
『人を襲うクマ』すべて自己責任、なのか?
大正4年に北海道の開拓集落で死者8人を出した、三毛別ヒグマ襲撃事故。昭和45年に大学生のワンゲル部員3人が亡くなった、日高山脈でのヒグマ事故。記憶に新しいところでは、昨年5月に秋田県鹿角市で起きた4件のツキノワグマによる死亡事故。人とクマとの軋轢、その歴史は長い。 だが、本書でも「クマが人を襲う理由も、99%以上はクマが自分自身の安全を確保するための防御的攻
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大正4年に北海道の開拓集落で死者8人を出した、三毛別ヒグマ襲撃事故。昭和45年に大学生のワンゲル部員3人が亡くなった、日高山脈でのヒグマ事故。記憶に新しいところでは、昨年5月に秋田県鹿角市で起きた4件のツキノワグマによる死亡事故。人とクマとの軋轢、その歴史は長い。 だが、本書でも「クマが人を襲う理由も、99%以上はクマが自分自身の安全を確保するための防御的攻

秋の夜長、読書をするにはいい季節だ。1947年(昭和22)年、「読書の力によって、平和な文化国家を作ろう」と読書週間が作られた。出版社、取次会社、書店、公共図書館、そしてマスコミも参加したこの運動は今年、第71回を迎える。 例年通り今年もまた、10月27日~11月9日まで2週間「本を読もう」というキャンペーンが行われる。だが読書の周辺は明るくない。本が売れな

数多の犯罪に手を染めながら、ヤクザの組長の妻に納まり子供を授かることで、やっと更生した女の半生記である。父は大阪市生野区の在日韓国人二世のヤクザ社会の人である。 関西のアウトローたちにとってはレジェンドであり、いまも憧れの存在だという。現役時代には細身のコートとスリムなパンツ、黒の指なしグローブという出で立ち。闇の世界だけでなく、大阪府警でも知らぬものはいな

本日、天ぷらを食べに行く約束があったのに、昨日の昼も天ぷらを食べてしまいました。どんだけ天ぷらが好きなんでしょう。昨日のお店は江戸前らしく、ごま油を使っていましたが、本日は関西出身のご主人のお店なので、サラダ油を使っているはずです。 さて、諸説ありますが、天ぷらは室町時代、日本に入ってきた南蛮料理です。語源はポルトガル語の「tempero(調理)」やスペイン

「十分に発達した科学は、魔法と見分けがつかない」とはSF作家アーサー・C・クラークの言葉だが、現代社会は魔法としか思えない科学であふれている。急速に発達し続ける科学は生活をより便利なものにしてきたが、深化した科学の中身はより理解が困難になっている。生活必需品となったスマートフォンを例にとってみると、その魔法のような機能の全てを科学的に説明できる人などほとんど


私事で恐縮だが、今、猛烈に椅子が欲しい。この原稿は床に座って、ベッドを背もたれにし、ローテーブルにPCを置いて書いている。短時間の作業なら何の問題もないのだが、長時間となると、体のあちこちが痛くなってくる。そんな時、座り心地のいい椅子があれば、すらすらと原稿が書けると思うのだ。欲を言えば、食事をする時にも、くつろぐ時にも使える椅子が欲しい。そんなわがままな要

表紙の切迫感が凄い。赤色には気分を高揚させるだけでなく、時間を早く感じさせる心理効果があるらしいが。それを後押しするように文字が並ぶ。「猿に邪魔されても〆切はやってくる」、「とうとう新潮社社長の私邸に監禁」。意味がわからない。普通、日常生活を営んでいて、猿に邪魔されないし、監禁されない。せめて軟禁である。そういう問題ではないのか。いずれにしろ、相当にヤバい状

韓国の首都ソウルでは、いま空前の本ブームが起きている。「独立書店」と呼ばれる個人開業の書店が週に1軒は生まれ、「独立出版物」と呼ばれる個人出版の本も、1日1冊のペースで出版されている。 一体なぜこんなムーブメントが起きているのか。学歴社会、就職難と非正規雇用、晩婚化と高齢化など、様々な共通した社会問題を抱える日本と韓国だからこそ、学べることがあるのではないか

本書は、『海馬』などのベストセラーでおなじみの脳研究者・池谷裕二さんが、愛娘の4歳までの成長を脳科学の観点から、観察・分析した本だ。育児ノウハウをまとめた実用書ではない。8歳と4歳の2児の父である私が読んで、手放しで面白かった。「うちの子はもう小学生だから、幼児教育の本を読んでも遅い」などと躊躇せず、ぜひ、多くの方に読んでほしい。 本書を紹介する前に触れたい

