
『ぼくは挑戦人』世界で活躍するジャグラー 在日コリアン3世のあゆみ
しかし入学以降、自分は周りとはどうやら違うらしいということに気づき始める。 例えば、授業で「好きな食べ物を書きましょう」と言われた時。クラスメイトたちはオムライスやハンバーグ、ウィンナーなどと書くなか、著者が挙げたのは、キムチやピビンバ、テンジャンチゲなどコリアン料理ばかり。韓流ブームの兆しすらまだなかった当時、クラスメイトたちからすれば、未知の料理ばかりだ
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しかし入学以降、自分は周りとはどうやら違うらしいということに気づき始める。 例えば、授業で「好きな食べ物を書きましょう」と言われた時。クラスメイトたちはオムライスやハンバーグ、ウィンナーなどと書くなか、著者が挙げたのは、キムチやピビンバ、テンジャンチゲなどコリアン料理ばかり。韓流ブームの兆しすらまだなかった当時、クラスメイトたちからすれば、未知の料理ばかりだ

ソ連が西側のエージェントを使って米国の政治動向をコントロールする。冷戦時代にそんな小説が書かれていたら、とんでもなく陳腐なストーリーと思われたことただろう。しかし、現在は違う。ロシアがケンブリッジ・アナリティカ(CA)という会社を使って、トランプの大統領選に大きな影響を与えたのである。 そんなもの陰謀論のたぐいではないかという人にこそこの本を読んでほしい。ぶ

妻の何気ない「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ」というひとことに、私は10年ものあいだ「本当に?」「どうして、なぜ?」と問い続けました。そして同時に湧き上がった疑問。 「なぜ、他の人は目の前にあることを不思議に思わないでいるのだろう」 この研究を通して出会った保護者や支援者の多くは、この現象について「どうしてだろう?」と疑問に思ってくれました。ところ

本書は、米ハーバード大学医学大学院教授で長寿と加齢研究の世界的権威であるデビッド・A・シンクレアらによる、われわれの生命観と人生観を覆す、まったく新しい生命科学書である。 本書の要旨は、「老化は自然の摂理ではなく病気で、治療によって治すべきだし、実際に治すことができる」というものだ。もちろん、2000年前に秦の始皇帝が不老不死の薬を求めたような怪しげな話では

病気、それも大きな病気を経験した人の多くは「食べることの喜び」をしみじみと感じる瞬間を経験したはずだ。手術をすれば何日も食事が許されないことがある。慢性の病なら様々な食事制限もある。カロリー制限、塩分制限、糖分制限、脂肪制限、たんぱく質制限云々。がんで抗がん剤治療を受けると、吐き気や食欲不振などに苦しんで「食べていい」と言われても食べられないということもある

本書は、マルクス・ガブリエル(ボン大学教授)と中島隆博(東京大学東洋文化研究所教授)という、ドイツと日本を代表する哲学の泰斗が、これまでとは全く異なる視点で哲学のあり方を論じた新しい啓蒙書である。 これは、世にありがちな哲学の解説書でもなければ、哲学者が自分のべき論を世に訴える思想書でもない。本書の何が秀逸なのかと言うと、哲学は何のために存在するのか、哲学が

この興奮が醒めないうちに書いておきたい。凄い本を読んだ。 マルクスを現代にアップデートさせた研究で世界的な注目を集める俊英・斎藤幸平の『人新世の「資本論」』である。 新書の世界には何年かに一度、画期的な本が現れる。 物事の見方に新しい方向から光を当てたり、これまでにないアイデアを提示したりして、読者の世界の見え方を一変させてしまうような本だ。ここでは細かく挙

政局が大きく動いています。菅新総理の過去の著作が復刊されるなど店頭にも動きが出てきました。またアメリカも大統領選を前に様々な本が出版されています。10月のノンフィクション売場はどんな様子になるのでしょう。 まずはノンフィクションの予約ランキングから。2020年9月18日時点の予約受注実績から9月以降に発売になるタイトルを抽出しノンフィクションの予約ランキング

ラジオ体操じゃあるまいし、不可能に第一とか第二とかあるのか。『「第二の不可能」を追え!』というタイトルを見たら誰しもがそう思うだろう。その違いは冒頭で説明される。第一の不可能とは、けっして1+1が3にならないように、絶対的な不可能のこと。未来永劫、可能になることがありえない不可能である。 それに対して、「第二の不可能」とは、必ずしも正しいとはいえない前提に基

