考えていること』21世紀の哲学は、現実社会の問題に対してどう向き合って行くのか? 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『いま世界の哲学者が考えていること』21世紀の哲学は、現実社会の問題に対してどう向き合って行くのか?

哲学の本を一冊ずつ読んでも、それが大きな哲学・思想の枠組みの中でどの部分に当たるのかが分からなければ、文字を目で追っているだけになってしまうし、哲学についての解説書を読んでも大抵の場合、21世紀に入ってからの最新の動向は書いていないし、おまけに議論と実社会での出来事との関連性が希薄なので、意識が朦朧としてきてしまう。そのような読者に福音をもたらしたのが本書で

『なぜ、無実の医師が逮捕されたのか』 99.9%という有罪率の壁を乗り越えた刑事裁判 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『なぜ、無実の医師が逮捕されたのか』 99.9%という有罪率の壁を乗り越えた刑事裁判

10年ほど前に、業務上の過失により患者(妊産婦)を死亡させたとして逮捕された、産科医をめぐる刑事裁判「福島大野病院裁判」について、ご記憶の方も多いだろう。テレビカメラの前で医師が逮捕されるというショッキングな出来事から始まり、娘を亡くした父親視点のドキュメンタリー番組が作られるなど、報道は過熱した。裁判の結果、99%を超える刑事事件の有罪率の壁を乗り越え、医