ロンドンの貧困地区の中等学校で数学を教えていたイギリス人教師が、学校をめぐる旅に出た。OECD(経済協力開発機構)が実施しているPISA(学力到達度調査)で高得点をあげた国々を選び、学校を訪問する。この旅を通じたフィールドワークはユニークなものだ。PISAの成績上位国の学校で働く教師たちのメールアドレスをネットで探し、彼ら・彼女らの学校での手伝いをしながら、

柿、梨、葡萄と、秋は果物が美味しい季節ですね。葡萄といえば、どうやって種無し葡萄を作るかご存知ですか? 種無し葡萄は、ジベレリンという植物ホルモンを使って、作られています。通常、果実は受粉によって子房の中に種子ができ、子房がふくらんで実になります。ところが、葡萄は受粉しなくても、ジベレリンに浸すことで子房がふくらむのです。ジベレリンは、茎を伸ばして、密着によ

長野県南部、中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷。この地を拠点に、半世紀にわたって活動してきた写真家がいる。本書の著者、宮崎学である。1947年、長野県の中川村に生まれた彼は、精密機械会社に勤めた後、72年に写真家として独立し、「自然界の報道写真家」として現在も日本中の自然を観察している。 宮崎さんの写真の特徴は、何といっても「無人カメラ」を用いている点

うちは多分、がん家系だ。父は珍しい腎臓がんに始まり、胃がん、皮膚がんの果てに88歳で末期の肺がんが見つかりこの世を去った。最近、弟に初期の胃がんが見つかり内視鏡で切除した。かなりまずい。 医師の告知が普通になり、インターネットで情報が簡単に手に入るようになった。命に関わるだけでなく生活の質(QOL)を向上させるためにも、正しい病気の知識を解説した本が欲しいと

長さ18メートルの砲身から時速650キロで放たれた砲弾がジェット機に撃ち込まれる。“砲弾”の重さは約1.8キロ。なにやら物騒だが、この砲弾の正体が「鶏肉」だと聞いたら、ほとんどの人がなにそれ?と首を傾げるに違いない。 アメリカ空軍のジェット機は年間3千回程度、バードストライクに見舞われるという。被害総額は年に5千万ドルから8千万ドルに及び、数年にいちどパイロ

店頭で「この本を読んで見よう」と思わせるのは、まず、装丁だ。表紙が素敵だったりあれっと不思議だったりすると、自然に手が伸びる。僕は、迷わず本文の最初の10ページを読む。作者は「読んで欲しい」と思って本文から書き始めるはずだから、そこが面白くなければご縁がない本なのだ。 本書は、最初の小見出し「オキシトシンで愛情が湧く」でノックアウトされてしまった。母親が赤ち

我々は"現実"をありのまま受け取っているわけではない。いったん視覚情報や触覚情報といった身体表面から情報を受け取り、それを脳で解釈することによってはじめて"人間用に最適化された、人間用の世界"を構築する。我々はある種のフィクションの世界を生きているわけだ。 と、大層な語りだしではじめたけれども、本書はそうした現実の解釈機関である脳についての一冊だ。著者のデイ

強力なテクノロジーにはイノベーションの機会が二度訪れる。まずは登場したとき、そして次に普及したとき。WEBなど、その最たるものだろう。 インターネットという技術の登場はたしかに大きな変化をもたらしたが、今振り返れば、スマホの普及によって「いつでも、どこでも、誰にでも」使えるようになったことも、同じように大きなインパクトを持つ出来事であった。 本書のテーマとな

著者は「米海軍きっての天才」といわれてきた元NATO欧州連合軍最高司令官だ。トランプ大統領とは正反対にグローバル化を擁護する立場で、TPPを支持し、移民を受け入れ、中国とは軍事的手段を必要としない文化的交流を発展させるべきだと説く。 日本をアメリカにとって最重要な同盟国と位置付け、民主主義国である日本、米国、EUが世界に冷戦なき新しい秩序を創るべきだと訴える

竹内明の最新刊『スリーパー』のPVだ。本のPVというのも珍しい。なにがなんでもNetflixで重厚な映像化をしてほしい。予算が少ないWOWOWも遠慮してほしい。 世界的にも視聴率が取れるのではないか。シリーズの初めからだとシーズン3まで作れる。竹内明は絶対に日本の映画会社や地上波などに原作権を与えてはならない。どうせジャニーズあたりの役者もどきを主人公に据え