「先が見えない時代には歴史を振り返れ」と、よく聞く。人間の本質は今も昔もそれほど変わらないからだろう。陳腐な言葉だが、歴史は繰り返す。 新型コロナウイルスを巡っては科学と政治・経済の対立が浮き彫りになった。感染拡大を徹底して抑えるべきか、経済を優先すべきか。コロナ対策と経済優先は二項対立なのか。議論は混迷した。 こうした中で、「今の政治が悪いんだ」と声高に叫

突如あらわれた新型コロナウィルス伝染病に対し、医師たちは最初、徒手空拳で挑まなければならなかった。徐々に解明される高齢者のリスクや三密回避、伝染経路や防御方法などを人々が守ることによって、第二波も収まりつつあるようだ。根本的な治療方法はわからなくても、顕著な死亡率の低下となって現れている。 医療関係者だけでなく、想像もできない事態のなかで、突然最前線に立たさ

第三次AIブームにのって有象無象のスタートアップベンチャーが立ち上げられた。一次は玉石混合の状態だった中、ここ数年で真に社会課題を解決しそうなベンチャーが生き残るようになってきている。その中でもユニコーン(企業価値10億ドル以上の非上場企業)まで評価されるようになったのがPreferredNetworksという会社だ。 同社は、2020年初時点では日本最高の

贈与論の本につい手が伸びてしまう。それは贈与が既存の経済の仕組みの辺縁にあり、もしかしたら新しい社会の仕組みを構想できる可能性を感じること、オルタナティブさに魅力を感じてしまうからだ。しかし、本書はその淡い期待に答える贈与を褒め称え、可能性を肥大化させる本ではない。むしろ、冷や水を浴びせ、冷静に贈与について考えるための構造を提示する。 贈与でよく語られるのは

「激辛」という言葉が新語・流行語大賞のひとつに選ばれたのは1986年のこと。現代でもこの言葉は生き残り根付いている。2003年、激辛スナック菓子「暴君ハバネロ」が登場した。これはトウガラシの品種名そのものを使っている。激辛は日本の食文化に大きく影響している。 著者は信州大学農学部准教授でトウガラシ研究の第一人者。もともとはソバの育種研究室に所属しており、ソバ

米国の大物映画プロデューサーによる女優や自社従業員への数々の性的虐待が明るみに出た、ハーヴェイ・ワインスタイン事件。その衝撃から#MeToo運動に火がつき、世界中へ拡大していったことは記憶に新しい。 まさにダムが決壊するような事態となったわけだが、起点はニューヨーク・タイムズの調査報道による約3300語の記事であった。 ひと口に調査報道というが、調査すること

題名にちょっとクラクラ来てしまったが、サブタイトルにあるように地球と生命に関する正統の科学書である。メインテーマは宇宙に大量にある炭素原子で、我々の身体を作る大切な要素でもある。「交響曲第6番」というのは炭素が6番元素で、地球を初めとして壮大な物質世界の豊かさを担っているからだ。 炭素は「地球温暖化問題」でも重要な物質である。人類は産業革命以降、石炭や石油を

激アツな一冊だった。我を忘れてシャドーボクシングをはじめるくらいに。本書は、36歳のB級ボクサー米澤重隆が日本チャンピオンに挑む日々を、同世代の映像作家がまとめた本だ。私の熱き血潮はどこから湧き上がったのか。冒頭シーンの紹介から始めたい。ドキュメンタリー番組をつくるため、著者は米澤のいるジムに乗り込んだ。 「僕なんかでいいんですかね?」 思わず返答に詰まる。

この著者の本を読むのは初めてではない。なので、怖さはある程度予測できた。それでも、幾度となく背筋が凍る思いがした。この本で語られている現実は、人生の選択において誰もが避けたいと考える結末である。社会からの孤立。家族と無縁で、友達はゼロ。そして、誰にも気づかれることなく、自室でもがき苦しみながら溶けていく孤独死。 本書は、 前著『超孤独死社会』 に引き続いて、

フェルメールを歩きながら観るような企画展がまかり通っている。 正確にいうと新型コロナウイルス以前は、話題の企画展が開催されれば連日混雑していた。2018年に開催されたフェルメール展は産経新聞の一面に《牛乳を注ぐ女》の絵とその会期が掲載された。日本の企画展は新聞により大々的に宣伝され、1日平均6千人もの入場者を動員する。実際に足を運んでみると1日3千人という数