重力波は歌う。アインシュタインがそういう歌が存在することに気づいてからちょうど100年、我々はついにその歌を聞くことができたのである! 重力波の初検出は、物理・天文分野での今世紀最大の発見の一つであることは間違いない。 そして、その大発見が産み出される過程において、かくも複雑な人間模様が繰り広げられてきたことは、読者の方には大いなる驚

人間を人間たらしめているのは何か。古来より繰り返されてきたその問いに、豊富な実験と観察を重ねながら、とりわけユニークな回答を与えようとしている研究者がいる。本書の著者、松沢哲郎がその人である。 著者の名前については多くの人が耳にしたことがあるだろう。1977年からチンパンジーのアイらと行っている研究(アイ・プロジェクト)でも知られる、日本と世界を代表する霊長

2016年6月23日、イギリスの国民投票の行く末を世界中が固唾を飲んで見守っていた。英国のEU離脱(ブレグジット)というまさかの結末は、世界中に大きな衝撃と混乱をもたらした。なぜ、英国民は多くの専門家が反対するブレグジットを選択したのか?そもそも、国民投票などする必要があったのか?EU離脱派がアピールし続けた、「EUを離脱すれば、毎週3億5000万ポンドの分

今週末の東京は、行楽シーズンぴったりのお天気ですね。行楽といえば、お弁当。稲荷寿司と巻き寿司を詰め合わせた、助六寿司が好きです。 助六寿司の「助六」は、歌舞伎十八番のひとつ「助六所縁江戸桜」に由来します。主人公助六の愛人は吉原の花魁で、「揚巻(あげまき)」という名でした。「揚巻」の「揚」を油揚げの稲荷寿司、「巻」を海苔で巻いた巻き寿司になぞらえ、この2つを詰

生きることは問題だらけだ。 仲間との競争あり、食べ物にありつけなければ明日はなく、絶えず捕食者に狙われ、もちろん愛のお相手も見つけなくちゃ...... いま地球上に棲息している生きものは、こうした問題を、進化の途上で解決してきた「つわもの」揃いだ。——(といっても、生きもの自らの意思によって解決したわけではなく、 たまたま変異によってうまくい

本書は、マッキンゼーの日本支社長からカーライル・ジャパンの共同代表を経て、現在、早稲田大学ビジネススクールの教授を務める平野正雄氏の最新刊である。 平野氏がコンサルタントとプライベートエクイティファンド経営者としての経験を通じて学んだ、過去30年の間に日本企業の経営が世界からどう乖離してきたかという歴史と今後の処方箋が丁寧且つ論理的に語られている。 本書のポ

その国の首都のみを見ていては、その国の本当の姿を知ることはできない。これは世界中のどの国にも当てはまる事実であろう。ロシアでもこのように言われている。「モスクワは真のロシアではない」と。実際にこの言葉の意味を体現するような出来事もおきている。 それは、2011年末にロシアの下院議員選挙で不正疑惑が持ち上がった事件だ。これをうけモスクワでは大規模な反政府デモが

小説 / HONZ客員レビュー
これは、名作「朗読者」の作家による新たな至高の恋愛小説であり、人間の再生の物語だ。ドイツから出張に来たシドニーのギャラリーで、主人公の弁護士は1枚の絵に出会う。裸の女性が階段を下りてくる絵だ。 40年前、ある実業家が若い妻をモデルにその絵を描かせた。絵を描いた画家はその女性イレーネと駆け落ちした。実業家と画家の争いは主人公の弁護士のもとに持ちこまれた。そして

『仕事と家庭は両立できない?-「女性が輝く社会」のウソとホント』(原題:Unfinished Business: Women Men Work Family)の元になった、The Atlantic誌2012年7-8月号の論考『 女性は仕事と家庭を両立できない!? 』(原題:Why Women Still Can't Have It All)の中で、アン=マリ

タイトルを読んでみてどう感じるだろうか。野球界に鉄拳が飛び交っていた時代など過去の話だと思う人も多いかもしれない。平成になってから30年が経とうとしている。水分補給や休息の重要性はもちろん、食事管理や筋力トレーニングの方法など、根性論とは距離を置いたアプローチも着実に浸透した。 昔に比べたらはるかに暴力が減っているのは事実だ。小・中・高と、6年ほど前まで学校