スパイ小説といえば007シリーズの作者イアン・フレミングや、ジョン・ル・カレといった英国の作家の名が頭に浮かぶ。「やはり、スパイ小説は英国に限る」と通ぶってみたくなるが、実は、ノンフィクションの世界にも同じようにスパイ分野の第一人者といえる作家がいる。 その一人が、本書の著者ベン・マッキンタイアーだ。代表作には、第2次世界大戦中の対ナチス諜報を描く『ナチが愛

すでに5万部に届く勢いだというドキュメント・ノベル『邦人奪還 自衛隊特殊部隊が動くとき』は、 そのあまりのリアルさが話題になっているとか。 そこでも垣間見える特殊部隊員の日常は、破天荒で、 やることなすこと同じ世界の住人なのかと驚くことばかり。 成毛眞代表も興味津々だ。こういった小説がなぜ売れるのか、 必要とされるのか。HONZならではのベストセラー検証!(

8月に発売になった『同調圧力』(鴻上 尚史, 佐藤 直樹)が好調です。店頭に並び始めた8月20日前後から一気に売上を伸ばし、重版を繰り返しながらもまだまだ品切れ店が多い状態が続いています。サンプル数が少ない中ではありますが、首都圏と比較すると地方での出足が良いといった傾向が見えています。 『同調圧力』というキーワードはコロナ禍以降よく耳にするようになりました

北朝鮮でクーデター勃発! ミサイル発射を企む北の軍部に対し、米国がピンポイント爆撃へ。しかしその標的そばには、日本人拉致被害者がいるとの情報。自衛隊特殊部隊は、彼らを救出することはできるのか――? そんなシミュレーションをし、あまりのリアルさが話題になっているドキュメント・ノベル『邦人奪還 自衛隊特殊部隊が動くとき』の著者に聞く!(HONZ編集部) 成毛 現

睡眠――。人生における多くの時間が費やされているにもかかわらず、それにはいまだ多くの謎が残されている。本書は、奇怪とも言える睡眠障害の症例を足掛かりとしながら、それらの謎に迫らんとする快著である。 著者のガイ・レシュジナーは、睡眠を専門とする高名な神経科医である。彼が勤務するロンドンの睡眠障害クリニックには、種々の問題を抱えた患者がイギリス中から集まってくる

特定の時代や場所に、すごい才能の持ち主がなぜか集まることがある。新しい芸術や思想を生み出した19世紀末のウィーン、あるいは1920年代のパリ。歴史をひもとけばいくらでも例を挙げることができる。 本書はクリエイターたちが特定の場所に集まるメカニズムと要因を解き明かそうとする試みだ。そこで扱われるのは、戦後日本のカルチャー史を彩る数々の伝説的サロンやコミュニティ

“日本以外でも納豆が食べられていたの?納豆にこんなにすごい背景があるなんて!”と衝撃を与えた 『謎のアジア納豆 そして帰ってきた〈日本納豆〉』 から4年。前作で解き明かしきれなかった異国の納豆の正体を、完全に明らかにした驚天動地のノンフィクションがいよいよ発売された。 発売直前のある日、新潮社の会議室を高野秀行さんは一日ジャックしていた。リモートを含め取材が

こんにちは、仲野徹です。大阪大学医学部で病理学を教えています。病理学といってもなじみがないかもしれませんが、病気の理すなわち、どんなメカニズムで病気になるかを研究する学問です。 若い人って、あまり病気に興味がないように思います。この本を手に取ってくれた人はそんなことないはずですが、考えてみればあたりまえかもしれません。もちろん子どもにも病気はありますが、おお

通常、都市というのは人間以外の生物にとって一般的に良い環境とは思われていないだろう。緑や自然を切り開き、種の多様性を減少させる、必要悪的な存在である。野生の生き物たちの居場所は、都市から離れた自然豊かな世界中にあるのであって、都市ではない。 だが──、実はそうした都市の中には、むしろ「都市だからこその」生態が広がっている、と主張し、その概観を眺めていくのがこ

1940年、皇紀2600年を記念して東京でオリンピックが開催されるはずだった。しかし、日本政府が開催を断念、中止された。それを巡って作成されたNHKスペシャル『戦争と“幻のオリンピック” アスリート 知られざる闘い』を元にした五章の物語がこの本である。 その内容は大きく三つ、戦没オリンピアン、幻の東京オリンピック、そして、1964年東京オリンピックの閉会式だ

2003年1月、ワシントンD.C.――スミソニアン国立動物園のほの暗い展示室で、薄桃色の毛のない小動物がうごめいている。「何かの赤ちゃんかな?」展示ケースに近寄った私は、思わず息をのんだ。 な、な、なに?? この動物、なに??? それが、ハダカデバネズミと私との衝撃的な出会いだった。ハダカデバネズミ、漢字で書くと、裸・出歯・鼠。名は体を表す。裸で、出っ歯の、