先週末、我が家でホームパーティーをしました。レシピを考えている時が準備では一番楽しいのですが、最近はお花選びも楽しんでいます。今回は秋の花ということで、ダリアにしました。 ダリアはメキシコ原産で、日本には江戸時代の終わりにオランダからもたらされました。牡丹の花に似ていることから、和名は天竺牡丹といいます。天竺(インド)を経由してきたわけではありませんが、当時

2017年現在。僕はまだ吉本興業の社長をやらせてもらっている。 「吉本のやり方は読めない。いったいどうやって戦略を立てているんですか?」 最近は人からこんな風に聞かれることも増えた。 だが、この本を読んでもらえば分かるように、僕自身には戦略のようなものがあったわけではない。目の前に出てきた〝やらなければならないこと〟や、半ば行き当たりばったりのように思いつい

歴史上もっとも人口の増加に貢献した科学的発明は何か?それは、多くの病気から命を救った医薬品でも、世界中のあらゆる地域へ人類を移動させた航海技術でも、機械化による効率化をもたらした産業革命でもない。もちろん、これらの発明も多くの命を支えており、現代生活に欠かせないものではあるが、その発明のおかげでこの世に存在している人命の数では、ハーバー・ボッシュ法には及ばな

「疾風(はやて)」。離陸速度、最高速度、旋回、急降下等、その性能の高さは世界の中でも群を抜き、第二次世界大戦中、米国軍に「悪魔の機体」と名付けられた。それだけではなく、何よりもパイロットの安全を考え、彼らが迅速に機外脱出出来るよう設計されていた。戦後、米軍はその性能を分析し、驚愕した。 本書は「疾風」を世に生み出した中島飛行機と、そこで生きた人間の物語である

都市部で電車を使って通勤している男性ならば誰もが思ったことがあるはずだろう。いつか、痴漢に間違われるんじゃないか。両手はつり革が基本ポジションで、なるべく、手を上げた状態を保っていても、一時たりとも安心できない。思わぬ揺れでその手が人混みの中に潜り込んでしまったときに、「キャー」とか言われたらどうしようなどと妄想は絶えない。頼むよ、さっさと車内に監視カメラで

子どもの頃、両親の本棚からこっそり取り出して読んだ本にはどうもいい思い出がありません。いい思い出どころかその後の悪夢に繋がった本の代表格が『悪魔の飽食』と『ノストラダムスの大予言』。 『ノストラダムスの大予言』については、200万部を突破する大ベストセラーであり、社会現象をも巻き起こし色々な方面に影響を及ぼしたと言われています。私の身の回りにも「どうせ199

タイトルを見てどんな本だろうと思った方に、あらかじめ申し伝えておきたい。最後には「更生」するので、安心して読み進めて欲しい、と。 だが本書は、更生してヤクザの世界から足を洗いましたといった類の単純な話ではない。更生して辿りついた先が、組長の妻であったのだ。ならばヤクザの世界よりも極悪な世界とは一体いかなるものなのか。それが本書の主人公・亜弓さんの半生を通して

読むと旅に出たくなる本がある。想像もつかない場所へ果敢に挑んだ旅行記や、街が美しく描かれた小説を読み始めると、旅の妄想が止まらない。本書『世界の広場への旅』は旅行記でも小説でもないが、読み終わったらきっとあなたは旅支度を始めることだろう。 著者は昭和女子大学教授で、これまでに冷戦時代の東欧や青蔵鉄道開通前のチベットなど、延べ86カ国、1,059カ所の広場を調

男の料理の王様といえばカレーだ。市販のルーで簡単に作るところから始まり、ニンニクやショウガ、チョコレートやコーヒーを入れ始め、果てはスパイスの調合に凝り始める。 病膏肓に入ってしまった男がいる。“東京カリ~番長”というカレーの出張料理ユニットの料理主任で研究家として何冊も本を上梓している水野仁輔だ。彼は日本で普通に食べられているカレーのルーツを知りたいという

著者の経歴から紹介しよう。 ジェイムズ・スタヴリディスは、1976年にアメリカ海軍兵学校を卒業し、35年以上を海軍軍人として過ごした。航空母艦エンタープライズなど、有名艦を軒並み指揮した後に、2009年から13年まで、NATO(北大西洋条約機構)の欧州連合軍最高司令官をつとめる。退役後の2013年からは、国際関係の研究では全米でもトップクラスを誇る私立の名門