元海上自衛隊の特殊部隊「特別警備隊」の創設者のひとりで先任小隊長を務めていた伊藤祐靖氏が書いた小説だ。ノンフィクション書評サイトのHONZでは基本的には小説を扱わない。しかし、この小説はフィクションとは思えないほどリアルに安全保障問題の欠点を浮き彫りにしている。ゆえに敢えてレビューを書くことにする。 本作のストーリーなのだが、北朝鮮でクーデターが発生。事態に

待ちに待った邦訳がようやく出た。 デヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』である。 「ブルシット・ジョブ」とは、「クソどうでもいい仕事」のことだ。 もう少し丁寧に説明すると、「なんのためにあるのかわからない、なくなっても誰も困らない仕事」のことである。 近年、私たちの身の回りでブルシット・ジョブが増えている。 そして、確実にこの手の仕事は、働く人々の心

1997年に発覚した、民間金融機関などによる大蔵官僚への過剰接待事件以降、官僚の劣化が止まらない。中央官庁というのはブラック企業の典型であることが詳(つまび)らかになり、ルサンチマンを抱えた国民のバッシングを浴び、天下りも禁止される中、新卒採用での人気低下、止まらない若手の大量退職など、側から見ていても同情を禁じ得ないほど地盤沈下している。 こんな状態では官

ベストセラー『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』は、目の前の暗雲を取り払ってくれた本だった。様々な本能のせいで、私たちがいかに物事をドラマチックに誤って捉えているかがわかった。また、その著者は世界を股にかける医師であり公衆衛生の専門家だ。だからこそ、その本に書かれた医療現場のエピソードが強烈な印象を残した。 公衆衛生、ひいては医療政策。その本が私の

高橋瑞(たかはし みず)、嘉永5年(1852年)生まれ。その名を知っている人はどれくらいいるだろう。日本で三番目に医師国家資格を取得した女性である。『明治を生きた男装の女医』は、その人生を丹念に綴った伝記小説だ。 24歳にして家出、旅芸人の賄い、女中、短く不幸な結婚の後、産婆に弟子入りする。28歳の時、跡継ぎになれと誘われるが、女医になりたいと固辞する。しか

酷暑となった8月。書店店頭の売上は好調が続いています。9月にはノンフィクションの大型タイトルの発売予定も目白押し。どんな売場が出来上がっていくのでしょう。 まずはノンフィクションの予約ランキングから。2020年8月20日時点の予約受注実績から9月以降に発売になるタイトルを抽出しノンフィクションの予約ランキングを作成しました。(日販調べ:タイトル・発売日等今後

本書の冒頭で、思想家チャールズ・アイゼンシュタインの、「バンカーとは、おカネを美しく使う人を探してくる人のことをいう」(『聖なる経済学』)という言葉が紹介されている。本書のタイトルである「誇りある金融」とは、こういう金融のことをいうのであろう。では逆に、「誇りのない金融」とはどういうものか。 銀行は、しばしば「晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」と言われ

社会人になってよく考えることがある。「仕事中に個人として意見したり行動することって、そんなに良くないことですか?」たとえば、あるミーティングで、私自身の意見を述べるときに、必要以上にプレッシャーを感じて「私個人の意見としましては……」なんて、いきなり真面目口調になってしまう。また、ミーティング後に上司から「会社の発言となるから、勝手な意見は言わないように」と

終戦記念日も今年で75回目。既に歴史になりつつある第2次世界大戦だが、新たに明らかになる真実もある。 『証言 沖縄スパイ戦史』は新書で750ページという厚さに度肝を抜かれる。民間人を巻き込んでの激戦となった沖縄戦末期には少年たちも作戦に動員された。 「護郷隊」は陸軍中野学校出身の将校に組織されたゲリラ部隊だ。自宅の裏山で米軍と戦い、多くの少年が死んだ。生き残

自分の携帯番号を公開し、悩める誰からの電話でも受け止める人物がいる。その「いのっちの電話」で2万人の声を耳にしながら、「坂口医院0円診察室」を開設! 「0円ハウス」の次はこう来たか。コロナ禍でどうも気落ちしがちなあなたへの応援歌になるやも。読んで損なし、0円で気持ちが楽になる一冊を紹介したい。 あの坂口恭平さんが、なんだか奇天烈な本を出したらしい。 そう、1